履正社か、星稜か 101回目の決勝を占う 強力打線vs.エース奥川がドラマを生む
履正社(大阪)と星稜(石川)は、センバツの1回戦で激突。このときは奥川恭伸が、3安打17奪三振という会心の投球で、星稜が勝利を収めている。しかもその試合は、大会第1日。2019年の甲子園物語を書くとして、まずその初日に対戦した両者が、最終章でふたたび相まみえるというのはなかなかドラマチックだ。
星稜の先発は奥川以外に考えられない
履正社の1番・桃谷(左)は5戦すべて、第1打席で安打をマーク。星稜のエース奥川(右)は防御率0.00の快腕。いきなりクライマックスが訪れるかもしれない 【写真は共同】
ここまで、奥川の投球成績は怪物級である。準々決勝を除いて4試合、32回1/3を投げ、打たれたのはわずか10安打、自責は0で防御率0.00だ。歴代2位タイの23三振を奪った圧巻の智弁和歌山戦など、築いた三振の山は45。2回戦では、自己最速の154キロをマークした。先発を志願した中京学院大中京(岐阜)との準決勝では、「相手のビデオを見ると、腕をマン振りするよりも緩急をつけたほうが有効」と、7回を2安打10奪三振。投球術にも長け、球数を87に収める省エネ投法だった。
多少体の重さはあります、と奥川は正直だが、中1日の休養日がある。ここまできたら先発は奥川以外に考えられない。
「履正社は、春とはまったく別のチーム。点は取られると思いますが、とにかく粘ってひっついていきたい」
履正社打線も「春より成長している」
フリー打撃では、1球1球カウントや狙い球を想定し、あるいは直球のタイミングで変化球を打つ。マシンを数メートル前に置く速球対策も含め、「奥川を打つために練習してきました」(4番・井上広大)。さらに実戦で、前の打者に対する配球を注視するのは「漫然と打つのではなく、根拠を持って狙い球を絞るためです」(1番・桃谷惟吹)。
この大会では、その成果が十分に現れている。5試合すべて2ケタ安打の183打数66安打で、打率は.361。ホームランも6本記録し、41得点は1試合平均8点を超える。相手投手のレベルも高かったが、「奥川と対戦したことで、“あれ以上の投手はいない”と思えるのが心の余裕になっています」と桃谷が話すように、霞ヶ浦(茨城)の鈴木寛人、津田学園(三重)の前佑囲斗、明石商(兵庫)の中森俊介と、ことごとくプロ注目の右腕を攻略している。
「こっちも、春よりは成長しています。春は、試合中に修正点を見つけても狙い球を打ち損じていましたが、いまは修正でき、打てている」とは、5試合で2本塁打含む11打点の主砲・井上だ。
旭川大高(北北海道)との1回戦こそ1得点に終わったが、星稜打線も活気づいている。その初戦は、大高正寛が決勝打。智弁和歌山との激闘に決着をつけたのは、福本陽生のサヨナラ3ラン。仙台育英(宮城)との準決勝では、今井秀輔がグランドスラム、四番の内山壮真が2アーチ……と、日替わりでヒーローが誕生するのは、層が分厚いからだ。5試合で37得点、打率.353、5本塁打は履正社打線と遜色ない。奥川以外も含め、投手力は5試合5失点の星稜が圧倒的に上回る。履正社は清水大成、岩崎峻典の2人がどこまで踏ん張れるかがカギだ。