八村塁とNBA全30球団の相性を占う 本命はどのチーム?

杉浦大介
 日本人初のNBAドラフト1巡目指名が有力視されている八村塁(ゴンザガ大)。何位で指名されるのか注目が集まるが、八村にフィットするチームは一体どこなのだろうか。八村とNBA全30チームとの相性を占ってみた。

※相性はチーム名、保持するドラフト指名権に続いて◎ ○ △ ×で示し、各チームごとに寸評を記載。
※保持するドラフト指名権は20日現在のもの。

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NBAドラフト1巡目指名が有力視されている八村。どのチームと相性がいいのかを占ってみた 【写真は共同】

ニューオーリンズ・ペリカンズ(保持するドラフト指名権 1、4、39、57) ◯
 全体1位で話題の大器ザイオン・ウィリアムソンの指名が確実視され、さらにアンソニー・デイビスを放出する大トレードでレイカーズからロンゾ・ボール、ブランドン・イングラム、ジョシュ・ハートといったイキの良い選手を獲得した。若手タレントの多いフレッシュなチームは八村にとってやりやすい環境ではあるだろう。ただ、八村が全体4位までに指名される可能性は高くはないはずだ。

メンフィス・グリズリーズ(2、23) ◯
 19日にエースのマイク・コンリー・ジュニアをトレードでジャズに放出すると報道されたばかり。完全な再建体制に入ったチームに加われば、八村はいきなり多くのプレー時間を得られるかもしれない。全体2位では評判の良いポイントガード(PG)、ジャ・モラントを指名することが濃厚だが、コンリーと交換で手に入れた指名権を使うには、全体23位まで八村が残っていなければならない。可能性は低いが、渡邊雄太と八村の日本人ドリームデュオがメンフィスに誕生することは絶対にあり得ない話ではない。

ニューヨーク・ニックス(3、55) ×
 東の名門チームだが、近年は低迷続き。今オフにはケビン・デュラントをはじめとする大物FA選手の獲得を狙いにいくと見られるが、将来の展望を巡らすのは容易ではない。ニューヨークはやりがいのある舞台だとしても、お家騒動も多いチームだけに、将来性を評価される八村に適した環境とは言えない。

ロサンゼルス・レイカーズ(なし) ×
 今オフにアンソニー・デイビスを獲得し、レブロン・ジェームズとの強力デュオを完成させた。その交換に多くの選手を放出し、ロースターに空きはあるが、絶対必勝のプレッシャーのかかる西の名門チームはどんなルーキーにも厳しい環境だろう。そもそもデイビス獲得のために指名権を放出したため、当日までにトレードをまとめない限りはレイカーズは今ドラフトでは蚊帳の外になる。

クリーブランド・キャバリアーズ(5、26) ◯
 1年前にレブロン・ジェームズが去り、以降は完全再建体制に入っている。現時点でほぼ全ポジションでタレント不足。入団すればまとまったプレー時間は得られそうではある。全体5位指名の線は薄そうだが、さらに全体10位台の指名権を獲得するトレードのうわさも流れており、指名はありえない話ではない。

フェニックス・サンズ(6、32) △
 プレーオフから9年も遠ざかっているチームは、エースのデビン・ブッカーの相棒にできる即戦力を欲している。全体6位のドラフト指名権では満足できず、ベテラン獲得のために指名権を放出するトレードを画策しているとのうわさも。特にトレードで順位が下がった場合、八村指名の可能性もありそうだ。田臥勇太がプレーしたチームとして知られるが、近年は若手が伸び悩む傾向も見られるだけに、理想的な環境とは言い切れない。

シカゴ・ブルズ(7、38) ◯
 今オフのブルズの目標はガードの充実とフォワードの層拡大。PG補強をトレードに頼るとすれば、スモールフォワード(SF)〜パワーフォワード(PF)のテコ入れ狙いで八村指名も考えられる。ジム・ボイレンヘッドコーチ(HC)はインサイドの得点力を好むのも追い風。マイケル・ジョーダンの古巣で日本での知名度も高いチームだけに、八村がブルズ入りとなればインパクトは大きいはずだ。

アトランタ・ホークス(8、10、17、35、41) ◎
 1〜2巡目に3つずつの指名権を持つホークスは今ドラフトの注目チームのひとつ。トレードをまとめ、指名順が上がる可能性も十分ありそうだ。パスワークに定評ある司令塔トレイ・ヤング、リーダーシップを発揮するヴィンス・カーターを擁し、即座の勝利が期待されるわけではないホークスは、八村にもやりやすいチームではないか。

司令塔のトレイ・ヤング(写真)擁するホークスとの相性は◎ 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

ワシントン・ウィザーズ(9) ◯
 エースのジョン・ウォールが故障離脱中とあって、迷走を続けるチームは浮上までにしばらく時間がかかりそう。再建を覚悟で、ギニアのセク・ドゥンブヤ、スーダンのボル・ボルといったポテンシャルの高い外国人選手に目を向けているという見方もある。大都市球団ながら、長期視野で育ててもらえそうな状況は悪くない。

ウィザーズのエースは2010年全体1位のジョン・ウォール(写真)。しかし、故障のためチームを離脱中となっている 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

ダラス・マーベリックス(37) ◯
 過去にサマーリーグ、ゲータレード(G)リーグで日本人選手を受け入れた経験があり、数多くの外国人選手が属してきたマブスは八村にとっても居心地の良いチームになるはずだ。ただ、今年度は1巡目指名権を持っておらず、獲得はまず考えられない。

ミネソタ・ティンバーウルブズ(11、43) ◯
 カール・アンソニー・タウンズ、アンドリュー・ウィギンスという若手スターを擁しながら、タフネスに欠けるチームにフィジカルの強さが売りの八村はフィットしそう。有力媒体のモックドラフトでも全体11位で八村の名が挙げられることが多く、“すでに指名確約”とのうわさすらあった。八村が順調に育てば、タウンズとのフロントコートデュオは魅力的だ。もっとも、「ウルブズは育成が上手ではない」という一部の声は気になるところではある。

シャーロット・ホーネッツ(12、36、52) ◎
 PFの選手層に不安があるチームにフィットする。これまでのホーネッツはカレッジ時代に目立った成功を収めた選手(ケンバ・ウォーカー、フランク・カミンスキー、マイルス・ブリッジス、マリク・モンク、コディ・ゼラーなど)を好んで獲得してきた実績もあり、この位置まで残っていれば声がかかる可能性はかなりありそうだ。

マイアミ・ヒート(13、44) ◎
 評判の良いパット・ライリー球団社長、エリック・スポールストラHCに率いられ、選手育成のうまさに定評がある。ゴンザガ大の先輩ケリー・オリニクも属していることもプラス材料。ウルブズ、ホーネッツなどと同様、八村指名の可能性が語られることが多いチームでもある。ただ、全体にローテーションの層は厚いため、プレー時間は限られるかもしれない。

ヒートにはゴンザガ大の先輩ケリー・オリニク(中央)が所属。八村にとってプラスに働くだろう 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

ボストン・セルティックス(14、20、22、51) ◯
 カイリー・アービング、アル・ホーフォード、テリー・ロジアーといった主力選手の移籍が予想され、来季の方向性は予測しづらい。ただ、熱狂的なボストニアンに八村のハッスルプレーは支持されそう。若くして名将と称されるようになったブラッド・スティーブンスHCの存在もあり、良好な環境なのは確かだろう。

サクラメント・キングス(40、47、60) ◯
 近年は低迷チームの代名詞のようになっていたが、昨季は久々にプレーオフ争いに食い込む頑張りを見せた。最終的にカンファレンス9位に終わったものの、バディ・ヒールド、デアーロン・フォックスを始めとする若手タレント中心のロースターは八村にとっても魅力的。もっとも、今年度のキングスは1巡目指名権を持っておらず、八村との絡みはまずありえない。

デトロイト・ピストンズ(15、45) ◯
 サイズに恵まれたウィングを欲しているチームへのフィットは良好。SF、PFの両方をこなせる八村が力を発揮し、ブレイク・グリフィン、アンドレ・ドラモンドといった身体能力に秀でたフロントコートとうまくかみ合えば、ピストンズはより魅力的なチームになるかもしれない。

オーランド・マジック(16、46) ◯
 マジックのジョン・ハモンドゼネラルマネージャー(GM)は、ミルウォーキー・バックスのエグゼクティブ時代にヤニス・アデトクンボを全体15位指名して大成功した実績がある。今ドラフトでも同じく将来性豊かな外国人選手(=八村)を中位で指名し、歴史は繰り返すか。近年はリーグ内でやや存在感が薄くなったマジックだが、今季は7年ぶりにプレーオフ進出と上り調子なのもプラス要素だ。

ブルックリン・ネッツ(27、31) ◎
 評判の良いケニー・アトキンソンHC、ショーン・マークスGMに率いられ、今季に躍進を遂げたネッツは八村がフィットするチームに思えた。同じニューヨークでもニックスほどの喧騒(けんそう)はなく、PFに補強が必要なことを考えれば、1巡目中位まで残っていれば指名の可能性はあったはずだ。ただ、ネッツは6月上旬のトレードで全体17位指名権をホークスに放出。八村指名の可能性はかなり低くなった。

インディアナ・ペイサーズ(18、50) ◯ 
 今オフに多くのローテーション選手がFAになるが、ゴンザガ大の先輩ドマンタス・サボニスが残っているのは心強い。大都市ではないながら、カレッジを中心にスポーツが盛んなインディアナの土地柄にも心地良さを覚えるのではないか。ドラフトロッタリー終了直後、ESPN.comがモックドラフトで“ペイサーズが全体18位で八村を指名する”と予想したことでも話題になった。

サンアントニオ・スパーズ(19、29、49) ◎
 今季まで実に22年連続でプレーオフに進出し、“NBAのゴールドスタンダード”と呼ばれるようになった。フォワードの層は厚いとは言えないが、それでも八村がスパーズに入った場合には、当初はプレー時間少なめでじっくり育てられそう。グレッグ・ポポビッチHC以下の首脳陣の評価の高さを考えても、長い目での成長に主眼におけばベストに近い環境かもしれない。

1996年からスパーズを率いるグレッグ・ポポビッチHC。チームを5度の優勝に導くなど、その手腕は確かなものがある 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

ロサンゼルス・クリッパーズ(48、56) ◯
 Bリーグ初の日本人1億円プレーヤー、富樫勇樹は“八村はクリッパーズがフィットするのではないか”と話していた。大都市ロサンゼルスが拠点でもレイカーズよりも注目度は低く、快適にプレーできる環境。選手からの人望厚いドック・リバースHCも心強い存在になるだろう。もっとも、今ドラフトでは1巡目指名権を持っておらず、八村獲得は現実的な話ではない。

オクラホマシティ・サンダー(21) △
 昨季3P成功率で22位(34.8%)だったサンダーにとって、今オフはシューターの確保が急務。カレッジ3年生時は3P成功率41.7%と高かった八村だが、いわゆるピュアシューターとは考えられおらず、最高のフィットとは言い難い。とはいえ、その潜在能力を考えれば、八村が全体21位まで残っていれば迷わず指名するかもしれないが。

ユタ・ジャズ(53) △
 19日にマイク・コンリー・ジュニアを獲得し、来季に上位進出が狙える布陣を整えた。引き換えに1巡目指名権を放出したため、八村獲得の可能性はほぼなくなった。もっとも、献身的姿勢とハードワークを重宝するチームカルチャーは八村には合いそうではある。ジャズの伝説ジョン・ストックトンもゴンザガ大出身という縁もあり、入団となれば地元では歓待されていたはずだ。

フィラデルフィア・76ers(24、33、34、42、54) △
 ジミー・バトラー、トバイアス・ハリスがFAになり、来季のロースターを予想するのは容易ではない。ただ、血気盛んなフィラデルフィアのファンに八村のプレースタイルと闘志は好まれそう。ジョエル・エンビード、ベン・シモンズという2人のスーパースター候補とのプレーを想像するのも楽しい。

ポートランド・トレイルブレイザーズ(25) ◯
“全米で住みたい街No.1”とまで呼ばれるポートランドに本拠を置き、熱狂的なファンベースを誇るチーム。ウィング補強を望んでいること、選手育成に定評があることなど、さまざまな意味で非常に良好な環境であることは間違いない。

ヒューストン・ロケッツ(なし) △
 クリス・ポール、ジェームズ・ハーデンというコアがしっかりとしたチームだが、センターのクリント・カペラは放出のうわさがあり、フォワードの控えにも需要はある。今ドラフトでは指名権を持っていないが、トレードで1巡指名権獲得のうわさも。10月にジャパンゲームで来日が決まっていることも八村指名の追い風になる?

デンバー・ナゲッツ(なし) △
 1〜2巡目を通じてひとつも指名権を持たないが、トレードで指名権を得ることは考えられる。すでに十分に層が厚く、すぐに優勝を狙いたいチームへの八村のフィットは疑問。ただ、チームが万能派のポール・ミルサップとの来季のオプションを行使しなかった場合、フォワードに空きはできる。

ゴールデンステイト・ウォリアーズ(28、58) ◯
 5年連続ファイナルに進んだ元王者も、ケビン・デュラント、クレイ・トンプソンの故障でウィングの層は薄くなった。来季は必勝のプレッシャーはやや薄くなるのは八村にはむしろ好材料で、ステフィン・カリーのような優れたリーダーがいるのも魅力。楽天と提携契約を結んでいるのも八村には心強いかもしれない。全体28位まで指名順が下がることは考えにくいが、もしかしたら……?

トロント・ラプターズ(59) ◯
 チーム史上初のファイナル制覇を果たしたばかりの新王者に入れば、プレー時間は限られると見るのが自然ではある。もっとも、今季限りでFAになるカワイ・レナードが移籍を選べば、チームの状況は一気に変わるのも事実。2巡指名権しか持っていないことを考えればいずれにしても入団は現実的ではないが、外国人選手が多く、サポート体制が整ったラプターズは日本人ルーキーには悪い環境ではない。

ミルウォーキー・バックス(30) △
 プレースタイル、ルックス的にもやや被るところのあるヤニス・アデトクンボと八村のデュオが実現すれば、長い目でチームの売り物のひとつになるのではないか。もっとも、各ポジションにタレントがちりばめられ、来季も優勝候補に挙げられそうなバックスではプレー時間確保は相当難しそうだ。
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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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