連載:真夏の日本一はどう決めるべき? 現場からの生の声

東福岡・志波総監督がインハイに持論 「高体連から外れれば、迅速に動ける」

松尾祐希

40年以上高校サッカー界に携わってきた東福岡の志波総監督は、インターハイに対し独自の見解を示した 【松尾祐希】

 夏本番を迎え、日中の気温が35度を超える日も少なくない昨今。54回目の全国総合体育大会(インターハイ)・男子サッカー競技が7月26日(開会式は25日)に幕を開けた。今年度の開催地は沖縄。降り注ぐ日差しは容赦なく、選手たちは過酷な環境で夏の覇権を争っている。

 通常とは異なる10分短い35分ハーフで争われるとはいえ、7日間(1日の休養日を挟んでの3連戦)で最大6試合を戦う日程は実にハード。けが人や体調不良者が出るのは往往にして起こり得る状況であるが、その一方で17名しか大会にエントリーできない。GKを除くとベンチのフィールドプレーヤーは5名のみで、各チームはアクシデントに見舞われると選手起用に頭を悩ませる。

 本連載の1回目と2回目にそれぞれ話をうかがった黒田剛監督(青森山田)、山田耕介監督(前橋育英)も日程やレギュレーションの問題点を口にし、全国高等学校体育連盟(高体連)側に対して早急な改善を求めていた。

 3回目の今回は、40年以上高校サッカー界に携わってきた東福岡の志波芳則総監督が登場。夏のインターハイと冬の選手権で通算6度の全国制覇を経験した名将は、いかなる意見を持っているのか。高体連にサッカー競技が加わった歴史を踏まえながら独自の見解を述べてくれた。

「複数の都道府県開催ならば登録人数は増やせるはず」

――インターハイのレギュレーションについて、どうお考えですか?

 サッカー競技が夏のインターハイに加わったのは、自分が高校1年生の時でした。それまでは冬の高校サッカー選手権がインターハイと同等の扱いだった。ウインタースポーツの感覚で夏に行う考えはなかったんです。そして、1966年度に青森でインターハイが開催される際に、高体連の方から「今回は東北の青森でやるので涼しいからぜひどうですか」という誘いが他の競技も含めてあった。それが夏のインターハイに参加する流れになった経緯です。

 以降も同じ時期にやっているけれど、夏の連戦と言っても高校生年代なので90分間の試合を戦わせたい。35分ハーフの70分ゲームだと結果的に何が生まれるかというと、サッカーはいろいろな戦い方がある中で先に得点を奪って、後は守って逃げ切るような展開。しかし、今のユース年代は45分ハーフで戦う機会がほとんどで、試合の進め方が変わってくる。インターハイでも同様のルールがしっかりと使われないと選手たちのためにならない。

 ただ、シードではなく1回戦から戦う場合、3日やって1日休んでまた3日戦うのでタイトな日程になってしまうので、90分の試合を行うのは難しい。加えて、大会にエントリーできるのは17名。ベンチメンバーの1人はGKなので、フィールドプレーヤーは5人しかいない。その5人は少なくとも、GKのポジションをこなせる準備もしておかないといけないので、選手のエントリー数は非常に難しい問題です。ただ、サッカーは団体種目の中で登録人数が最も多い。宿泊やいろいろな問題があって選手の登録人数が17人になったのかもしれませんが、今の時代17人では戦えない。プレミアリーグ(高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ)でも18人がベンチに入れますから。本来なら登録人数を20人にしてほしいですね。

 しかも、今は地域単位で開催している。昔は一つの都道府県で全ての競技種目をやっていたので、宿泊施設の数が不足する可能性を考えて登録人数を17人にしていたのかもしれないけれど。他の競技もあるので、ギリギリの人数にした側面があったんでしょうね。だけど、一つの県で大会を開催するのではなく、少なくとも3つ4つの都道府県でやるのであれば、十分に宿泊施設はまかなえるようになったはずです。エントリーの人数を20名にすることはそんなに難しいとは思わないですね。

――なるほど。酷暑の連戦を行う以上は選手登録数の問題を解決したいですよね。

 今回は沖縄開催ですしね。あとは、なぜ僕があえて登録人数のところで20人という数字を出しているかというと、選手たちの進路問題もあります。大学に推薦で入る際に基準があったりする。インターハイでベスト4以上とか、そういうのもあるのでね。

――全国大会出場の実績が必要ということですよね。

 その通り。20名プラスにして3名が登録できれば、その子たちの進路も変わってくるかもしれないんです。

――選手たちの可能性が増える意味では必要ですね。

 そうですね。25名まで登録できればさらに良いし、世界的にも見てもワールドカップなどは23名がメンバー入りできる。各ポジションに2人登録できて、GKは3人だし。

「2試合やって1日休む形が望ましい」

「選手たちの体調面を考えると、3試合やって1日空いて3試合は厳しい」と志波総監督(写真は昨シーズン) 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

――17人で戦うリスクは、累積警告での出場停止やけが人が出た場合です。連戦なので可能性が高いですし、最悪ベンチに3〜4人しかいない状況が生まれてしまいますね。

 そうなんです。また、インターハイは最大で6試合だけれど、イエローカード2枚で出場停止。準決勝でリセットもされないので、このルールもどうかなという思いがある。

――特に初戦から強豪校同士がぶつかるのであれば、イエローカードをもらわずに済む事はほとんど無いです。

 そうなんですよ。選手たちの体調面を考えると、3試合やって1日空いて3試合は厳しい。できれば2試合やって1日休む形が望ましいと思う。そして、イエローカードは準決勝のところで累積がリセットされるレギュレーションが良い。現状では6試合やるので、休養日を含めて7日間が必要になる。今僕が言った案では8日間の日程になるけれど、開会式をやらないで1日だけ日程を伸ばせば、現行の方式を維持できるんですよ。

――ヨーロッパと比較しても、これだけ過酷な日程の大会はないですよね。

 ないですよ。FIFA(国際サッカー連盟)のルールでは90分ゲームをやった場合、必ず48時間は完全に休まないといけない。だから結果的にインターハイでは90分ゲームができない。選手権もそうですよね。連戦が1月2日と3日にあるので。それでも80分で対戦させるのは大変なんですけれどね。

――選手たちのダメージはどうですか?

 空気で膨らませる大きなプールを持って行って、その中に水を貯めて試合後はすぐに浸からせたりしています。

――持っていく負担もありますし、氷の確保も難しいですよね。

 そうですね。場所によってですが。

――逆に8日間の日程を確保できないのであれば、参加校数を絞るのも一手ですよね。

 それも一つの案ですね。

1/2ページ

著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント