岡崎がミラクルレスターで見いだした役割 必然だったプレミア優勝、そして葛藤へ
主力としてつかんだリーグ優勝
優勝セレモニーでカップを掲げる岡崎(中央)。「ミラクル・レスター」の主力としてリーグ制覇に貢献した 【写真:ロイター/アフロ】
「奇跡のリーグ優勝」からさかのぼること約9カ月のシーズン開幕前。前年度はリーグ下位の14位で辛うじて降格を免れていたレスターは、シーズンの目標を「プレミア残留」に設定していた。英ブックメーカーが、彼らの「優勝オッズ」を5001倍に設定していたのは、あまりにも有名な話だ。これは「ネス湖にネッシーが存在した/501倍」「エルビス・プレスリーが、実はまだ生きていた/2001倍」よりも高いオッズで、要するに「実現不可能」と思われていた。
ところが、シーズンが開幕すると、レスターは予想を上回るペースで勝利を重ねた。
シーズン前半戦は、2点リードされてから同点に追いついたり、試合終了間際に決勝弾を挙げたりと、取材しているこちらも興奮せずにはいられない劇的なゲームが多かった。そして、気がつけば、3−0で完勝した13節ニューカッスル戦(11月21日、現地時間)で初めてリーグ首位に浮上──。その後も快進撃を続け、1月23日の23節のストーク戦から1度もトップの座を明け渡すことなく、そのままプレミアリーグの頂点に立った。「ミラクル・レスター」が誕生した瞬間だった。
そんな歓喜に沸くレスターの輪の中に、日本人の岡崎慎司がいた。
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なによりマンチェスターUとレスターでは、クラブ規模がまるで違う。世界有数のメガクラブであるマンチェスターUに比べ、レスターの経営規模は当時4分の1。選手の年俸総額も、プレミア20クラブで下から数えた方が早い17位だった。金がモノを言う現代サッカー界において、レスターの放ったインパクトは、まさに特大だった。
「やるべきことをやれる選手たちの集まり」
8部から這い上がったバーディー(下)ら苦労人が多かったチームは、「雑草軍団」と呼ばれ親しまれた 【写真:アフロ】
優勝を決めた直後、加入1年目の岡崎は、チームメートについて次のように語っていた。
「まず、前のシーズンに『奇跡の残留』をしていて、『次のシーズンはないかも』と思っていた選手ばかりだった。レスターにいるのは、あまり日の目を見なかった選手や、(世間にあまり)見られていない選手たち。僕自身も『足下をみて、今すべきことをやれるタイプの人間』ですが、レスターは『やるべきことをやれる選手たちの集まり』だった。文句を言うやつもいない。それをブレずに1年間続けてきた。
だから、チームの雰囲気がいい。ピリピリしていないけれど、練習になると真面目にやる。ドイツのように『練習を徹底的にやって、規律も厳しく』というところがあまりない。でも、みんなやるべきことはちゃんと分かっているし、努力もしている。レスターにいる選手は、いろいろなチームを渡り歩いてきた選手が多い。苦労しているというか、経験を積んでいる選手が多いので。だから、すごく雰囲気はいいですね」
そんなレスターを、人々は親しみを込めて「雑草軍団」と呼んだ。転んでも立ち上がり、そして決して諦めない──。レスターの選手が見せた姿は、清水エスパルスでFWの8番手としてキャリアをスタートさせ、プレミアリーグまでたどり着いた岡崎と重なるところが多かった。