2冠達成も大混乱に陥ったバイエルン 自滅を招きかけた「選手>監督」という歪

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国内2冠と「結果」を残したコバチ監督(中央)。「内容」に目を向けると…… 【写真:ロイター/アフロ】

 今季のブンデスリーガの優勝争いが最終節までもつれた最大の原因は、6連覇だった王者バイエルン・ミュンヘンのつまずきだった。そして、その低迷をもたらしたのは他でもない彼ら自身。指揮官ニコ・コバチを窮地へ追い込んだのは、強い発言力を持つ重鎮選手たちとの食い違いだった。

2冠という「結果」を残すも、「内容」は厳しい

【画像提供:フットボリスタ】

 国内の「結果」だけを見たら成功と言えるシーズンだった。コバチ新監督の下でブンデスリーガ7連覇を達成し、DFBポカールでも優勝。つまり2冠だ。コバチは昨季フランクフルトを率いてDFBポカールを制しており、異なるクラブでDFBポカールを連覇した史上初の監督になった。

 しかし「内容」に目を向けると印象は真逆になる。特に悪かったのはシーズン前半戦。3試合連続で勝てない危機が2度も訪れた。1度目は第5節アウグスブルク戦(1−1)、第6節ヘルタ・ベルリン戦(0−2)、第7節ボルシアMG戦(0−3)。順位は6位に急降下。2度目は第10節フライブルク戦(1−1)、第11節ドルトムント戦(2−3)、第12節フォルトゥナ・デュッセルドルフ戦(3−3)。首位ドルトムントとの勝ち点差は9に広がった。

 さらに、国外ではCL決勝トーナメント1回戦でリパブールに敗れ、8季ぶりにベスト8へ進むことができなかった。コバチ続投が濃厚だが、首の皮一枚でつながっている状況だ。なぜ大混乱のシーズンになってしまったのだろう?

監督「守備」、選手「攻撃」というズレ

「守備」の改善を求める指揮官と「攻撃」を求める選手の間に齟齬が生まれた 【写真:ロイター/アフロ】

 つまずくきっかけになったのは、第5節アウグスブルク戦だ。バイエルンは後半開始早々に先制しながら、87分に追いつかれてしまった。コバチはロベルト・レバンドフスキとアダビド・アラバを温存し、FWにザンドロ・バーグナー(現・天津泰達)、左サイドバック(SB)に本来はMFのレオン・ゴレツカを起用。このローテーションが完全に裏目に出たのだ。

 格下相手の引き分けが、監督と選手の齟齬(そご)を表面化してしまう。コバチは「バイエルンの攻撃は(ルイ・)ファン・ハールや(ユップ・)ハインケスの時代から機能してきた。大きく変える必要はない」と考え、守備に課題があると見ていた。アウグスブルク戦でリードした後も、マッツ・フンメルスがリスクの高い縦パスを狙っていたことを問題視し、この2014年ワールドカップ(W杯)優勝メンバーに改善を求めた。

 一方、選手たちの考えは違った。ヘルタ相手にノーゴールで負けると、ヨシュア・キミッヒは「ゴール前の攻撃が良くない。ラストパスが通っていない」と指摘し、トーマス・ミュラーは「得点力に問題がある」と嘆いた。

 齟齬は試合中にも見られた。ボルシアMG戦の終盤、3点のビハインドを背負っていたため、センターバックのニクラス・ジューレが前線へ上がろうとした。それを見たコバチは後方に戻るように伝えたが、ジューレはキミッヒと話し合った上で前線に。つまり、監督の指示を無視したのだ。

 勝てない原因は守備か? それとも攻撃か? 監督と選手で大きく意見が食い違った。

 第8節から2連勝したものの、第10節から再び3試合勝ちなし。デュッセルドルフに2点リードから追いつかれて引き分けた後、コバチへの批判は頂点に達した。

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