棒高跳・澤野大地と江島雅紀が描く夢「澤野さんと僕の、一番の理想像は…」
師弟関係にある澤野(左)と江島(右)。ともに世界陸上の大舞台に臨む 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
江島は初となる大舞台へ「(澤野が持つ)日本記録(5メートル83センチ)を更新して、僕が澤野さんを引退させたい」と“師匠越え”に熱い闘志を見せる。一方、実に7回目の出場となる大ベテラン・澤野は江島に対して「『(自分のことを)見ときな』という気持ちだけです。世界大会はどの選手であっても緊張する。先生であっても、いつも練習している仲間がいれば精神的に全然違うので、そういった部分でも彼の力になりたい」と話した。コーチと教え子として、そして選手同士としても高め合う2人のジャンパーが、そろって世界の表彰台を目指しにいく。
江島「澤野さんは全部プラスに変えてくれる」
「スランプ」に陥ったとき、江島は澤野のある言葉に救われた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「いつも、自分のいいところを言ってくれる。自分の中で納得できない部分があると、どうしてもマイナスにとらえてしまうんですが、澤野さんはそこを全部プラスに変えてくれた。頼れるコーチをこの3年間で見つけることができたので、今は人を信じて気持ち良く競技ができています」
現在は加藤幸真コーチに助走、澤野に空中動作を指導してもらい、練習に励む。そんな江島が抱く、澤野へのリスペクトの念は本当に厚い。大先輩のことを知ったのは、小学校高学年の時に見た世界陸上がきっかけだったと、6月に行われた日本選手権の時に語っていた。
「テレビで澤野さんを見て『人って飛べるんだ』と思いました。(澤野は)学校の先生であり、コーチであり、ライバル。一言で表すのは難しいけれど、僕の理想像です。澤野さんの棒高跳びが、この世で一番好き。『レジェンド』としか言いようがありません」
悪天候の中で行われた日本選手権では、5メートル61センチを一発でクリアし初優勝。憧れのレジェンドを破り、うれし涙を流した。8月18日に千葉県で行われた記録会ではそろって5メートル71センチをクリアし、世界選手権の参加標準記録を突破した。
「(澤野は)ベテランだし、経験もありますが、僕もそれに負けないようにしたい。いろんなことを自分から聞きにいきたいと思っています。盗める技術はどんどん盗んでいきたい」。すぐ近くにある“最高の教材”からスポンジのように技術を吸収している20歳の進化は、これからも加速し続けるだろう。