“世界2位”撃破を狙うラグビー日本代表 アイルランド戦で鍵になるキック対策

斉藤健仁

日本代表はセットプレーの安定を

日本代表はNo.8マフィが先発する 【写真:アフロ】

 それでは日本代表は、世界的強豪のアイルランド代表とどう戦えばいいのか。アイルランド代表はFW8人をスコットランド代表戦と同じという強力な布陣で臨んできた。

 日本代表はまず、相手の強いセットプレーに対しては互角に戦い、マイボールをキープすることが前提として大事となってくる。セットプレーでプレッシャーを受けて乱れてしまうと、格上から勝利することは厳しくなる。スクラム、ラインアウトではおよそ90%以上の成功率が必要だろう。

 この試合では、日本代表の先発のNo.8にはアマナキ・レレィ・マフィが入った。スクラム、ラインアウトから彼を突破役としてトライに持ち込みたい。ラインアウトからはこの日のために、用意していたムーブ、サインプレーもあるはずだ。

長身の山中亮平を先発FBに起用

身長188cmのFB山中亮平はキック処理での活躍が期待される 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 簡単に相手にボールを渡してしまうと、なかなかボールを奪い返すことが難しいため、しっかりパスラグビーを展開しつつ、ボールキープ率を上げたいところだ。相手の堅いディフェンスの前でも、それをしっかり遂行できるか。日本代表はゲームキャプテンのFLピーター・ラブスカフニを筆頭にFWの8人の運動量、接点でのファイトが欠かせない。その中でも、サイドやディフェンスラインの裏にスペースがあればコンテスト(相手と競り合う)キックを蹴って、そのボールをターンオーバーして再獲得するところまでもっていきたい。

「(アイルランド代表は)FWがすごく力強い。ミスが少ない。裏のスペースは少しあったのかな……。ボールをキープしないと。安易なキックを蹴ると相手がチャンスになって、こちらのピンチになる。ボールをキープしながら100%の精度で裏に運べたら」とSH田中史朗も話している。

 相手のキック、特にSHマレーからのボックスキックをしっかりとキャッチしたいところ。そのために日本代表は、ともに身長188cmのFB山中亮平、WTBウィリアム・トゥポウと身長の高い2人をバックスリーに並べた。おそらくディフェンス時は松島がFBでグラウンド中央に入り、山中、トゥポウの両選手がサイドに立つ。ハイボールの処理を確実にして、松島らのカウンターにも期待したい。

ホームの大声援を背に格上に挑む

ジョセフHCの下、大金星を狙う日本代表 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 ディフェンスでもどこまで粘れるか。アイルランド代表のSOは昨年の世界最優秀選手であるジョナサン・セクストンではなく、8キャップと経験の浅いジャック・カーティが務める。SHマレーとカーティのハーフ団にしっかりとプレッシャーをかけつつ、前に出るディフェンスで相手のアタックを寸断したい。
 またゴール前ではダブルタックルで相手FWの勢いを奪いたい。ゴール前のドライビングモールはなかなか止めるのが難しいかもしれないが、自陣ゴール前でのラインアウトを少なくすることで対処したいところだ。

 難しい相手ではあるが、ジェイミー・ジャパンはアタッキングチームのため、先にトライを取って、どうにか終盤まで接戦に持ち込み、勝機を見いだすことができるか。そして、今後の予選プールを考えれば、負けたとしても勝ち点を取っていくという現実的な戦いも必要となってくるだろう。

 日本代表は開幕戦、相手が世界ランキング的に格下だったこともあり、特に前半は硬かった。ただ、今回の試合は相手が格上であり、ホームの大声援を背に、最初から思いっきりチャレンジしてほしい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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