ウィザーズ番記者は八村塁をどう見る? 「ショックと言える指名ではないが…」

杉浦大介
 日本期待の星はワシントン・ウィザーズへ――。現地6月20日、ニューヨーク州ブルックリンで行われたNBAドラフトで、八村塁(ゴンザガ大)は1巡目全体9位指名権を持っていたウィザーズから指名を受けた。日本人としては史上初の1巡指名選手となった八村に、ウィザーズは何を期待しているのか。これからどんなチームを作ろうとしているのか。

 米ウェブサイト『The Athletic』のウィザーズ番記者、フレッド・カッツ(Twitter: @FredKatz)氏に電話取材を行った。その言葉から、八村とウィザーズの今後がうっすらと見えてくるかもしれない。

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八村塁を指名したウィザーズはどんなチームなのだろうか。番記者に話を聞いた 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

――1巡目全体9位指名での八村指名はサプライズでしたか?

 その通りです。ナッシャー・リトル(全体25位でポートランド・トレイルブレイザーズが指名)、セクー・ドゥムブヤ(同15位でデトロイト・ピストンズが指名)、キャム・レディッシュ(同10位でアトランタ・ホークスが指名)といった有力選手がまだ残っていたので、彼らのいずれかが指名されると考え、塁の名前が呼ばれるとは思っていなかったというのが正直なところです。ウィザーズはサイズとシュート力を持つ選手の獲得をプライオリティにしていたことを思い返せば、“ショック”と言える指名ではない。ただ、サプライズではありました。

――八村選手のプレーのフィルムを見たと思いますが、選手としての印象は? 

 ゴンザガ大時代はそれほど多くの3ポイントショットを打っていませんでしたが、ウィザーズは彼は優れた“ストレッチ4”(相手ディフェンスを外へと広げ、攻撃スペースを作る役割)に成長していけると考えているようです。その部分が今ドラフト前に提示されたチームの課題でした。八村を3ポイントショットを打てるパワーフォワード(PF)として起用していくつもりでしょう。また、現在、バスケットボール運営部門代表を暫定的にこなしているトミー・シェパードは、チームのカルチャーを良い方に変えようともくろんでおり、性格面でも八村に惹かれた様子。その点でもウィザーズのフロントはエキサイトしているはずです。

エースのジョン・ウォール(写真)は故障離脱中。再建中と見られるチームで八村の役割とは 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

――チームのエースのジョン・ウォールが故障離脱中ということもあり、ウィザーズは再建中と見られています。層が厚いとはいえないチーム内で、今季の八村選手はすぐに多くのプレーイングタイムを得ると思いますか? 

 ドラフト後の会見で、シェパードは八村はすぐにプレーできる素材だと話していました。ただ、実際にそうなるかどうかは現時点では分かりません。去年のドラフト全体15位で指名されたトロイ・ブラウン・ジュニアは慎重に起用され、2月後半までコンスタントなプレー時間を得ることはありませんでした。シェパードは、「八村はブラウンとは違う選手で、状況も違う」と話しており、実際に八村の方が年齢的に少し上です。ウォール、ブラッドリー・ビールを軸に上位進出を狙っていた昨季と違い、駒不足の今季のチームが開幕直後から苦戦した場合、早い段階から若い選手に多くのミニッツをプレーさせることはあり得るかもしれません。ただ、すべては状況次第。八村の適応次第でもあるので、何とも言えません。

――2000万ドルのチームオプションを持つジャバリ・パーカーがチームに残留しないと仮定すると、現状、健康体で保障された契約を持つ選手は5人だけ(ビール、ブラウン、イアン・マヒンミ、ジョーダン・マクレー、タリク・フィリップ)という状況です。ペイロールに空きも少なく、大補強も難しい状況で、ドラフト後のウィザーズはどんなチーム作りを進めていくつもりでしょうか? 

 今後はFAに目を向け、まずは昨季ウィザーズでプレーした選手の中で誰を残留させるかを見極めようとするでしょう。ガードのトーマス・サトランスキー、ビッグマンのトーマス・ブライアントを引き止めるのかどうか。値段が上がりそうなボビー・ポーティスの残留は難しいかもしれません。あとはドラフト中に2巡指名権と交換で獲得されたジョナサン・シモンズのように、短期契約のベテランを手に入れ、ロスターの穴を埋めていくのではないでしょうか。

――八村が加わった来季のウィザーズに上位進出のチャンスはあると思いますか?

 補強の手段は限られており、厳しいシーズンになるはずです。プレーオフ進出は難しいでしょう。32勝50敗だった昨季と同じくらいの成績か、それより少し下だと思います。何人かの選手が急成長すれば、41勝(41敗)くらいをマークし、イースタン・カンファレンスのプレーオフ最後の座席(8位)を争うことはできるかもしれません。しかし、それはベストケース・シナリオ。私はそうなるとは思っていません。
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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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