世界に衝撃を与える日本代表の“勝ち方” 元日本代表・藤井淳のアイルランド戦解説

構成:スポーツナビ

トライにつながったCTB中村のプレー

後半19分に福岡が逆転トライを奪った。 【写真:ロイター/アフロ】

――日本代表でもっとも良かった選手は?

 これは難しいですね……(笑)。みんな良かったのですが、個人的にはPR具智元選手が良かったと感じました。前半のビッグスクラムもありましたし、ボールキャリアーとしても非常に精度が高かったです。しっかり当たって、前に出て、ボールを生かすという流れができていて、日本代表の高速アタック実現に大きく貢献したと思います。

――BKの選手ではどうでしょうか?

 CTB中村(亮土)選手が素晴らしかったです。178センチと国際舞台では決して大きくないのですが、力負けしない激しいタックルが光りました。
 アタックでもディフェンスラインに近いところでボールを受けて前に出たり、FWの後ろでボールを受けて外に回したりと非常に効果的でした。

 後半19分の福岡(堅樹)選手のトライは、最初にスクラムから中村選手のクラッシュで始まって、連続攻撃でFWが前に出た後に中村選手が田中選手を呼んでボールをもらって、前に出ずにうまくためてからの鋭いカットパス(飛ばしパス)。そのパスを受けたCTBラファエレ(ティモシー)選手から福岡(堅樹)選手に渡ってトライとなりました。あの流れでは前に突っ込みたくなるのですが、中村選手は非常に冷静だったと思います。

守りに入るよりも、自信のある戦い方を

予選プール首位に立った日本代表、この後はサモア代表、スコットランド代表と対戦する 【写真:ロイター/アフロ】

――日本代表は2勝で勝ち点9の首位。残りのサモア戦、スコットランド戦をどう戦うべきでしょうか?

 これからは勝つことが最重要になります。アイルランドに負けていたら、残り2試合で4トライ以上のボーナスポイントを狙う必要があったかもしれませんが、4勝で突破することを目指せば良いと思います。

 予選プール首位に立ちましたが、スタイルは変えずに今のやり方で戦ってほしいと思います。変に守りに入るよりも、自信のある戦い方を貫いた方が良いですね。体力面、精神面ともに厳しい戦い方なので不安はあると思いますが、自分たちの形を信じた方が良い結果につながるはずです。

――日本代表、進化していますね。

 世界ランキング2位でメンタルも強いアイルランドが、走れずにボールを回すだけになった……そして最後にトライを狙うよりも自ら蹴り出して7点差以内の敗退による勝ち点1を選んだ。日本がそこまで追い込んだという事実は、他の強豪国も衝撃を受けたでしょうし、脅威になったと思います。現状、このラグビーは日本しかできないとも言えるので。

 日本のラグビーファンや関係者は、今の日本代表のマインドに追いついていないと思います。彼らは本気で勝つと思ってやっていて、さらに最後のプレーでもうひとつトライを取って、アイルランドに勝ち点1さえ与えないようにしようとした。これは驚くべき姿勢です。

 日本ラグビー界全体で彼らのマインドに追いついて、一緒に信じて進んでいければさらに日本代表は強くなるはず。日本ラグビーの今後に向けて、非常に大きな一戦になったと思います。

 日本代表はこの勝利で浮かれたり、おごるようなチームではないので、その点は心配していません。ベスト8、さらにその上にチャレンジできるレベルに来たので、彼らのこれからの戦いがますます楽しみです。

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

藤井淳/JunFujii

東芝ブレイブルーパスで活躍した藤井淳氏。2012年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した 【写真:アフロスポーツ】

 1982年8月10日生まれ。身長170センチ、体重77キロ。愛知県出身。西陵商高‐明治大‐東芝ブレイブルーパス。

 西陵商高時代に全国大会に出場、明治大では抜群のスピードを生かして活躍した。東芝ブレイブルーパスでは強気のリードでFWをまとめ、ディフェンス面も向上。2012年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した。2019年に現役引退。

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