「春高よりもしんどい」直接対決を経て 洛南と東山、ライバルが紡ぐ物語

田中夕子

「悔やんでも悔やみきれない」思いを抱えながら

 周囲から見れば、どちらが出ても全国では間違いなく上位進出を狙える強豪だ。冗談ではなく半ば真面目に、他県の監督からは「京都は出場枠が2つあってもいい」と言われるそうだが、そんな発想を抱いたことすらない、と豊田監督は言う。

「全国大会は勝って行くところですよ。だから僕は負けて行くのは絶対に嫌。選手も同じように絶対洛南に勝つのは俺たちや、と思って取り組んでいます。だから僕は選手たちが日本一になるための、日本一の応援団であり続けたい。

 そう思い続けてきたからこそ、けがで出してやれなかった、というのは悔やんでも悔やみきれない。だから今は練習中もボールの転がっている場所や周りに何か危ないものはないか。そればっかり、気になるんですよ」

 勝負の世界に「たら」「れば」がないことは分かっている。だがそれでも、あのけがさえなかったら。悔しいが、何度もそう考えたのもまた事実だ。100パーセント満足できる状態で戦うことができたら、勝つことができたかもしれない、と少なからぬ自信が今もある。

 だが1つだけ。もしかしたらそれでも勝てなかったかもしれない、と思う要素もあると豊田監督は言う。

「彼ですよ。ああいう存在がいるチームはホンマに強い。“カルテット”と呼ばれる4人の選手がそろうけれど、僕に言わせれば彼が“ナンバーワン”。洛南の生命線は、彼なんですよ」

<後編に続く>

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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