連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

エペ世界1位・見延和靖が語る決闘の裏側 フェンシングの魅力は壮絶な「心理戦」

C-NAPS編集部

注目は老獪なウクライナ人選手と団体戦のロシア

剣へのこだわりは人一倍で、毎試合1つの剣を1時間近くかけて調整している 【写真:C-NAPS編集部】

 五輪の際に注目してほしいフェンサーの1人目は、スイスのマックス・ハインツァー選手ですね。レッドブルがスポンサーにつくほどの選手で、トリッキーなプレースタイルが注目されています。身長は僕よりちょっと低いくらいでリーチも短いのですが、ベルギアンという短いグリップを使って剣をブン回すスタイルです。「手ってそんなに速く動くのか!」と思うほどのスピードなので、フェンシングを知らない方でも楽しめるはずです。

 2人目は僕が今最も注目している、ウクライナのボグダン・ニキシン選手です。今年で39歳になるんですが、去年まで世界ランキング1位でした。彼はその年齢になるまで1位を取った経験がなかったんですが、30代後半になってようやくフェンシングのピークが来ている感じです。これがまた「エペ」の面白いところ。僕も30代になりましたが、「自分もまだまだいける!」と勇気づけてくれる選手なのですごく注目しています。

 また、ボグダン・ニキシン選手は、ライバルとしても意識しています。というのも、ナショナルチームのコーチがウクライナ人なので、ウクライナとは定期的に合宿をやっています。僕らがウクライナに行ったり、日本で合宿を一緒にしたりすることもあるので、普段からお互い意識し合っているような存在だと思っています。

 団体戦での日本のライバル国は、ロシアですね。団体戦は3対3の総当たり戦で、リレー方式でポイントをつないでいきます。団体戦で勝つ鍵はチーム3人にプラスしてリザーブ1人、さらにはコーチも含めての一体感だと思います。そうしたチームでの戦い方が上手なのが日本とロシアなんです。

 ロシアは個々で戦いそうなイメージがありますが、すごくチームに一体感があるんです。仮に1人が負けても次の選手にバトンをうまく託せている印象を受けます。どんな逆境に置かれても諦めず、攻めの姿勢を貫くところも強さの秘訣だと思いますね。

こだわるのは地元開催での団体戦のメダル獲得

(左から)山田優、見延、宇山賢、加納虹輝の日本代表で男子エペ初となるワールドカップ団体優勝を果たした 【Getty Images】

 リオデジャネイロ五輪では、個人戦でメダルが取れずすごく悔しかったんですが、それ以上に個人戦のみの出場だったことに物足りなさを感じました。フェンシングは対人競技なので1人で練習ができないですし、強くもなれません。ずっとチームで過ごしてきて、高め合ってきた仲間たちと一緒に五輪で戦えなかったことがもどかしい思いでした。なので、東京五輪ではまず団体戦で出場枠を確保し、男子エペチームでメダルを獲得したいです。

 フェンシングは基本的に海外で試合をすることが多く、日本で行う試合は年間1、2試合あるかないか程度なんです。なので、たくさん応援をしていただいていても、実際に見てもらえる機会は多くありません。そういった意味でも一番応援してもらいたい試合である五輪が、自国で開催されるのはとてもうれしいですし、非常にワクワクしています。

 フェンシングは「騎士道」の精神に則っている競技あり、挨拶や礼儀などを重んじています。同様に日本には「大和魂」や「武士道」という精神がありますよね。もしかして「大和魂」や「武士道」の精神を持ちながら、ヨーロッパ発祥であるフェンシングという競技で戦えたら、格好いい生き様を見せられるのではないかなと。日本人としての誇りを背負いつつ、世界で戦いたいと思います。

2/2ページ

著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント