FC琉球の“最年少社長”が目指すもの
始まる「オール沖縄」への挑戦

「タヒチで産業が生まれると思いますか?」の真意とは

FC琉球の17シーズン新体制発表会見が行われた。写真は左から今季から主将となった藤澤典隆、金鐘成(キム・ジョンソン)監督、沖縄県サッカー協会・具志堅朗会長、倉林啓士郎社長、クリエイティブディレクターに新任した吉田ロベルト氏
FC琉球の17シーズン新体制発表会見が行われた。写真は左から今季から主将となった藤澤典隆、金鐘成(キム・ジョンソン)監督、沖縄県サッカー協会・具志堅朗会長、倉林啓士郎社長、クリエイティブディレクターに新任した吉田ロベルト氏【©FC RYUKYU】

 いま、沖縄でスポーツビジネス熱が高まっている。


 毎週のように県内のどこかでスポーツビジネスに関するイベントや勉強会が開催されている。ゲストスピーカーも2002年のワールドカップ(W杯)日韓大会の招致に尽力した広瀬一郎氏やアンダーアーマーの日本総代理店である株式会社ドームの代表取締役・安田秀一氏などそうそうたる顔ぶれだ。


 沖縄は1月や2月でも温暖な気候のため、以前よりプロ野球やJリーグのキャンプ地として利用されており、今やトレーニング地としてアジア全域からチームや個人が来沖するまでになった。そこで沖縄は県全体で観光以外にスポーツ産業を基盤に「スポーツ立県」の実現を目指している。沖縄のスポーツを取材するたび、その「熱」が高まっているように感じる。


 そんな沖縄でのスポーツの取材を通して聞いた、忘れられない言葉がある。かつて那覇市をホームタウンとした「かりゆしFC」というサッカーチームが存在したが、経営が行き詰まり10年1月に解散。その際のインタビューである関係者はこう口にした。


「タヒチで産業が生まれると思いますか?」


 経済基盤が弱い地域でプロスポーツの経営が成り立ちますか、と言いたかったようだが、これは本当だろうか。ハンドボールクラブの琉球コラソンやBリーグに所属する琉球ゴールデンキングスは市民や県民から熱狂的に支持されており、ファンやブースターは県外にも存在する。堅実な経営を続けて年々成長を遂げているのだ。プロサッカークラブはなかなかうまくいっていない現状があるが、その原因は明白だろう。すべては経営者によるところが大きい。

Jリーグ最年少オーナー兼社長の挑戦

新社長となった倉林氏(右)は現在35歳。Jリーグ最年少オーナー兼社長の挑戦が始まる
新社長となった倉林氏(右)は現在35歳。Jリーグ最年少オーナー兼社長の挑戦が始まる【©FC RYUKYU】

 約1年半で3度目の社長交代だった。


 17年1月10日、沖縄県庁の記者会見室においてJ3・FC琉球の2017シーズン新体制発表会見が開かれ、倉林啓士郎新社長の就任あいさつがあった。会見前、テレビ局の取材記者が「03年のクラブ創設以来、社長はもう何人目か分からない」と苦笑していたが、いざ会見が始まると雰囲気が一変。FC琉球のクリエーティブディレクターに就任したデザイナーの吉田ロベルト氏と現代アーティスト「ナマイザワクリス」氏が手掛ける斬新な新ユニホームやジンベイザメをモデルにした新しいマスコットも発表された(ちなみにマスコットはネーミングを一般公募中、期日は1月末まで)。


 新社長の倉林氏は現在35歳でスポーツメーカー「イミオ」の代表取締役を務めている。東京大学在学中に起業し、自社ブランド「SFIDA」のボール「INFINITO」は日本フットサルリーグ(Fリーグ)の公式球に採用されるなど、若くして成功を収めた起業家だ。FC琉球とはJ3に昇格した14年より、ユニホームサプライヤー契約を交わしたことが出会いとなった。会見で倉林氏は社長就任についてこう語った。


「沖縄出身でない人間としては非常に悩む部分もありましたが、このクラブを新しく立て直すことで、沖縄という素晴らしい魅力的な地域のスポーツ振興や県民のためになるのであればということで、お受けすることにしました。17年からの新生FC琉球については、まずは経営の安定化を前提として、しっかりと沖縄に向き合い、県民・地元企業・自治体の『オール沖縄』に必要と感じてもらえるチームを目指すというのが方針です」


 また、倉林氏は社長就任の話が出たのが昨年11月下旬であることも明かした。一見、クールなビジネスマンに見えるが、眼鏡越しに見える瞳や表情には少し疲れが見えており、ここ数カ月のスピード展開が決して平坦なものではなかったことを物語っていた。倉林氏はJ3・ブラウブリッツ秋田の岩瀬浩介代表と同じ年齢で、現在Jクラブ最年少の社長である。加えて、筆頭株主でもある倉林氏はJリーグ史上最年少オーナーということになる。1月中には新たに胸スポンサーも決まるというが、そうなれば昨季のマイナスを帳消しにするばかりか、開幕前に黒字化を達成する可能性が高いという。

上野直彦
上野直彦

兵庫県生まれ。スポーツライター。女子サッカーの長期取材を続けている。またJリーグの育成年代の取材を行っている。『Number』『ZONE』『VOICE』などで執筆。イベントやテレビ・ラジオ番組にも出演。 現在週刊ビッグコミックスピリッツで好評連載中の初のJクラブユースを描く漫画『アオアシ』では取材・原案協力。NPO団体にて女子W杯日本招致活動に務めている。Twitterアカウントは @Nao_Ueno

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