寒い時期のランニングで起こりがちな不調と対策 「呼吸困難」「肉離れ」「低体温症」「脱水」

三河賢文

【写真提供:三河賢文】

 夏などの暑い時期は、熱中症や脱水などに気を付けて対策するランナーが多いでしょう。しかし逆に寒い時期には、あまり病気などのトラブルは考えていないかもしれません。では本当に、寒いとトラブルは起きにくいのでしょうか。結論から言えば、決してそんなことはありません。寒い時期には、暑い時期とはまた異なる危険が潜んでいます。

 寒い時期だからこそ起こりがちな不調などのトラブル。知らずに走っていると、思わぬタイミングで倒れたり走れなくなったりするかもしれません。ここで対策と共に4つを取り上げて詳しく解説しますので、改めて確認してみてください。

1)呼吸困難

【写真提供:三河賢文】

 寒い時期は気温の低下を要因として、気管が狭くなってしまいます。さらに呼吸によって冷気を大量に取り込むと、その冷たさが気管に対する大きな刺激となってしまうでしょう。その結果、息苦しさを感じたり、場合によって呼吸困難に陥ったりすることがあります。

 特に喘息をお持ちの場合、普段そこまで頻繁に発作など起こさない軽度の方であっても、その発作症状が起こりやすくなるかもしれません。実際、私も軽度の喘息を持っていますが、ここ2〜3年で冬になると呼吸の苦しさを感じるようになりました。
 対策としては、まず首元などを含め身体を冷やさないこと。ネックウォーマーなどを利用すると良いでしょう。また、走っている際に冷気が入ってこないよう、マスクなどを着用するのもおススメです。マスクは一見すると呼吸を妨げるように思われるかもしれませんが、最近のマスクは通気性に優れています。よほど心拍の上がるような強度の高いトレーニングを行わない限り、マスクによって呼吸が苦しく感じられることは少ないはずです。

2)肉離れ

 ランナーによく起きる怪我の1つである「肉離れ」。単に筋力が不足していたり柔軟性が乏しかったりするほか、いきなりダッシュなど急な激しい運動を行った際にも起こります。ではこの肉離れ、寒い時期に起こりやすいということをご存知でしょうか。

 寒い時期は体温低下と共に、血流が悪くなりがちです。運動するのに十分な血液が行き届かない状態で運動すると、その負担から肉離れが起こってしまいます。これは、高強度なトレーニングに限った話ではありません。状態によっては、いつものジョギングですら肉離れを引き起こす可能性があるのです。

 そのため、寒い時期はいきなり走り出すのではなく、十分にウォーミングアップで身体を温めるようにしましょう。特に体操などは、足首や膝などの下肢から順に行っていくのがおススメです。なお、ストレッチによって柔軟性を高めることも有効ですが、その際にはゆっくりと伸ばすようにしてください。いきなり強く伸ばすと、それが大きな負担となって怪我に繋がりかねません。

3)低体温症

【写真提供:三河賢文】

 寒い場所で身体が震えた経験をお持ちの方は多いでしょう。この震えは、低下した体温を正常に保つために行われています。体温低下はそれほど人体にとって危険であり、体温が35度を下回った状態は「低体温症」と呼ばれるのです。低体温症になると意識が朦朧としたり歩くことすらできなくなったり、場合によって不整脈などを引き起こします。つまり、身体全体の機能が低下してしまうのです。

 特に寒い時期でも、雨や雪によって身体が濡れたり、冷たい風を受け続けたりする気候では低体温症が起こりやすいでしょう。また、走った後に立ち止まり、汗が冷えてしまうことも要因となり得ます。
 低体温症を防ぐには、常に体温を維持するための服装が大切です。身体が温まるまで上着を使ったり、保温性の高いウェアを選んだりしましょう。走り終わった後は、すぐに汗を拭いて着替えるようにしてください。また、身体だけでなく手袋や帽子、ネックウォーマーなど、できるだけ冷気にさらされる場所を減らすことも重要です。

4)脱水

【写真提供:三河賢文】

 暑い時期と比べ、寒い時期は水分補給が疎かになりがちです。実際、冬には夏ほど汗をかきませんし、走っていて喉の渇きを感じることは少ないでしょう。しかしそれでも、長時間にわたり走り続ければ発汗によって水分を失います。その結果、気づかぬうちに水分不足となり、脱水症状が起きることがあるのです。

 寒い時期でも、水分をしっかり補給しましょう。ランニングの前後はもちろん、走る時間が長ければ途中でも補給します。時期に関わらず、ランニング時にはこまめな水分補給が大切です。
 秋から冬、そして春先にかけてはマラソンシーズンとなります。中には、この時期に記録更新を狙う勝負レースを控えている方もいるでしょう。確かに暑い時期と比べれば、やや肌寒い程度の方がランニングには適した気候と言えます。しかし、ここで取り上げたようなトラブルを知らずにいると、せっかく「いざ本番」というタイミングで走れなくなってしまうかもしれません。寒い時期だからこそ起こりやすいトラブルを理解し、十分に対策を行ってランニングを楽しんでください。
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著者プロフィール

中学生の頃から陸上競技を始め、大学では十種競技選手として活動。引退後、約7年のブランクを経て2011年6月よりランニングを開始。同年にハーフマラソン、フルマラソン、翌年には100kmのウルトラマラソンやトライアスロン(オリンピック・ディスタンス)も完走。沖縄本島1周マラソンなどを始め、今では“超長距離”レースにも数多く出場している。また“トウモロコシ”や“アザラシ帽子“をトレードマークに、仮装マラソンも楽しむ。ランニングブログも不定期更新中。趣味と過去の経験を活かし、現在は東京都葛飾区内にある中学校の陸上部にて、外部コーチとして指導も行っている

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