山崎悠麻に聞いたパラバドミントン観戦術 チェアワークを弄ぶ精密ショットの妙技
東京パラリンピックの車いすWH2クラスでメダルを目指す山崎悠麻に、パラバドミントンの魅力を聞いた 【写真:C-NAPS編集部】
そんな新競技のメダル候補である山崎は、健常者だった小学校時代にバドミントンの全国大会に出場した実力者。最大の長所であるショットの正確性は、その時代に培われたスキルだ。「テニスとは違いシャトルをワンバウンドさせてはいけないというルールは、健常者と同じなので結構ハードな競技です」と語る山崎に、パラバドミントンの基本ルールや注目選手、観戦ポイントを聞いた。2児の母として子育てと仕事を両立させながら目指す、パラリンピックの夢舞台への思いとは――。
パラバドミントンの障がいクラス分けと基本ルール
私は、小学2年生から中学3年生まで、健常者としてバドミントンをプレーしていました。なので、パラバドミントンを始めた当初からショットコントロールなどはある程度適応できていました。でも車いすの操作(チェアワーク)にはかなり苦戦しましたね。バドミントンのラケットを持ちながら車いすを操作するので、自分の行きたいポジションに素早く移動するだけでも一苦労でした。
車いすクラスと健常者・立位クラスの大きな違いは、コートの広さです。健常者・立位クラス(SL3クラス以外)はコート全面を使用しますが、車いすの2クラスは、コートの半面だけを使用します。コートが狭くなるので、とくにショットの組み立てが重要になります。狭いスペースの中でも相手のチェアワークを見つつ、急所を突けるようにショットすることがポイントです。車いすを動かしながら、試合を組み立て、さらに狭いコートの中に狙いすましてショットするという繊細な技術が求められます。
背中をそらしてのショットなどダイナミックな動きは、パラバドミントンの魅力のひとつだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
車いす2クラスのシングルスでは、ネットとサービスラインの間にシャトルが落ちた場合はアウトで、相手の得点になります。なので、健常者のバドミントンのようにネットすれすれを狙うドロップショットはアウトになります。ただ、サービスラインギリギリにシャトルが落ちる場合はインプレーになるので、素早い移動での対応が必須です。小刻みな動きや前後の動きができないと、車いすを速く切り返すことができません。チェアワークを磨くことは試合を優位に進めるうえで重要なポイントになります。
また、健常者のバドミントンでは、強烈なスマッシュが有効打になりますよね。パラバドミントンの車いす2クラスは常に座っている状態なので、スマッシュに角度を付けることは非常に困難です。そのため、スマッシュが有効打になる事はそこまで多くありません。スマッシュよりもむしろ狙いすましたコントロールショットの精度が勝敗を分けます。