選手を育てる=「人生」を教えること 野村克也の指導論
第1回
ノムさんが指導とは何か、を自身の監督経験から説く 【カンゼン】
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その原点はヤクルト時代だった。私の自宅を訪ねてきて、当時の相馬和夫球団代表から監督要請の声を受け、「私でいいんですか?」と質問した後にこう答えられた。
「もちろんです。ウチの本物の選手たちに本物の野球を教えてやってください」
実に重い言葉である。「本物の野球」というのは、「勝つための野球」とも受け取れるし、「基本に忠実な野球」「考えてプレーする野球」など、野球にまつわるさまざまな言葉が連想される。だが、私はあえて「人間教育」をしていくことを優先した。
ヤクルト時代の春季キャンプ中は、「1時間」と決めて、全選手を前にミーティングを行っていた。ここで言うミーティングとは、相手チームの攻略法などを授けたのではない。それはシーズンに入ってからでも、いくらでも時間をとれるものだ。
私が時間をかけて選手に説いたのは、人間学や社会学、組織学である。人間とは「人の間」と書くが、そもそも人と人の間にいるのが人間である。そのために人間関係をいかに円滑にすることが大切なのか、この点が大きく問われてくる。
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