支配下入りから即ブレーク 周東佑京 盗塁成功率100%でホークス首位の原動力に

田尻耕太郎

ソフトバンクの2年目、周東が躍動している 【写真は共同】

 野球の華は本塁打だ。球場の客席でその瞬間に立ち会えることの幸せ。あの大歓声は非日常を僕らに感じさせてくれる。

 しかし、スタジアムがあれ以上の興奮に包まれるシーンがあるのも知っている。

 それは三塁打だ。トップスピードに乗ったまま二塁ベースを蹴った瞬間に、球場の温度がグッと上がる。三塁に到達するまで歓声はどんどん大きくなり、最後はベース上での際どい攻防に視線を集中させる。塁審の両手が大きく横に広がれば、もうまるで勝ったかのようなお祭り騒ぎ。

 本塁打よりもはるかに希少な三塁打。強い打球を放つことのできる俊足選手の特権だ。

「スピードはプロでトップレベル」

 今年のホークスに楽しみな選手が現れた。とにかく速い。二軍時代には平凡なショートゴロと思われた当たりを内野安打にして注目を集めたことがあった。そして課題と言われた打撃でもなかなかどうして健闘を見せてくれている2年目の若鷹がいる。

 今シーズンの開幕直前、育成枠から念願の支配下入りを果たした男。その名も周東佑京である。

 背番号は23。ホークスでは昨年まで城所龍磨氏が15年間背負い、それ以前は盗塁王にも輝いた村松有人・現外野守備走塁コーチの背番号だった。「ホークスでは俊足選手の象徴ですよね。23番は周東だと覚えてもらえるようにアピールしていきたいです」。

 塁に出ればファンの目をくぎ付けにする。5月12日現在、今季25試合の出場で早くも9盗塁をマーク。まだアウトは一度もない成功率10割のランナーだ。「自分の中で余裕があるというか、セーフになるだろというくらいの気持ちで走っています」。幼少期に実家近くの山で野ウサギを追いかけ回していたのが奏功して俊足になったという珍エピソードはともかく、現役時代に2度の盗塁王に輝いた本多雄一内野守備走塁コーチも「スピードはプロでトップレベル」と認める走力の持ち主だ。

今宮との2、3番コンビで相手の脅威に

レフトオーバーの打球で周東はあっという間に三塁へ到達した 【写真は共同】

 一方、当初は弱点と言われた打撃でもファンを沸かせている。4月21日の西武戦(メットライフ)でのプロ初安打は本人も「びっくり」の本塁打で記録してみせた。そして5月5日のオリックス戦(ヤフオクドーム)ではプロ初三塁打を放ち、黄金週間で満員のファンを大いに盛り上げた。この日は初めてのヒーローインタビューでお立ち台にも上がり、真の意味でのプロ野球選手としての第一歩も切った。

「立花(義家)打撃コーチから『当てに行くな。しっかり振れ』と言葉をもらい、それを意識し続けています。あと自分の悪癖で軸の左足が折れ曲がりボールに力を伝えられずにいたので、楽天の銀次さんを参考にした立ち方もしています」

 工藤公康監督も「今のホークスに欠かせない存在」とはっきりと口にした。上位打線に定着もしてきた。1番もいいが、2番打者に周東がいることで相手チームにはより大きな脅威を与えている。好調の今宮健太との「2、3番コンビ」。これが首位を快走するホークスの、これから先も原動力となっていくのではなかろうか。
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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