これまでになかった日本代表の進化過程 「引き継いだもの」+「森保カラー」
プレーの随所で感じたチーム内の共通認識
ウルグアイ戦では中島翔哉が自由なドリブルを仕掛けたが、そこにもチームでの共通認識が見られた 【写真:松尾/アフロスポーツ】
ウルグアイが1トップの4−2−3−1で守備陣形を組んでいたので、日本は2CBのままで攻撃をビルドアップしていた(相手が2トップに変えた後半途中からは、ボランチが落ちて3枚にしていた)。
アタッキングサードでも5トップを形成することはなかった。右サイドハーフの堂安律はハーフスペースに立ち、そこから外に流れたり、ダイアゴナルラン(斜めに走るプレー)でゴール前に飛び出したりすれば、左サイドハーフの中島翔哉は、あえて孤立するようにタッチライン際に立ち、縦へ、中へと自由にドリブルを仕掛けた。
無駄走りでおとりになることが多かった左SBの長友の「最後のほうは任せていましたね。行って来い! と」「彼がそこで楽しんでくれたら僕の任務も少しは達成できたかな」という言葉からは、中島に自由にプレーさせれば、質的優位を保てるはずだというチーム内の共通認識がうかがえる。
さらに特徴的だったのは、1トップの大迫とトップ下の南野の関係性だろう。大迫が中盤に下がり、南野が飛び出す場面が多かったのだ。
ウルグアイの世界的なCB、ディエゴ・ゴディンは中盤に下がってボールを引き出す大迫に付いて行き、背後から圧力を掛けていた。それでもボールを収めてしまう大迫はさすがだったが、もしかするとゴディンは、自分の空けたスペースに飛び出していく南野を気にして、大迫に全力でアプローチできなかったのかもしれない。
一方、大迫が何度も中盤に下がることで、重鎮のゴディンをゴール前から引っ張り出すことに成功してもいる。
2人の関係性について森保監督は「トレーニングで攻撃の形を作ることはやりました。しかしながら、パナマ戦から2人でプレーして、ピッチ内だけでなく、ピッチ外でもコミュニケーションを取ってくれたことがこういう形に出たと思う」と振り返った。
森保監督の優しさや配慮
森保監督の優しさや配慮が、今の日本代表のチームカラーとなって表れてきている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
「優しさの中にもすごく芯がある方。心の奥の底の部分には柱があってブレない。それはすごく感じるけれど、選手を優しさで包んでくれるような、何があっても守ってくれるような、そういう器の大きな方だと思うので、若い選手も日本代表の雰囲気にすごく入りやすい状況だと思います」
初陣となったコスタリカ戦では南野、中島、堂安を2列目に並べ、自由にやってこい、という感じで送り出した。一方、強敵ウルグアイでも3人を起用したが、前には大迫、後ろに長友、吉田麻也、酒井宏樹を配してプロテクトした。
パナマ戦ではCBの冨安が代表デビューを飾り、伊東と三竿が代表初先発を果たしたが、センターラインは大迫、青山、槙野といった経験のあるベテランで固めた。こうした起用法にも長友の言う優しさ、配慮が感じ取れる。
「見ていて楽しかったですか? 楽しかったでしょうね(笑)。僕、もし、代表に選ばれていなかったら、試合を見に行きたいなと。それくらいイキイキとサッカーをしていたので。うまくて速いし。日本代表、面白くなるんじゃないですか?」
長友は言った。目の前でウルグアイの選手を抜き去る中島のドリブルを、ほかでもない長友が一番楽しんでいたに違いない。すげえな、こいつ、という驚きの念を抱きながら――。
指揮官から提示されたコンセプトの中で選手たちがイキイキと個性を発揮し、それが相手に対して位置的、数的、質的優位性を保つことにつながっている。年内の親善試合は11月のベネズエラ戦、キルギス戦の2試合。来年1月に開催されるアジアカップUAE大会まで残された試合は少ないが、新生・日本代表は試合を重ねるたびに進化を加速させていくはずだ。