“レジェンド”青木功が指南 日本ゴルフツアー選手権の観戦法とは?

碧山緒里摩

ゴルフ界のレジェンド・青木功に、日本ゴルフツアー選手権について話を聞いた 【撮影:源賀津己】

 今季最初の国内男子メジャー大会「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップShishido Hills 2019」が、茨城県の宍戸ヒルズカントリークラブ西コース(以下、宍戸ヒルズ)にて、6月6日より熱戦の火ぶたを切る。

 4日間72ホールにわたる熱戦の勝負のポイントはどこか。ビギナーにおすすめのトーナメント観戦法はあるのか、ツアーには珍しく20周年の記念大会にスペシャルチケットを用意した意図は何か。さらに、プロフェッショナルたるゴルファーに求められる姿勢とは。

 大会を主催する日本ゴルフツアー機構の会長にして、ゴルフ界のレジェンドである青木功にメジャートーナメントの見どころやツアーを楽しむ観戦法を聞いた。(取材日:2019年5月7日)

プレッシャーがかかるから怖いし、面白い

――国内男子ツアー開幕2戦はともに、今季の激しい賞金王争いを予感させる大接戦となりました。

「東建ホームメイトカップ」も「中日クラウンズ」も最後の最後まで誰が勝つかわからないという、ゴルフの醍醐味を見せるトーナメントとなったね。「中日クラウンズ」は宮本勝昌が勝ったけど、17番で(10メートル超のバーディパットを決めて)貞方章男が「勝てるかもしれない」という欲が出てきた。

 ただこれまで宮本は11勝していて、貞方は勝っていない。その勝っていないという経験不足が18番のアプローチのミスにつながりました。それまで貞方は淡々とアプローチしていたのが、「パーを取らないといけない」と思ったら、予期せぬミスショットになってしまった。最後の最後でゴルフの怖さが出ましたね。

――「東建ホームメイトカップ」は44歳のブレンダン・ジョーンズ選手、「中日クラウンズ」は46歳の宮本選手が勝って、次は若手の奮起が期待されています。

 若手の技術は年々上がってきています。みんなと溶け込みながら、精神面で「自分は違う」という、あえて孤立させた考え方が出てくると、若手も変わってくるじゃないかな。

 ゴルフってね、ショットひとつ打つにしたって、構えてから2、3秒、それを72ホール回るじゃない。どれだけの時間よ。4日間で10何時間ラウンドを回っている中で、たった2、3分ですよ。ゴルフは何を考えさせられるか分からないというゲームですから。そうやって考えれば考えるほど自分にプレッシャーがかかってしまうから怖いし、面白い。

 ゴルフというスポーツは人間性というのかな、その人間そのものが見られるのですよ。

宍戸ヒルズには魔物が棲んでいる

昨年大会優勝の市原弘大(写真中央)。今年はどんなドラマが待っているだろうか 【写真は共同】

――テレビでしかツアーを見ていないビギナーのファンは、トーナメント観戦をどのように楽しめばいいでしょうか。

 今で言うところのイケメンだな。ゴルフの世界にはイケメンが多いんだよ(笑)。彼らがコースでどういうしぐさをするのか、どういうゴルフをするのか。選手とともに一喜一憂するのも面白いんじゃないかな。お客さんも一緒に戦うんだよね。選手にとってコースは舞台ですから。

 お気に入りの選手がいなかったら、初日、2日目と順番にいろんな選手を見てもらって、その中で気になる選手を見つけていけばいいんじゃないかな。

――プロが放つドライバーショットの音に単純にびっくりする方も多いですよね。

「嘘、あんな音しないよ」って初めて見た人は言うんだよ(笑)。「あんな音がして、あそこまで飛ぶんだ」とプロに対して憧れを持つのもいいんじゃないかな。「170ヤードを9番アイアンで飛ばすの?」という驚きを与えるのがプロですから。

――「日本ゴルフツアー選手権」のここに注目すれば、ビギナーでも楽しめるという点はありますか。

 やっぱり15番ロング、16番ショート、17、18番ミドル。最後の4つのホールでドラマが本当に起こります。15番でバーディーを取らなければいけない。取れない時に16、17番を攻めてハマってしまう選手もいれば、ずっと何とかパーでしのいでいたら逆転で勝っちゃう選手もいる。

 最後の4ホールは人生がかかっていると思わないといけない。ひとりのプロゴルファーの人生がかかっています。どれだけメンタルが強いのか、自分がやろうとしていることをどれだけできるか、あそこで試される。

 面白いことに「日本ゴルフツアー選手権」は初優勝が多いんですよ。勝ったことある人は宍戸ヒルズに魔物が棲んでいることを知っているから、「あそこは……」って思い出すんじゃないかな。勝ったことない選手は、怖さがないから行っちゃうわな。その辺の強気なゴルフがすごくハマるか、すごく行っちゃうか。宍戸ヒルズでは平均したスコアをあまり見たことないんだよね。

――宍戸ヒルズは最後の最後にドラマが待っているんですね。

 そう。ひとつ例えてみよっか。マスターズのオーガスタナショナルGCがあるじゃない。15番ロング、16番ショート、17番ミドル、18番ミドルでしょ。

 宍戸ヒルズは16番の左手前に池、17番は右左狭くて、18番は広いけど右の山に行くような設定にしています。これで15番のグリーンに手前に池があれば、まるっきりオーガスタと一緒。それはドラマも起きますよ。

 選手たちは最後の4ホールで壮絶に心理戦を戦いますから。まあ、ギャラリーは勝った選手には祝福の拍手を、敗れた選手にも次への期待をこめた拍手をしてもらえれば。

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