視覚障害者柔道にニューカマー出現 競技歴わずか2年の瀬戸勇次郎

宮崎恵理

海外の戦い方も研究して

何度も何度も練習して技術を染み込ませるストイックさが武器。一方でアニメやゲームが好きだという、19歳らしい素顔も 【スポーツナビ】

 2018年、初優勝した時の全日本選手権には、海外の選手も出場していた。今年に入り、東京国際大会をはじめ、IBSAグランプリなど国際大会に出場するようになった。

「欧米やカザフスタンなどのアジアの強豪選手は、相手を引き倒すような変則的な戦い方をする。経験がなかったので、そういう戦い方に慣れなくてはいけないということも、痛感しています」

 瀬戸の得意技は背負い投げ。相手の動きを瞬時に察知して、繰り出す。反射神経のようなもの、という。

「柔道を始めてから十数年、それしかやってこなかったから」

 テクニックとして技をかけるというより、何度も何度も練習して身についたことだけが、試合に出るのだと語る。最近では、大内刈りもやっと体が覚えてきた、新しい武器だ。

「海外選手の変則的な戦い方への対応を含めて、これまでの自分のやり方だけでは勝ち続けることはできません。また、海外の選手はビデオ録画して対戦相手の分析もしっかりやっています。だから、映像で見てもわからないような細かな足技なども身につけていかなくてはいけないと感じています」

「勝つも負けるも自分次第。そこがいい」

 大学近くの一人暮らしの部屋に帰った後に、対戦相手の映像分析をするかと思いきや、「家ではアニメを見たり、ゲームをしたり」という今どきの若者。深夜までゲームに熱中しても、朝練には這いつくばってでも出かける。

「個人戦である視覚障害者柔道では、勝つも負けるも自分次第。そこがいい。視覚障害柔道で強くなるために、何にでも挑戦したいです」

 伸び盛りの19歳。目指す目標は、やはり東京パラリンピック。

「まずは出場権をしっかり獲得すること。遠くの、大きな目標だけを見ているとコケてしまうので、そこまでの一つひとつの試合を大切にしていきたい」

 東京の先、4年後のパリ大会も、8年後のロサンゼルス大会もある。視覚障害者柔道家としての歩みは、始まったばかりだ。

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著者プロフィール

東京生まれ。マリンスポーツ専門誌を発行する出版社で、ウインドサーフィン専門誌の編集部勤務を経て、フリーランスライターに。雑誌・書籍などの編集・執筆にたずさわる。得意分野はバレーボール(インドア、ビーチとも)、スキー(特にフリースタイル系)、フィットネス、健康関連。また、パラリンピックなどの障害者スポーツでも取材活動中。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』。

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