卓球をもっと知るためのQ&A〜技術・豆知識編〜

月刊『卓球王国』

「チキータ」とは? 何がすごいの?

チキータの進化は卓球界に技術革新をもたらした 【写真:アフロスポーツ】

 台の中で収まるような長さのボールに対し、強い前進回転をかけてバックハンドで返球するのが「チキータ」。ボールが曲がりながら飛ぶため、バナナの有名ブランドから名をとって「チキータ」と呼ばれ、「台上バックドライブ」と呼ぶこともある。古くから使われてきた技術だが、ロンドン五輪金メダルの張継科(中国)らが、従来よりもスピード、威力を備えたチキータに発展させ、卓球界に技術革新を起こした。

 自分のコート上で止まるような短いバウンドのボールに対しては台が邪魔になり、強打することが難しいが、チキータは、そうしたボールにも強打が可能となり、攻撃のチャンスが増える。短く台の上で止まるサービスを出して相手の攻撃を防ぎ、次のボールを攻めていけることから「サービス側が有利」とかつては言われていたが、サービスに対しても積極的に攻撃を仕掛けられるチキータの登場により、この定説は覆りつつある。日本チームでは丹羽孝希(スヴェンソン)、張本智和(木下グループ)が多用する。

「YGサーブ」「しゃがみ込みサーブ」って?

世界女王の丁寧は、勝負どころでしゃがみ込みサーブを用いる 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 卓球における1球目が「サーブ(サービス)」。対人競技の卓球において、唯一、相手に左右されず、自由にボールを打てる技術だ。サーブにも様々な出し方があるが、少し変わった名前の2つのサーブを紹介。

 まずひとつは「YGサーブ」。「YG」とは「ヤング・ジェネレーション」の略で、1990年代に欧州の若手が使用したことからこう呼ばれる。ラケットを自分の体の方に引き込み、そこからラケットを外へ振り出すようにして回転をかける。女子選手では使用者は少ないが、男子では世界ランキング1位の樊振東(中国)らが使用する。

 もうひとつは「しゃがみ込みサーブ」で、こちらは文字どおり、しゃがみながら出すサーブ。しゃがみ込む際の重心移動により、ボールに強い回転をかけることができ、中国女子のエース・丁寧が、このサーブの使い手。

「ロビング」とはどんな技術?

ロビングは“しのぎ”の技術だが、試合の流れを変えることもある 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 台から離れた位置から、相手の攻撃に対してボールを高く上げて返球する守備技術が「ロビング」。ロビングはあくまで自分が攻めることができない場面での「しのぎ」の技術だが、相手のミスを待つだけではなく、コースを変えたり、ボールに回転をかけて相手のミスを誘っていく。

 ロビングにまつわるエピソードではメイス(デンマーク)が有名。2005年の世界選手権で、前年のアテネ五輪銀メダリスト・王皓に対し、ロビングを多用して完勝、劣勢に追い込まれた準々決勝のハオ帥戦でもロビングを駆使し大逆転勝利を収め、中国代表2人を破ってシングルス3位と躍進した。ロビングでの粘りに粘っての得点が、試合の流れを大きく変えることもある。

タイムアウト中、選手と監督はどのような話をしている?

タイムアウトの際は台上に写真のようなタイマーが置かれ、60秒のカウントダウンが始まる 【写真:アフロスポーツ】

 卓球の試合ではゲームとゲームの間に1分間の休憩が入り、ベンチに戻りアドバイスを受けることができる。ゲーム間に加え、どのタイミングであっても1分間の「タイムアウト」を申告することで、ベンチに戻ってアドバイスを受けることが1試合に一度のみ認められている。

 ではベンチでは、プレーする選手と監督、チームメイトはどのような会話をしているのか。主な内容は戦術の確認作業だ。どんなパターンで得点が取れているのか、相手にどのように対処するか、サービスの種類やコースの選択、試合の組み立てなど、プレーする選手の視点とベンチの視点での意見を交わしながら、試合のプランを立てていく。

 平野美宇(日本生命)のように、試合前に戦術や相手の特徴などをまとめたノートをベンチで確認しながら戦術を練る選手もいる。劣勢で試合の流れを変えたい場面や、考えがまとまらない際にタイムアウトを使うケースもある。

ドライブ型、カット型…? 選手のタイプ表す「戦型」とは?

カットマンの徐孝元(写真)は、ときにフォアドライブを交えるなど、攻撃なスタイルをあわせ持つ 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 卓球にはプレースタイル(戦型)がある。現在、世界で最も多いプレースタイルが「ドライブ型」。その名のとおり、ボールに前進回転をかける「ドライブ」打法を軸に戦うスタイルで、張本智和(木下グループ)、石川佳純(全農)らもこのスタイルだ。

 次に守備的なスタイルの「カット型」。台から離れた位置で、ラケットを上から下へ振り下ろす「カット」で相手の攻撃を返球し、回転の変化で相手のミスを誘う。カットマンとはいえ、現代では、カットに攻撃を混ぜるスタイルが増えている。

 他にも、性質の異なる2枚のラバーを貼って球質、回転に変化をつけて攻守を展開する「異質攻守型」、台に近い位置でプレーし、早いテンポでの連続攻撃で勝負する「速攻型」と呼ばれる選手も存在する。プレースタイル、戦型とひとくくりに言っても得意な技術はさまざまで、選手ごとにさらに細かく特徴がある。

「チョレイ」でも控えめ? 賞金没収となった歓喜のパフォーマンスとは?

11年の世界選手権での張継科。これはやりすぎだが、各選手のパフォーマンスにも注目だ 【写真:ロイター/アフロ】

 張本の「ハリバウアー」&「チョレイ」など、注目を集める日本選手の得点パフォーマンス。得点した際に声を出すのは万国共通だが、海外選手も優勝を決めた際には台に上る、ベンチから勝利した選手に駆け寄るなど、さまざまな歓喜の表現を見せてきた(お国柄や価値観もあり賛否両論分かれるところだが)。

 そんな中、驚愕(きょうがく)の優勝パフォーマンスを見せてきたのが張継科(中国)。11年の世界選手権では初優勝を決め、着ていたウェアを引き裂き、12年ロンドン五輪優勝時にはフェンスを飛び越えダッシュし、表彰台にキスするなど見る者をあぜんとさせてきた。14年に男子ワールドカップで優勝した際は、コートを囲むフェンスをキックで破壊し、優勝賞金没収。さすがに張継科はやり過ぎだが、選手の得点パフォーマンスにも注目してみよう。
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