小野獲得はFC琉球のターニングポイント 観客数が1.5倍、高まる沖縄のサッカー熱

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小野のデビュー戦は過去最高の動員数を記録

新天地・FC琉球デビューを飾った小野伸二。スタジアムには最高記録を1.5倍更新する観客が訪れた 【(C)J.LEAGUE】

 入団会見からわずか6日後の8月17日、小野伸二が新天地・FC琉球デビューを飾った。J2第28節の横浜FC戦、2点を追う状況で後半20分からピッチに立つと、積極的にボールを呼び込んで攻撃を活性化。試合終了間際には直接FKで惜しいシュートを放つなど、限られた時間ながら見せ場を作った。

 試合後、小野は「たくさんの方が来てくれてうれしく思います。その中でプレーできる選手は幸せだと思います」と第一声で喜びを語ったが、「(試合の)雰囲気を変えても結果が残らなければ意味がない。自分は勝ち点3を取るために沖縄まで来たので、その中で何もできなかったことは残念」と続けた。「自分たちで攻撃が手詰まりになる部分が多くあった」ことを課題に感じ、チームとしてオプションを増やすこと、試合の流れを読めるようになることを改善点として挙げた。9月に40歳を迎えるベテランの次なる目標は、もっとコンディションを上げて1分でも長くプレーし、勝利に貢献すること。先のことを考えず、目の前の1試合1試合に集中する姿勢は、昔から変わらない小野のスタイルだという。

 この日のグッズ売り場は小野の新たな背番号「7」の付いたユニホームやグッズを求める人たちでにぎわい、席が取れずに立ち見をする人たちのために急きょ芝生エリアを開放した。ホームのタピック県総ひやごんスタジアム(タピスタ)は、地元にやってきたスター選手を一目見ようとする観客で溢れた。動員数はこれまでの最高記録だった8000人の約1.5倍となる1万2019人。小野投入後もスコアは動かず、試合は1-3で敗れたものの、スタジアムには選手たちを鼓舞する指笛が鳴り響き、最後まで温かい声援が送られた。

倉林会長が感じた小野獲得の効果

タピスタは試合前からかつてないにぎわいを見せていた 【(C)J.LEAGUE】

 多くの沖縄県民を巻き込んだ小野のデビュー戦について、FC琉球の倉林啓士郎会長は「私が就任してから2年半かかって、ようやくこうした景色を見ることができた」と語り、こう続けた。

「小野選手が加入してくれたことは大きな出来事ですし、(観客増加は)目に見える効果だと思います。沖縄では前売り券が売れないとか、サッカーの試合では満員にならないといった声もありましたけれど、そういう考えが変わっていく。すぐに結果として出ているし、これからも変わっていくと思います。

 お客様がスタジアムに来てくれて、応援してくれて、グッズを買ってくれて、飲食してくれる。それによってクラブが大きくなるし、新しい選手を獲得することもできる。(小野の獲得は)のちに振り返った際に1つのターニングポイントになると思います」

小野「1回で終わったら意味がない」

沖縄を盛り上げ続けるための決意を語る小野(取材協力:ノボテル沖縄那覇) 【スポーツナビ】

 FC琉球は今季J2に昇格し、開幕こそ4連勝を飾ったものの、第28節までを終えて16位と残留に向け予断を許さない状況が続く。沖縄に吹く強烈な追い風を味方にするためにも、J2の残り14試合が正念場だ。

 北海道コンサドーレ札幌はかつてはJ1とJ2を行き来していたが、野々村芳和社長が就任した2013年頃から着実な強化を続け、17年からJ1に定着。今季も第23節までを終えて6位と一桁順位を保っている。14年に札幌へ加入した小野は、札幌というクラブが変わっていく過程を体感した。FC琉球が今季J2に残留することの価値もを理解している。

「(J2とJ3を)行ったり来たりするようなクラブだといけないし、環境も変わっていかない。簡単に変わるものではないですから、時間とともに。ただ自分がいる間にそれが達成できれば、これほどうれしいことはないです。そのためには結果が大事ですから、結果を求めていきます。

(多くの観客が集まったことは)うれしいですけど、1回で終わったら意味がない。継続して1万人近く観客のいる環境で試合ができる状況が続けば、僕が来た甲斐があると思います。そういう意味で横浜FC戦の負けは大きい」

 次こそ、スタジアムを満員にしてくれるサポーターとともに勝利の喜びを分かち合いたい。小野伸二の新たな挑戦ははじまったばかりだ。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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