大坂なおみ、優勝の鍵は左利きサーブ攻略 全豪OP決勝を浅越しのぶ氏が展望

構成:スポーツナビ

気になるセカンドサービスの調子

セカンドサービスも勝利への重要なポイントとなりそうだ 【写真:アフロ】

――逆に大坂選手が気をつけるべきことは?

 クビトバ選手のサービスはワイドがいいという話をしましたが、フォアサイド側(右側)になった時はボディーサーブが大坂選手には有効的だと思います。また、大坂選手はスピードのあるボールが得意なので、クビトバ選手もスピードボールで攻めるというよりは、長いボールやアングルショット(相手を外に出すようなショット)を使ってくるのではないかと思います。それから、大坂選手はネット際の処理にまだ少し穴があるかなと思うので、短いボールもたまに入れてくるかもしれません。

――大坂選手はどう対応したらよいでしょうか?

 私が思うに、3回戦のシュウェイ選手や、4回戦で対戦したアナスタシヤ・セバストワ選手(ラトビア)はそういったショットを持った選手だったと思います。彼女は動物的な感覚を持っていて、考えるというよりも来たボールに対してパッと瞬時に動くタイプだと感じています。トリッキーな選手と2度対戦して、実際対応できていますので、そうした経験もふまえてクビトバ選手にも対応できるのではないでしょうか。

 気になるのは、準決勝のプリスコバ選手との試合でセカンドサービスがあまりよくなかったことです。クビトバ選手は背の高い選手なので、中途半端に入れると打ち込まれてしまいます。セカンドサービスの入れる位置や回転量、スピードなども重要になってきますので、自分のサービスゲームを取るのであれば、この辺もしっかり抑えておかないといけないと思います。

初対戦だからこそ読めない勝負の行方

――二人は初対戦になります。決勝の試合展開をどう展望されますか?

 初対決でどういう打ち合いになるかは本人たちも分からないでしょうから、最初は探り合いになると思います。二人とも疲れはピークに達しているので、疲労から集中力が切れる場面がくると思います。そうなると、1セット目でリードして先取したら、そのままいってしまうのではないかと思います。でも、それがどちらの選手になるかは何とも言えないですね。

 打ち合いを見たら「この選手はこのボール、嫌がっているな」というのは分かるのですが、二人は練習すら1度もしたことがないそうなんです。これだけツアーを回っていて、グランドスラムも出ている二人なので、対戦成績もないというのはすごくビックリですよね。ですから、お互いにまずはやるべきことをやるという形になるのではないでしょうか。大坂選手に関しては、攻撃的に、積極的にいくこと。クビトバ選手のワイドサーブで外に出されても、フットワークでしっかり返せるのではないかと思います。初対戦ということで「どうなるんだろう」と。本当に楽しみです。

――観戦する側にとっては、初対戦だからこその楽しみも大きいですね。

 大坂選手はすごく角度のあるボールを持っています。クビトバ選手も角度のあるボールを出してきますが、それ以上の角度があると、クビトバ選手も取れないのではと思います。それに、フットワークでは大坂選手のほうが上です。一方クビトバ選手はショットの選択やコースの配球はしっかりしてくると思うので、大坂選手はしっかり足を使ってストロークをしていくという展開になると思います。大坂選手としては角度のあるボールで来て、さらに角度のあるボールというカウンターのような形を取れるのではないかと感じています。

――現時点で、大坂選手は世界ランキング2位以内に浮上することが確定しています。優勝すれば世界1位です。今後の大坂選手に期待することはありますか?

 本人は今のテニスに満足するわけではなく、また「ナンバーワンがゴールではない」といった話をしていますので、これからどんどんグランドスラムに出て行って、どのような結果を残していけるか、自分のテニスができるかというところだと思います。今は苦手にしていたドロップショットやスライスを練習している段階です。他の女子選手は今の大坂選手に全然ついていけていないので、私個人は今のテニスをキープしていればいいのではと思うところもあります。しかし、本人はそうではなく、どんどん磨いて、いろいろなショットを覚えてやっていきたいと、前向きで向上心が高い。チャンピオンになったからといっておごることなく、さらに上を目指したいという姿勢は尊敬できるところです。

 テニスはツアーが大変なので、急に「もうやらない!」という人もいますが、そうなってもらいたくはありません。大坂選手にはできるだけツアーを楽しんでもらいたいなと思います。

プロフィール

浅越しのぶ(あさごえ・しのぶ)
1976年兵庫県生まれ。小学校4年生から軟式テニスを始め、園田学園中学校への入学をきっかけに硬式テニスを始めた。97年にプロ転向。2004年、カナディアン・オープンで杉山愛とのペアでダブルス優勝。同年のアテネ五輪はダブルスベスト4、全米オープンテニスではベスト8に入り大活躍した。06年に現役引退。翌年結婚し、11年に長女を、14年に長男を出産。現役時代の自己最高ランキングはシングルス21位、ダブルス13位。WTAツアーで3度のシングルス準優勝、ダブルスで8勝を挙げた。日本オリンピアンズ協会会員(2009年〜10年代議員を務めた)。

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