CL12戦負けなしのアヤックス 「オランダのバイエルン」に近づけるか
早い準備、積極的な補強が功を奏す
今季加入したタディッチが2ゴール。CLの舞台で勝負強さを発揮した 【Getty Images】
すべてはCLグループリーグ出場権獲得のためだった。夏にピークを作らないオランダ勢はCL予備戦・プレーオフを苦手にしていた。しかし、今季のアヤックスはコンディションを早めに上げて、CL予備戦・プレーオフに臨んでいた。
そんな彼らが秋になっても、冬になってもフィジカルを落とさず、けが人も少ない状態でベンフィカ、バイエルンと壮絶な試合を戦い続けたのだ。そのノウハウは、アヤックスにとって貴重な財産になるだろう。今季、CL予備戦・プレーオフで4勝2分け、グループリーグで3勝3分けと、12戦負けなしの結果は、アヤックスにとって大きな意義があった。
補強面では、プレミアリーグでプレーするデーリー・ブリント(前マンチェスター・ユナイテッド)、ドゥサン・タディッチ(前サウサンプトン)を獲得した。育成クラブとして名高いアヤックスは、下部組織から選手を引き上げたり、将来高く売れそうな若手選手を安く買ったり、メンターとしてベテラン選手を連れて来たりするケースが多かった。しかし、今季のアヤックスは「必要ならばクオリティーを、金を払って買う」という姿勢を見せたのだ。
特にタディッチのアヤックス加入は驚きだった。フローニンゲン、トゥエンテで活躍したタディッチは、オランダリーグを卒業してプレミアリーグに羽ばたいていったはずなのだ。だが、タディッチはアヤックスのオファーに飛びついた。アヤックスのことが好きだった。自身のプレースタイルが、オランダサッカーと合った。優勝するようなチームでプレーしたかった。CLの舞台に立ちたかった――。
そんなタディッチの思いと、アヤックスの思いが合致した。
TDオーフェルマルスが抱く野望
アヤックスのCL予備戦初戦は7月25日、シュトルム・グラーツ戦だった。セルビア代表として出場したW杯後の休みから戻ってきたタディッチは66分から登場し、ジエクと夢の共演を果たした。
タディッチ獲得には、ジエクが移籍する穴をあらかじめ埋めておく算段も、アヤックスにはあった。だから、稀有(けう)なレフティー2人の共演は「束(つか)の間の、夏の夢」だと私は思っていた。しかし、今もタディッチとジエクは、素晴らしい阿吽(あうん)の呼吸をピッチの上で見せている。
「まだプレーオフを残していたけれど、スタンダール(・リエージュ)との予備戦で、『これでCLに行ける』と確信し、僕はアヤックスに残った」(ジエク)
そうジエクに決断させたほどの攻撃的で、支配的なサッカーを、アヤックスは夏から続けてきた。そのサッカーは、勝ち点3こそ取り損ねたが、オーフェルマルスが目標として掲げたバイエルン相手にも通用した。
だが、アヤックスには「オランダリーグのバイエルン」にはなってほしくない。PSV、フェイエノールトとのレベルの高い健全な戦いこそ、アヤックスも含めてオランダサッカーが発展するすべだからだ。
今季、PSVは3−0でアヤックスに勝っている。それもまた良しと私は思うのだ。