俺たちが多摩川クラシコを重視する理由 森重真人(FC東京)×谷口彰悟(川崎)

後藤勝

両者監督交代があった16年〜17年シーズン

代表ではチームメートになった経験もあるだけに、終始なごやかな雰囲気で会話が進んだ 【石田祥平】

――城福浩監督が復帰した16シーズンは東京にとって苦しい年で、多摩川クラシコも厳しい結果になりました。4月16日のファーストステージ第7節はホームの味スタで、川崎に2−4で敗戦。7月23日のセカンドステージ第5節はよく耐えて守りましたが81分、小林悠にゴールを決められ0−1で敗戦です。

森重 ファーストステージ第16節の浦和戦から(ネイサン・)バーンズとムリキを前線に置いて超カウンターを狙ったんですけれどね……。その浦和戦は先制して「前半どハマりした!」と喜んでいたのに、後半に逆転負け。流れがよくなかったことを覚えています。そういえば一回目の対戦では先発していなかったんだっけ?

谷口 途中から出ました。奈良(竜樹)とエドゥアルドが先発で。

森重 金髪に染めたんだよね。どうしたの?(笑)

谷口 いや、気合いを入れようとしたんですけれど、やり方を間違えました(笑)。

森重 グレた?

谷口 グレてはいないです! 大丈夫です(笑)。

16年シーズンは金髪だった谷口 【(C)J.LEAGUE】

──このときの東京のイメージは?

谷口 しっかり守ってカウンター、それこそマッシモ監督が就任した年から対戦しているので、そういうイメージが残っていました。バーンズやムリキといった速くて強い前線に対するCBとしての対応を監督によく言われた記憶があります。

森重 彰悟はもう、この頃には一本立ちした感があったよね。ボランチの選手だと思っていたけれど、CBで起用されるということはよほどの信頼があるんだな、と思った記憶がありますね。

──そしてなんと17シーズンは、大久保嘉人が東京にやってくるという。

森重 あの年ですね。監督がシノさん(篠田善之)から安間(貴義)さんになって、2年連続シーズン途中で監督交替。

谷口 でも、東京強かったですよ。17年は最初の多摩川クラシコ(3月18日の第4節)が0−3だったのを覚えています。開幕戦で鹿島アントラーズに勝った勢いもあったみたいで、後半、東京に先制されてから押し返せずに崩れていったという試合でした。3点目は嘉人さんに取られてしまいましたし……。「この人だけには取らせるな!」が合言葉だったんですけどね。

 この年は鬼木(達)監督の1年目なんですけど、ぼくたちの変化を感じましたか?

森重 守備の意識が強くなった分、バランスがよくなった。もともと攻撃のチームだったしそこに関してはできあがっていたので、プラスアルファのところを鬼木さんがしっかりやったから、初のタイトルを獲れたんじゃないでしょうか。

──2回目の多摩川クラシコ(8月5日の第20節)は1−1の引き分けで、谷口選手がコーナーキックからゴールを決めています。

谷口 全体的にシュートが多かった試合だったと思います。

森重 川崎のシュート、23本だもん。やばいでしょ。彰悟のマークについてたのオレじゃないよね?

谷口 橋本拳人だったと思います。

森重 自分がマークしていたかと思って焦った(笑)。

谷口 気持ちは分かります(笑)。どのポジションの選手にも絶対にゴールを与えたくないのがディフェンダーなので。

試合展開は「東京が川崎の攻撃をどう受け止めるか」次第

「負けて優勝が決まった次の試合だった。モチベーション高く戦えた」と昨年の第33節を振り返った谷口 【石田祥平】

──昔の多摩川クラシコは両方とも大量得点、みたいな試合も珍しくなかったのですが、どちらも守備が堅くなってきたような印象です。

森重 どちらかというと、ぼくらが川崎の攻撃をどう受け止めるか、で変わってきたと思うんです。川崎がやることは毎試合変わらないので、それにどう自分たちが対応するか。マッシモ監督になるまでは攻撃のぶつかり合いだったけれど、以降はぼくらがどう守るか、川崎がどう攻めるかという戦いになってから試合が落ち着いてきたんじゃないかなと思います。

──谷口彰悟以前・以後で戦い方が大きく変わったわけですね。18シーズンの東京は長谷川健太監督が就任。連戦で体力的に苦しかった5月5日の第13節は東京が好調の時期で、敵地の等々力ながら2−0の勝利を収めました。しかし川崎の優勝が決まった状態で迎えた第33節は、逆に味スタで川崎の2−0勝利です。

谷口 ぼくらはひとつ前の第32節でセレッソ大阪に負けて優勝が決まったんですよね。クラシコということで多くのサポーターさんが足を運んでいるし、もう一回ちゃんと戦って最後のふたつ勝って終わろう、と臨んだ試合でした。モチベーション高く戦えたゲームでした。

森重 東京は後半戦でほとんど勝てていなかったので、あまりいい状態で戦えず、残念ながら妥当な結果と言わざるをえないですね。

──今シーズンの開幕戦となった多摩川クラシコでは0−0でしたね。

森重 昨年のホーム最終戦を0−2で終わり、ACLに行けなかった。その勝点を積めなかった要因はなんなのかを振り返って、今年のキャンプに入るときに、「昨シーズン後半戦の戦い方は安易だったね」とみんなで話したんですよ。それをふまえた上での、今年の開幕戦だったと思います。

試合展開の変化を問うと、「ぼくらが川崎の攻撃をどう受け止めるか、で変わってきたと思う」と森重 【(C)J.LEAGUE】

──下馬評では、開幕戦は川崎の有利。でも川崎にとってはボールを支配しながら攻め切れず点を取れない内容で、序盤のつまずきに影響してしまったのでは。

谷口 もうおっしゃるとおりで、ボールを持つことはだいぶできるんですけれど、その先ですね。押し込む形は作れているけれども、決定機があったかと言ったらなかった。押し込んでいるんだったら何回もビッグチャンスを作ってきたのがぼくらなんですけれども、それができない現象がありました。相手どうこうというより自分たちがうまくいっていない、消化不良なゲームだったのを覚えています。

森重 正直川崎とは1試合目で当たってよかったな、と(苦笑)。攻撃は感覚の部分も大きく影響するので、それが仕上がってくる前に試合ができた。でも試合中にひやりとする場面はありましたし、怖いと感じさせられるクオリティーの高さがあるなとあらためて感じました。

谷口 東京はかなりインテンシティーが高いゲームをやってきた、そこの迫力はすごかったし、球際や切り換え、ハードワークを徹底しているチームだとあらためて感じました。この順位にいることも納得できますし、相当、健太さんに言われているんだろうな、と。

森重 いつも重圧感があります。

谷口 オニさん(鬼木監督)も、現役時代はめちゃめちゃ怖かったらしいです。たまに、その片鱗が見えるときがあります。でも、健太さんはそれより怖いんですよね?

森重 健太さんはたぶん、Jリーグで一番……。まあ、怖いと言っても怒鳴り散らすとかではなく、威圧感、威厳がある、という感じだけれど。それが必然的に集中力を高めているということはあるかな。

谷口 その厳しさを乗り越えるためには、ぼくたちも東京と同じ土俵でしっかり戦わないといけないと思っています。いまこうやって少しずつ順位を上げてきましたけれど、ここからさらにひと伸びするためには、もう1段階強くなっていかないといけないと思っています。

お互いに「負けられない」とシンプルながらも強い思いを見せつつ、健闘を誓い合った 【石田祥平】

――さて、7月14日のJ1第19節多摩川クラシコは、首位を争う上位同士の対戦となりそうです。

谷口 お互いが優勝を狙える位置でのクラシコはあまりないので、おのずとモチベーションが高くなるんじゃないかと思います。

 いやー、負けたくないですね。直接対決の勝利には勝ち点6の意味がある、そのくらい重要な試合なので、なんとしても勝ちたい。アウェーですけれどそれをやっていかないと。これ以上離されるわけにはいかないので。後で振り返ったとき、ここからノっていけたという試合にしたいですね。

森重 川崎がこの先、調子を上げてくるのは分かっていますし、チャレンジャーとして臨みたい。ここはひとつ鬼門だと思って、今年自分たちがどう勝ち越せるのか。この試合が東京にとってのターニングポイントとなる試合にしたいですね。

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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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