クラブ経営はJリーグに学べ! Bリーグがライセンス制度を徹底する理由
プロクラブが自立するために――
大河チェアマンは自身のキャリアを生かし、ビジネス面の負の遺産を立て直そうとしている 【スポーツナビ】
彼はこう述べる。
「Jリーグについていえば資金繰り破綻が起きそうだとか、今シーズンは資金が足りなさそうというクラブは、55クラブあってほぼないと思います。その心配がなくなったのは、みんなが約束を守って、財務のところで一旦水面の上に出たからです。出たら何が起きるかというと、各クラブは『予算と実績はちゃんと把握しなきゃいけないんだ』という当たり前のことに気づくんですね。それはものすごくJリーグにとってプラスになったと思います。Bリーグは今まさにその真っただ中です」
導入当初はさまざまな懸念も叫ばれたJリーグのライセンス制度だが、今になれば成功事例と言い得る。一方のBリーグを見るとB2には資本が脆弱(ぜいじゃく)で、稼ぐ力の弱いクラブも残っている。大河はJリーグと対比して、Bリーグの現状をこう説明する。
「Jリーグはどこも(制度導入後の)大体3年目で(債務超過状態が)キレイになりました。僕らは18年6月に『B1が債務超過ではダメ』といった。20年6月にB2がダメと言っている。18年6月は(債務超過だった)北海道も含めて全クラブがクリアをしました。B2が20年6月に全部クリアできるかどうかがわれわれの向き合いで、当時のJ2のクラブと向き合っているのと似た感じです」
クラブの債務超過には、さまざまな副作用がある。彼はこのような実態も指摘する。
「大体債務超過と同額くらいの借り入れが起きています。多くは連帯保証人として社長が保証人になっている。だから債務超過でいる限りは、その社長を引き継ぐ人が出てきません」
債務超過のクラブが資本を厚くする手法は何種類もある。貸し手が債務免除を行う、スポンサー料か出資を細かく積み立てて埋める、新オーナーが債務超過額で会社を引き受けるといった方法だ。しかし多額の債務超過が残っていたら、経営体制の刷新すら難しい。経営者が「辞めたくても辞めさせてもらえない」状況になるからだ。
もちろん資産超過に転換したとしても、すぐに経営状態が悪化したら意味はない。大河はこう強調する。
「一旦水面下から出る(債務超過から脱却する)ことは大事ですが、そこから先も二度と債務超過に陥らないような、モニタリング機能をしっかり持っておくことが大事です」
生まれつつあるB2クラブ間の格差
茨城は4月6日の群馬戦で5000人を超えるファン・ブースターが駆けつけ、アリーナは熱気に包まれた 【(C)B.LEAGUE】
大河はこう述べる。
「B1ライセンスを取った山形ワイヴァンズ、茨城ロボッツ、広島ドラゴンフライズ、熊本ヴォルターズと、B2ライセンスだけれどアースフレンズ東京Zは、Bリーグ開幕前と今で比べて売り上げが2倍〜3倍の規模に成長しています。茨城も旧リーグ時代は数千万円の売り上げだったのが、今期は5億円弱にいく」
一方で伸び悩んでいるクラブもあり、B2の中にも格差が生じつつある。大河は強い問題意識、危機感を口にする。
「B2にはほとんど成長していないクラブもある。この違いが何なのか、僕らも重く受け止めて考えないといけない。信州や群馬は2億円前後で張り付いている」
いずれにせよ各クラブが債務超過を脱し、予算と実績が管理された状態となることは、Bリーグが飛躍する大前提だ。来春に発表される2020−21シーズンのライセンスからは、いよいよB2も債務超過が認められなくなる。これはかなりシビアなハードルだ。
Bリーグが今行っているクラブ経営へのテコ入れは、いわば守備の整備だ。これを20年6月期までに終え、そこからは本格的な攻めに出る――。それがBリーグのプランだ。大河はこう強調する。
「本来はBリーグ自体がもっと大きくなる方向に使いたい。ヒト・モノ・カネが(福岡や金沢などの問題に)行ってしまっているのは間違いなくて、それにあと1年くらいでケリをつけたいという考えです」
バスケットボール男子日本代表は2019年のワールドカップ中国大会に向けた予選を突破した。男女の5人制、3×3の東京五輪出場も国際バスケットボール連盟に認められた。日本バスケの競技力向上は明らかだ。また「観戦」「おもてなし」を目的にした本格的なアリーナの整備が、Bリーグ発足を契機に全国で計画され、具現化しつつある。Bリーグが今行っているのは、そんな追い風を受けた飛躍に向かう足元の地固めだ。