メッシもC・ロナウドもいないクラシコ 不在の影響が大きいのはバルサだが…

バルサはメッシ不在を誰が補う!?

バルサはアルトゥールがインサイドMFに入ることで攻守のバランスが改善された 【Getty Images】

 それでもクラシコでエース不在の影響をより感じさせるのはバルセロナの方だろう。メッシは今もチームの中心であり続けるだけでなく、今季は自身5度目、クラブにとっては6度目のCL制覇を新たなモチベーションとし、序盤戦から目覚ましい活躍を見せてきたからだ。

 ここまでメッシはラ・リーガで9戦7発、CLでは2戦5発と、ハイペースでゴールを重ねてきた。中でもウェンブリー・スタジアムでのトテナム戦、カンプノウのセビージャ戦では出色のパフォーマンスを見せている。そんな矢先に生じたセビージャ戦での故障により、彼は最低3週間の離脱を強いられることになった。

 インテルとの2試合を迎えるCLの間にクラシコを挟む厳しい連戦に向けて、バルセロナはどうやってメッシの不在を補うべきか。それは簡単にできることではなく、天才プレーヤーの代役など存在するはずもないが、しかるべき方向性を見いだすことは可能なはずだ。

 チーム唯一のオーガナイザーだったアンドレス・イニエスタを失った今季、エルネスト・バルベルデ監督はフィリペ・コウチーニョをイニエスタの代わりに4−3−3の左インサイドMFに起用してきた。

 だが彼はMFよりメディアプンタ(トップ下)に近い選手のため、昨季のように4−4−2の左MFでプレーさせた方がよりゴールに近い位置でその得点力を生かすことができる。そのためバルベルデは数試合前からコウチーニョを左FWに移し、インサイドMFにはシャビ・エルナンデスに似たプレースタイルを持つアルトゥールを起用することで、攻守のバランスを改善することに成功している。

 メッシを欠く今後の数試合では、アルトゥールに押し出される形で定位置を失ったウスマン・デンベレ、もしくはここまでベンチ入りすらままならなかったマルコムの出番が増えるかもしれない。チャンスメーカーの役割はコウチーニョに託されることは確実だ。

シーズンが終わるのは7カ月も先

バルセロナとの勝ち点差は4ポイントしか開いていないが、7位に沈んでいることも事実である 【Getty Images】

 ラ・リーガの成績や得点力不足をあおりたてる地元メディアの報道からは、レアルが深刻な危機に陥っているかのような印象を受ける。だが実際はまだシーズンの半分も消化しておらず、単独首位を走るバルセロナとの勝ち点差も4ポイントしか開いていない。カンプノウで直接たたけばライバルに大きなダメージを与えられるだけでなく、順位表の上でもほとんど差はなくなるのだ。

 それでも8時間以上も無得点が続いた末、久々の得点を決めたのがサイドバックのマルセロであり、その試合もホームでレバンテに敗れているようでは、見通しが明るくなるわけがない。ラ・リーガでは現時点で来季のヨーロッパリーグにも出場できない7位に沈んでいることも、動かざる事実なのだ。

 とはいえそれも、長い映画の一コマに過ぎない。シーズンが終わるのは7カ月も先のことであり、10月末の時点でクライマックスを迎えたかのように物事をあおりたてる必要はないはずだ。まだクリスマス休暇や年越しも迎えておらず、ラ・リーガ、CL、国王杯の全てで多くの試合が残っているのだから。

 いずれにせよ、メッシとC・ロナウドが不在のクラシコは、近年のそれとは確実に異なるものになるだろう。試合がどのような結果に終わろうとも、われわれは奇妙な違和感を抱きながらこの試合を観戦することになるはずだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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