改善、信頼で強豪に迫ったサンウルブズ
「チームを誇りに思えるパフォーマンス」

スクラムで奮闘「100点やったと思います」

PR山下はスクラムについて「サンウルブズがやりたかったことができた」と手応えを語った
PR山下はスクラムについて「サンウルブズがやりたかったことができた」と手応えを語った【斉藤健仁】

 先制トライの直後、すぐにキックを相手に渡してしまう痛恨のミスでトライを取られたが、7対7で迎えた14分、ビッグプレーが生まれる。サンウルブズが反則すると、ワラタスはゴール前でスクラムを選択。だた、「アウォーン」というファンの声援に応えるかのように、サンウルブズのFW陣は相手を押してペナルティーを得て、一気にピンチを脱した。


 20分にはアーリープッシュの反則を取られたが、21分には再び、スクラムを押し込み反則を誘った。後半こそ相手に修正されたが、前半はスクラムでペースをつかんだ。開幕戦で後半から出場しスクラムを安定させたPR山下裕史はこの試合は3番をつけた。


 今年からサンウルブズのスクラムコーチはニュージーランド出身のマーティ・ビールが就いた。山下は、昨年は長谷川慎コーチの薫陶を受けていた共同主将のクレイグ・ミラーやHOジャバ・ブレグバゼ、そして日本代表で一緒に組んでいたHO坂手淳史と、ビールコーチの指導をベースに話し合いながら作り上げていったという。8人で低く一体となって組みつつ、相手の重みを受けるのではなく、しっかりと相手に重さをかけていった。後ろの5人の押す意識も高かった。


「(スクラム時の)バインドで乗らせなかった。サンウルブズがやりたかったことができた。相手が動く前にこっちが動いて先を取れた。ワラタスの重みを受けずに(先に)かけられたのが良かった。100点やったと思います。彼(ビールコーチ)を褒めておいてください」とこの週のベスト15にも輝いた山下はトレードマークの大きな笑顔を見せた。

鮮やかだったサンウルブズの攻撃

前半37分に中村のパスを受けてトライを決めたLOトム・ロウ
前半37分に中村のパスを受けてトライを決めたLOトム・ロウ【斉藤健仁】

 控えも入れれば豪州代表を13人擁した相手に前半2トライ、後半2トライを重ねられてしまったが、もう一つ、接戦に持ち込めた要因は、やはりアタッキングチームのサンウルブズらしく、しっかりとトライを重ねたことだ。


 前半37分のLOトム・ロウのトライは、相手のペナルティーからSH茂野海人が仕掛けて、WTBファンデンヒーファーが右サイドを突破。そのとき、しっかり左サイドにシェイプ(アタックの陣形)ができていた。そして「イメージ通りだった」というCTB中村からロウにオフロードパスが通ってトライとなった。


 またLOトンプソン ルークがシンビン(10分間の一時退場)で数的不利の中で迎えた後半29分のトライも見事だった。スクラムをあえて7人で組んでBKのサインプレーで勝負した。このサインプレーは2015年ワールドカップでFB五郎丸歩が挙げたトライとほぼ同じだった。


 SOの位置にCTB中村が入り、途中出場のCTBマイケル・リトルがデコイ(おとり)で走り、CTBの位置にいたSOヘイデン・パーカーが中村からのパスを受け取ると、ブラインドサイドから走り込んだWTBファンデンヒーファーにパスし、ファンデンヒーファーがそのままインゴールを陥れて30対31と1点差に迫った。トライの瞬間ファンは立ち上がり、スタジアムのボルテージは一気に上がった。ファンデンヒーファーは山下とともに、第2節のベスト15にも選出された。

キックを使ったアタックなど改善すべき点も

試合終了後、悔しさを隠せなかったCTBリトル(中央)
試合終了後、悔しさを隠せなかったCTBリトル(中央)【斉藤健仁】

 しかし、冒頭の通り、DGは外れて勝てなかった。相手のプレッシャーもあり、決められなかったSOパーカーは「(ラインアウトの前からDGの)コールを出していた。これがスポーツだし、次は外さないように練習したい」と前を向いた。CTBリトルは「すべてを出し切った。ボールのバウンドなどアンラッキーなところもあった。すごくがっかりしたが、いい準備をしたし、チームを誇りに思えるパフォーマンスだった。ここから作り上げてどんどんうまくなりたい」と先を見据えた。


 DGが外れたことや、この試合の笛を吹いたレフリーがスーパーラグビー初だったことよりも、前半にCTBビール、FBフォラウにソフトなトライを許したことが結果的には痛かった。PR山下が「接戦は記録に残らない。1点差で負けようが50点差で負けようが一緒。悔しい思いはありますが、勝つか負けるかは大きな違いです」と振り返ったように、負けは負けだ。


 ホームのファンの前でアタッキングマインドを持って戦えたことや昨年よりも大事なシーンでハンドリングエラーが減っているのは、参入4年目の積み重ねだ。

 ただ個人的に開幕2試合で気になったのが、まだまだキックを使ったアタックスキルの精度が低かったことだ。ハンセンHC代行は「いろいろ集中しすぎると何もできなくなるので、一番早く改善するところから、毎週やっていきたい」と言っていたが、そこまで手が回っていなかったことも事実だ。3月中旬にはトニー・ブラウンHCも戻ってくる予定だ。彼の手腕にも期待したい。


 ハンセンHC代行が「アタックもディフェンスもゲームプラン通りにできた。一番大事にしているのは一貫性」と言う通り、惜敗したワラタス戦をベースに、いいところはより伸ばし、課題をひとつずつ修正していくことが必須。ただ過去3年でサンウルブズは6勝しているが、30点以上失点して勝った試合は1試合のみ。まずは失点を30点未満に抑えて毎試合、勝つ流れに持っていくこを続けていけば白星は自然と増えていくはずだ。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

スポナビDo

イベント・大会一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント