棒高跳・澤野大地と江島雅紀が描く夢
「澤野さんと僕の、一番の理想像は…」
師弟関係にある澤野(左)と江島(右)。ともに世界陸上の大舞台に臨む
師弟関係にある澤野(左)と江島(右)。ともに世界陸上の大舞台に臨む【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 陸上の第17回世界選手権(カタール・ドーハ)で、大会2日目の現地時間28日は男子棒高跳びの予選が行われる。この種目に出場する澤野大地(富士通)と江島雅紀(日本大)は「師弟関係」の間柄。江島は選手兼コーチとして活動する澤野に憧れて日本大の門をたたくと、その指導の下で着実に実力を上げ、世界選手権出場を勝ち取った。


 江島は初となる大舞台へ「(澤野が持つ)日本記録(5メートル83センチ)を更新して、僕が澤野さんを引退させたい」と“師匠越え”に熱い闘志を見せる。一方、実に7回目の出場となる大ベテラン・澤野は江島に対して「『(自分のことを)見ときな』という気持ちだけです。世界大会はどの選手であっても緊張する。先生であっても、いつも練習している仲間がいれば精神的に全然違うので、そういった部分でも彼の力になりたい」と話した。コーチと教え子として、そして選手同士としても高め合う2人のジャンパーが、そろって世界の表彰台を目指しにいく。

江島「澤野さんは全部プラスに変えてくれる」

「スランプ」に陥ったとき、江島は澤野のある言葉に救われた
「スランプ」に陥ったとき、江島は澤野のある言葉に救われた【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 江島は高校3年時に、5メートル42センチの高校新記録を樹立。日本陸上競技連盟が次世代の競技者を育成する、ダイヤモンドアスリートにも選ばれている。さらに、日本大入学後の2017年にはアジア選手権で5メートル65センチの好記録をたたき出し、銀メダルを獲得。将来を渇望されるアスリートとして、順調に成長を続けてきた。ただ、本人の中では練習環境の変化による肉体の疲労などもあり、「スランプ」と感じる時期もあったという。そこで江島を救ったのが澤野の言葉だった。


「いつも、自分のいいところを言ってくれる。自分の中で納得できない部分があると、どうしてもマイナスにとらえてしまうんですが、澤野さんはそこを全部プラスに変えてくれた。頼れるコーチをこの3年間で見つけることができたので、今は人を信じて気持ち良く競技ができています」


 現在は加藤幸真コーチに助走、澤野に空中動作を指導してもらい、練習に励む。そんな江島が抱く、澤野へのリスペクトの念は本当に厚い。大先輩のことを知ったのは、小学校高学年の時に見た世界陸上がきっかけだったと、6月に行われた日本選手権の時に語っていた。


「テレビで澤野さんを見て『人って飛べるんだ』と思いました。(澤野は)学校の先生であり、コーチであり、ライバル。一言で表すのは難しいけれど、僕の理想像です。澤野さんの棒高跳びが、この世で一番好き。『レジェンド』としか言いようがありません」


 悪天候の中で行われた日本選手権では、5メートル61センチを一発でクリアし初優勝。憧れのレジェンドを破り、うれし涙を流した。8月18日に千葉県で行われた記録会ではそろって5メートル71センチをクリアし、世界選手権の参加標準記録を突破した。


「(澤野は)ベテランだし、経験もありますが、僕もそれに負けないようにしたい。いろんなことを自分から聞きにいきたいと思っています。盗める技術はどんどん盗んでいきたい」。すぐ近くにある“最高の教材”からスポンジのように技術を吸収している20歳の進化は、これからも加速し続けるだろう。

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