走り幅跳びで22年ぶり快挙の日本勢 アスリート一家の橋岡、狙うは師匠超え
日本人選手の決勝進出は、橋岡のコーチを務める森長正樹氏が1997年に進んで以来22年ぶり。2人は同28日に行われる決勝で、初の入賞を目指す。
“地の利”も生かしてみせた橋岡
アスリート一家に生まれ育った橋岡。従兄弟には浦和レッズDFの橋岡大樹を持つ 【写真:ロイター/アフロ】
4月に行われたアジア選手権では、今回と同じ会場が使われていた。その大会を制していたこともあり、“地の利”もあったのかもしれない。25日の事前会見では「この競技場は屋根に覆われているので、風があまり吹かない。踏み切り板は少し動いたりすることもあるが、そこに気を付ければ何も問題ない」と言っていた橋岡。その言葉通りに、2回目の試技で会場にアジャストしてみせた。
父の利行さんは棒高跳びの元日本記録保持者で、母の直美さんも100メートル障害と三段跳びで日本選手権を5度制している。さらに、従兄弟の橋岡大樹はJ1の浦和レッズでディフェンダーとしてプレーする、まさにアスリート一家に生まれ育った。本人が残してきた実績も輝かしい。今季は前述のアジア選手権の他、6月の日本選手権では3連覇を達成。さらに、7月のユニバーシアードでも優勝を果たすなど、充実したシーズンを過ごしてきた。
各地で転戦を重ねた20歳は「海外の試合だからといって、特別に意識することはないです。食べ物もパンがあれば全然大丈夫ですし」と言う。この日も初の大舞台でありながら「すぐ近くに(ルヴォ・)マニョンガ(南アフリカ)や(ファン・ミゲル・)エチェバリア(キューバ)がいて、ワクワクしてました」と笑顔。緊張のかけらも見せないメンタルは、まだ大学3年の若者とはとても思えない。
日本大に入ってからは、前日本記録保持者の森長氏の元で実力をつけてきた。特に磨いてきたのが助走の感覚だ。跳躍までの20歩を8、6、6に分け、それぞれにイメージを刷り込んできた。「最初の8は地面の奥を押して、体重を乗せていく。次の6はリズムを崩さずスピードを上げていき、最後の6は飛び出すまでスピードを上げる」。感覚としてではなく、より具体性を持った形になるように仕上げていき、動作の再現性を高めていく。そうして培った助走は「課題だった部分で、スピードを出せていることが一番の強みになった」と、安定した武器になっている。
日本人2人の決勝進出は初
日本勢初の入賞は射程圏内。恩師を超えられるか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
橋岡は「せっかく決勝に行けるので、いつも通り自分のやるべきことをやっていければいい。日本人としての1位を取って、少しでも良い順位に行きたい」。前回のロンドン大会では8メートル18センチが入賞ラインだった。4月にドーハで8メートル22センチを飛んでいる力が発揮できれば、充分に射程圏内といえるだろう。「恩師」の森長氏が果たせなかった目標に向けて、若きジャンパーが全力で飛び込んでいく。
(取材・文:守田力/スポーツナビ)
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