ラグビー日本代表・稲垣啓太が語る手応え 「今までで一番、成長を感じた」
奪われないためにボールを持った選手の動きも大事
ボールを持つLOトンプソン(中央)をサポートするPR稲垣 【斉藤健仁】
稲垣は「(ジャッカルに来る相手をはがす)クリーンアウトの判断も大事ですが、クリーンアウトはボールキャリアとのセットなので、ボールキャリアのディテールにこだわりたい。(走る)コースや何秒粘れるか、倒れてからのダブルアクションができるのか、などですね」と次戦を見据えた。
稲垣はスクラム、ラインアウトのリフト、ボールキャリー、タックルなど、高いレベルにあり、当然、プレー面でもチームを引っ張っているひとり。「宮崎で人生で1、2番目にきついことをやってきてその成果が出た。いつかは取りたいと思っていた」と破顔したように、フィジー代表戦で稲垣は初めて「ソード賞(チーム内MVP)」を受賞した。そんな稲垣が、昨年からよく言うようになった言葉に「ディテール(詳細)を詰める、こだわる」がある。細部まで大事にするという意味である。
基礎をつくった母校に寄付「新潟県全体のレベルアップに」
高校時代からの積み重ねで、世界に通用するPRとなった稲垣 【斉藤健仁】
新潟県内であれば雑なプレーでも通用していたが、樋口監督に「そういうプレーをしていたら先に進めない」と言われた稲垣は、基本的な、ひたむきなプレーを高校から繰り返した。「礎がないと応用がない。高校生活で学んだことが僕の地盤を作っている」と、基本を大事にする姿勢は「ディテール」を大事にする今にも生きている。
そんな母校のグラウンドを樋口監督が天然芝にしようと動いていた。5月にそれを聞いた稲垣は初期費用の300万円を寄付する。「後輩のため、母校のためにできるんだったら、ここのタイミングかと思って費用を負担させていただきます。いくらでもいいので」と返事をした。「恩返しができていない……」と思い、金額を聞く前に、すべて負担することを決めていた。
「僕はそういう部分でしかサポートできない。高校代表に選ばれたときも壮行会をしてくれたし、パナソニックに入ったときもそういう会をしてくれて、前回のワールドカップに出たときも応援してくれた。ただ、新潟工業だけが強くなればいいというわけではない。芝生のグラウンドがあれば、他の学校も練習できるし、県外のチームがきてもいい。新潟県全体のレベルアップにつながる」(稲垣)
母校や地元・新潟への思い、そして前回のワールドカップだけでなくレベルズ、サンウルブズと世界で戦ってきた日本代表27キャップを得ている選手としての責任感からの行動でもある。終始、一貫性を持ったプレーを続けている稲垣はジョセフHCの信頼も厚い。
「ディテールの向上にゴールはない」
左PRの稲垣(中央)とHO堀江(左)。パナソニックでも同僚の2人の日本ラグビーへの貢献度は大きい 【斉藤健仁】
開幕まで50日を切ったワールドカップに向けては「勝たなければ何も始まらないので、勝利にこだわった試合に徹したい。勝ったらまたファンに新たに喜んでもらえると思うので、ベスト8に行くという結果をしっかり残したい」と勝負に徹するつもりだ。
「ディテールの向上にゴールはない」と言うものの、「自分のすべきことをやっていれば、おのずと(ワールドカップ出場は)ついてくる」。稲垣は自分の信念とディテールを大事に、リーダーのひとりとしてチームのための行動をし続けることこそが、日本代表初のベスト8進出への近道だということを信じている。