連載:W杯から東京2020へ――平成バレー界のエースが語る

「メグカナ」に沸いたバレーW杯の思い出 うれしさと戸惑いの間に揺れて…

田中夕子
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「世界に近づけた」と実感できた03年W杯。一方で「何も残せなかった」と後悔が残った07年W杯。どちらの大会も大山加奈のバレー人生にとって大きな影響を与えている 【撮影:熊谷仁男】

 9月14日から女子バレーボールのワールドカップ(W杯)が開幕する。W杯はバレーボール三大大会のひとつ。日本にとっては五輪前最後の大規模な国際大会であり、来年の東京五輪へ向けた試金石となる。そのW杯で2003年、日本中に“メグカナ”フィーバーを巻き起こしたのが大山加奈さん。10年の現役引退後、解説や全国各地でのバレーボール教室など育成・普及活動にも携わる大山さんにとって、W杯とはどんな大会だったのか。選手時代の思い出を聞いた。

夢に向かって厳しい練習に耐える日々

「メグカナ」の愛称で親しまれた大山加奈(左)と栗原恵。高校生で全日本に選ばれるなど人気、実力を兼ね備えた逸材としてメディアをにぎわせた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――小学生からバレーボールを始めた大山さんにとって、W杯とはどんな大会とイメージしていましたか?

 やはり一番の憧れはオリンピックでしたが、バレーボールだけに限って言うと、一番華やかな大会がW杯という印象でした。実際、私も子どもの頃からよく見ていましたね。特に1999年は中学3年生で、まだW杯は「出るもの」や「目指すもの」ではなく「見るもの」だったので、朝日健太郎さんを応援しながら楽しく見ていました(笑)。

――01年に代表初選出され、03年のW杯に出場。そこに至るまでの経緯は順調でしたか?

 初めて合宿に参加したのが02年で、当時は高校3年生でしたが、世界選手権とアジア大会に出場することができました。でも結果は惨敗で、大会後、当時の日本代表監督が更迭されました。結果が出ないと監督もクビになってしまうんだ、とショックでした。翌年、監督が代わって、そこでまた私もメンバーに選出され、キャプテンがトモ(吉原知子)さんになった。

 トモさんの姿は「代表のキャプテンとはこういうものだ」と感じさせられることばかりで、トモさんだけでなく、北京オリンピックでキャプテンを務めたテン(竹下佳江)さんなどベテラン選手もいて、私やメグのような若手もいた。年齢の幅もある中で、トモさんがしっかり締めるところはぎゅっと締める。トモさんは誰よりも練習をする人だったので、自分が率先してやるからこそ言葉にも説得力がある。ただいるのではなく、行動で示して説得力を私たちに感じさせるキャプテンで、厳しいけれど温かい。私たち若手に対しても伸び伸びプレーできる環境をつくってくれる偉大なキャプテンでした。

――当時の練習はかなり厳しかった、と幾度となく大山さんご自身が語られています。

 ワンマンレシーブしかやっていないイメージがあるぐらい(笑)、毎日厳しかったです。基本的に練習は朝、午前、午後、夜の4部練習です。朝と夜は自主練なのですが、みんな練習していたので自主練ではないですね(笑)。W杯前に行われたワールドグランプリで、レギュラーとしてスタメン出場させてもらっていて、私自身も手応えがあったので、「W杯も自分がスタメンでやるんだ」という気持ちでいました。もちろん直前まで誰が出るかはわかりませんし、スタメンだと言われていたわけではありませんが、自分もW杯に出るんだ、オリンピックに行くんだ、と大きな夢、目標に向かって真っすぐ突き進めていた時期でした。

――W杯が始まる前の空気感、周囲の期待は感じていましたか?

 あまりなかったんです。むしろ、ワールドグランプリもテレビで放送してもらったかな? という記憶しかないですし、あまり注目されている感じはなかったですね。ただ、私とメグばかり取材は多くて、そこはちょっと、と思っていたし、周りの先輩にも申し訳ないな、と思っていました。
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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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