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優勝の鍵は「タフさしかない」
前橋育英山田監督が語る過酷な総体の是非
選手としてインターハイを制した経験を持つ前橋育英の山田監督は、現在の夏の総体をどのように見ているのか
選手としてインターハイを制した経験を持つ前橋育英の山田監督は、現在の夏の総体をどのように見ているのか【松尾祐希】

 日向に出れば、一気に汗が吹き出す。年々夏の暑さは厳しくなり、近年では最高気温が35度を超える日も珍しくなくなった。むしろ、当たり前になったような印象さえあるぐらいで、日常生活を送るのも一苦労。外に出て運動をするのは、まさに自殺行為と言えるかもしれない。しかし、高校サッカー界は暑さのピークを迎える7月下旬から8月上旬に全国高校総合体育大会(インターハイ)を行っている。沖縄で7月26日に開幕するインターハイだが、暑さを考慮された大会フォーマットとは言い難い。


 確かにレギュレーションは普段のリーグ戦とは異なり、10分短い35分ハーフを採用している。一方で、7日間で6試合をこなす日程は実に過酷だ。休養日が中日に1日設けられているとはいえ、熱中症に見舞われる選手が毎年のように出ている。ただ、現状で大会フォーマットの見直しは図られていない。


 そこで今回は高校サッカー界に長年携わってきた名将たちを直撃。果たして、大会の在り方は現状のままでいいのか。1回目の今回は指揮官としてだけではなく、選手としてもインターハイを制した経験を持つ前橋育英の山田耕介監督に話をうかがった。

「強豪に勝てば選手の自信になる」

――まず初めに、青森山田とのタフな初戦が待っていますが今年のインターハイの意気込みを教えてください。


 強豪校とは最初からやれた方がいいです。勝利をすれば選手の自信にもなるし、2回戦では大津と対戦できる。去年のインターハイで大津に負けているから、選手たちのモチベーションにもなっています。1回戦で顔を合わせる青森山田はしっかりと守備をしているし、あとはロングスローを含めたセットプレーが強い印象です。


――高さと強さがあるのでそこにどう対抗していくかがポイントになりそうですね。


 本当にしっかりと守備をするし、決めるべきところでゴールを奪うチーム。(試合は)最初から真っ向勝負です。時間が短いから前に出ないといけません。


――相手のキーマンは誰になりますか?


 武田英寿と古宿理久かな。あと1年の松木玖生も良いですよね。ただ、今年は(去年の檀崎竜孔/現コンサドーレ札幌のような)両ワイドがいないし、三國ケネディエブス(現アビスパ福岡)みたいな192センチの選手はいない。自分たちはコンビネーションで攻めていくしかない。多分向こうの方が強いから、相手をはがして仕掛けていきたいと思っています。

「現状のままで行えば、選手の身体が壊れてしまう」

――インターハイのレギュレーションについて、どのように考えていますか?


 暑さがあるので、まずはキックオフの時間を夕方以降にしてほしいですね。


――09年度の奈良大会も準決勝と決勝がナイターで、14年度の山梨大会でも決勝は夕方に試合を行いました。


 ナイターはやりたいのですが、照明の設備がないので簡単にはできないんです。インターハイを今後も続行するのであれば、少しでもいい環境でやらせたい。ナイターが難しいとしても、五輪のサッカー競技のように総合開会式の前にスタートさせて、間隔を開けて試合をできるようにしてほしいですね。


――キックオフ時間の調整も検討の余地があるように感じますが。


 できるところから改革をしてほしい。全部一気にやると、改革はできないという話になってしまう。もし現状が続けば、インターハイを廃止することも考えないといけないですよね。


 現状のままで大会を行えば、選手の体が壊れてしまう。インターハイのサッカー競技をやめて、独自に大会をやるのも一つの考え。あとは北海道みたいに涼しい場所に限定して、大会をやることも考えるべきだと思います。


――09年度に優勝をした際は全6試合を戦いました。選手の様子を間近で見ていて、身体へのダメージはどうだったのでしょうか?


 日に日に選手の元気がなくなっていきます。試合をできる選手は何人いるかをスタッフに聞くと、17名の登録メンバーに対して「13名しかいません」という場合もあった。選手が試合に出られない以上はそれでやるけれど、身体に相当負担が掛かっているのは間違いないです。1回戦からずっとベストメンバーでやることは不可能だし、選手層が厚いチームじゃないとインターハイを勝ち抜けられないと思いますね。


――大会の登録人数も17名と少ないので、けが人などのアクシデントが発生した場合、より厳しい状況で選手を起用しなければいけません。


 遠征する費用の問題もあるけれど、22名ぐらいは登録できるようにしてほしいです。各ポジションに2名ずつ置けるような体制が望ましいので。あと、17名しかエントリーできない場合、一つの武器を持った選手を入れることが難しくなる。複数のポジションに対応できるポリバレントな選手が必要になるんです。本当はある選手を左サイドバックに入れたいけれど、もう一人はボランチも左サイドバックもできるから、この選手をメンバーに入れようとなる。純粋に実力を見て、選手を選べないんです。


――あとはイエローカードの問題もありますよね。準決勝で累積警告のリセットもないですし、今年は初戦から強豪校の青森山田と対戦するので(カードを)もらう可能性は高いと言えます。


 累積警告のリセットについては、経費が関わるわけではないから、すぐにできるはずです。あとは試合時間もなんとかしたいです。35分ハーフの場合は17分あたりでクーリングブレークが入るので、ひと息つける。となると、強いチームが勝つことが少なくなり、番狂わせが増えてしまう。(通常のリーグ戦は90分でやっているので)35分ハーフの場合は普段と違う駆け引きが生まれる。試合も本当にあっという間に終わってしまうんです。


――先行逃げ切りができるチームが有利だと感じます。


 そうですよね。最初からギアを上げないといけない。インターハイは決勝以外延長がなく、即PK戦ですから。

松尾祐希
松尾祐希

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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