新しいアジアカップの開幕 日々是亜洲杯2019(1月5日)

宇都宮徹壱

レギュレーション変更がもたらすもの

UAEを率いる元日本代表監督のザッケローニ(写真中央)。初戦は苦しみつつも引き分けに持ち込んだ 【Getty Images】

「バーレーンはアグレッシブだったが、序盤の15分で完全に相手をコントロールして、いくつかチャンスを作ることができた。後半は中盤でボールを失う場面が増え、相手のロングボールに苦しめられた。(初戦はドローとなったが)次のインド戦に向けて、ポジティブな学びはあったと思う」

 土壇場でのPKによる同点弾で、辛くも勝ち点1を拾ったUAE。とはいえ、試合後のザッケローニ監督の表情に明るさはなかった。当然だろう。いくら初戦とはいえ、明らかに試合運びが拙かった上に、最後のPKの判定は(スロー映像を見ても)極めて微妙なものであった。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が発動されていれば、違った判定になっていたかもしれないが、今大会でのVAR導入は準々決勝から。なんとも奇妙なレギュレーションにより、開催国の面目は保たれることとなったものの、このグループ(他の国はタイ、インド)は混戦となりそうな予感がしてならない。

 ここで、今大会の注目点について言及しておきたい。「これまでのアジアカップとは異なる」とザッケローニ監督も語っているように、今大会から出場国は16カ国から24カ国に増加。ノックアウトステージには、グループ上位2チームに加えて、成績上位の3位4チームも進出できることとなった。一方、ファイナリストになるためには、7試合を戦い抜く必要がある。また、1972年大会から続いてきた3位決定戦は、今大会では廃止されることとなった。

 出場国数の増加により、今大会はキルギス、フィリピン、イエメンの3カ国が初出場。地域別に見ると、中東が最多の12カ国、東アジアとASEAN(オーストラリア含む)が4カ国ずつ、中央アジアが3カ国、南アジアが1カ国となった。依然として地域間の力の差はあるものの、アジア最高の国際大会に縁のなかった国々にもチャンスが与えられたことについては、ある程度は評価してよいと思う。もちろん、大会のレベル低下の懸念があるのも事実だが、その点については大会を終えた時にあらためて考察したい。

 最後に、日本代表について。周知のとおり、初戦を4日前に控えた段階で守田英正と中島翔哉がけがのためチームを離脱。代わって乾貴士と塩谷司が追加招集されることとなった。また、遠藤航が発熱のため合流が遅れるなど、ここにきてアクシデントが続いているのが気になるところ。とはいえ、この程度のネガティブ要素で総崩れになるほど、今の日本は脆弱(ぜいじゃく)ではないはずだ。新チームが発足して迎える、初めての国際大会。だからこそ、ひとつひとつの試合に勝利しながら、チームとしての完成度を高めていってほしい。

<翌日につづく>

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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