僕のターニングポイント〜大切な人との物語〜

「小園海斗」を育んだ親子の絆 アスリートの両親だから伝えられたこと

瀬川ふみ子

アスリートの両親から生まれた海斗

元アスリートである両親の血を受け継いだ“サラブレッド”はどんな日々を過ごし、プロ野球への階段を上ったのか? 【写真:山下隼】

 50メートル5秒8の俊足であることをはじめ、身体能力が抜群に高い広島・小園海斗。そんな海斗に、「その運動神経は誰から受け継いだのか?」と聞くと、真っ先に、「お母さん!」と答えた。続いて、「あ、お父さんからも!」と。

 そう、海斗の両親は、二人ともアスリートだった。
 父・考志さんは陸上競技の選手。足がめっぽう速く、走り幅跳びの選手として高校時代に活躍し、大学ではインカレにも出場している。

 高校時代は、日本陸上短距離界のスターで、2008年北京五輪・リレー種目の銀メダリストにもなった、朝原宣治さんがライバル。高校まで幅跳びの選手だった朝原選手としのぎを削り、兵庫県の代表合宿にも共に参加する間柄。「1つ下に朝原がおったから1位になれんかった」と笑う考志さん。朝原さんが1位、1つ上の学年の考志さんが2位ということが多々あった。

 一方、母・こず江さんは、埼玉県の本庄女子高(現・本庄第一高)のサッカー部で活躍。50メートルを6秒前半で走るスーパー俊足女子で、MFとしてチームを全国3位にまで導いた。なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)のゴールキーパーとして活躍した山郷のぞみ選手とは、高校のチームメートだった。

 高校卒業後は、なでしこリーグの前身、L・リーグ(日本女子サッカーリーグ)の旭国際バニーズ(現・バニーズ京都SC)と契約。MFとして4年間活躍した。

 そんなこず江さんが、あるときケガをしてしまい、所属先の旭国際が経営するゴルフ場でリハビリをしているとき、プロゴルファーを目指し、そのゴルフ場に練習生として来ていた考志さんと出会った。

 数年後、結婚。

 そんな俊足アスリートの二人から生まれたのが、小園海斗だった。

練習熱心で研究熱心な海斗に付き合う父

少年時代、野球にのめり込んだ小園の一番の練習パートナーは、いつも一緒にいた父・考志さんだった 【写真:山下隼】

 生まれたときから、とにかくよく動き、9カ月で歩き出し、それからも、タッタタッタと歩き、活発に走り回る海斗。すばしっこく、活発すぎる海斗を追いかけるのは、俊足の母・こず江さんでも大変だったという。

 父がやっていた陸上かゴルフ、母がやっていたサッカー、そのどれかの競技をしていてもおかしくないが、「気付いたらバットを持っていましたね」とこず江さん。こず江さんがつけていた育児日誌によると、何と、生後9カ月のところに「父と(ゴムボールで)キャッチボール」と記されているから驚きだ。

 プロゴルファーになる夢をあきらめ、一時期サラリーマンをしていた考志さんは、「体を治す仕事をしたい」というもう一つの夢に向かって学校に通い、海斗が2歳のとき、宝塚市内で整体院を開業。そこから山に向かった自然豊かなところで海斗は育った。

「自然豊か……というかイノシシが出てきちゃうぐらいのところで、目の前には山。海斗は山の中を毎日毎日走り回っていたので、足腰もそれで鍛えられたのかな」とこず江さんは話す。

 小学生になると、地元の宝塚リトルで野球を始めた海斗。「野球のことはまったく分からなかった」と言う両親だが、「自分たちにできることで支えていこう」と後押しする。

 こず江さんは、グラウンドまでの送迎。考志さんは、平日の自主練習と、研究熱心な海斗の相手チーム分析に付き合う。

 リトルで教わってきたことを平日の自主練習で何としても自分のものにしようという、向上心が高い海斗は、自分の打撃フォームを動画撮影しては、それを家で見て修正する。父に「どう?」と聞いて、父が「ここがこうなってるからこうしたらいいかも」と答える。「こうならどぉ?」「いいね」。フォームが崩れると、いいときのフォームの動画を見て、また練習。その繰り返し。

 負けず嫌いでもある海斗は、相手チームの分析にも余念がなかった。次の試合の対戦相手が決まると、相手チームの試合のDVDを引っ張り出してきて、ピッチャーがこうだ、バッターがどうだ、と研究しまくる。そのピッチャーを想定して外でシャトル打ちもする。そこまで付き合っていたのが父だった。

「近所に野球を一緒に練習する相手がいなかったのもありますが、いつも父と一緒。二人は本当に仲がよくて、いつも『練習だー』『相手分析だー』『よし、もう一回練習だー』ってやっていましたね」とこず江さんは振り返る。

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