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「チームバスケに徹し、効果的に攻める」
HCに聞く、○○はうちがNo.1 愛媛編

昨季は「アップテンポなバスケ」で健闘

愛媛の魅力は誰がポイントガードか分からなくなるほどアップテンポなバスケットだ
愛媛の魅力は誰がポイントガードか分からなくなるほどアップテンポなバスケットだ【(C)B.LEAGUE】

「この時点でゴールを決めきるのは早い。山を一歩ずつ登るようにステップアップすることだ」。今季の開幕を目前に控えても、愛媛オレンジバイキングスのリチャード・グレスマン・ヘッドコーチ(HC)は冷静さを崩さなかった。昨年の来日直後、チーム初の外国人HCに少し緊張しながら取材をしたときと同様、今回も「プレーオフ進出」や「B1昇格」といったワードは出てこなかった。ただ超攻撃型チームを率いて、数々のハイスコアゲームを制した昨季の手応えは残ったに違いない。契約を更新して愛媛に戻った指揮官は「チームバスケに徹し、常に効果的に攻めるところは他に負けない」と胸を張った。


 比較的歴史の浅いチームにあって、昨季の成績は誇れるものだった。bjリーグ時代を含め初めて勝率5割を達成。個人でも2季連続の得点王に輝いたチェハーレス・タプスコット(現熊本ヴォルターズ)を筆頭に、さまざまな項目のランキング上位者を出した。特筆すべきは攻撃力で、チームの1試合平均得点(84・1点)はB2トップ。グレスマンHCは「『アップテンポなバスケット』を遂行できる選手がそろっていた」と要因を分析する。


 圧倒的な攻撃力は、個性的なチーム作りの産物だ。Bリーグでは一般的に、日本人ポイントガード(PG)が最後尾でコントロールし、ゴール下は長身の外国人が担い、ミドル・ロングレンジで日本人シューターが得点する、といったパターンを戦術の軸に置くチームが多い。


 愛媛の場合、その役割分担は不明確だ。チームは全体的に高さがなく、ドライブやシュートがうまい選手は多い。そのため外国人を含む全員が脚を使い、終始トランジションゲームを展開し続けることで長所を生かした。指揮官は「アップテンポ」と表現し、常にスピード感を持ってゴールに向かうことを求めた。皆がリバウンドやルーズボールに飛びつき、そのまま一斉に疾走する様子は、一見誰がPGなのかが分からなくなるほどだった。

不安要素は守備と戦術の徹底

 しかし展開が速い分、守備が乱れると大量失点を招くリスクを負っていた。他チームの分析が進んだ中盤以降は黒星が先行する時期があり、順位を落とした。また若い選手が多く、苦しい局面で持ちこたえられず敗れるゲームも散見された。昨季主将を務めた俊野達彦(現秋田ノーザンハピネッツ)は「個で戦うと負けるチームだが、自分たちのスタイルに引き込めたら強い相手にも負けなかった。チームで戦うことが大切だった」としつつ、「うまくいかないときに雰囲気が悪くなることがあった」とも指摘。コート内外で後輩をけん引した笠原太志も「経験の少なさから、ディフェンス面で我慢ができなかったり、まとまりを欠いたりすることがあった」と振り返る。


 さらなるステップアップを目指す今季はどうか。ライジングゼファー福岡から移籍した32歳・堤啓士朗ら経験豊富な選手が加入。リーグ随一のスコアラー・タプスコットが抜けたかわりに、ペイント内外から攻撃できるアンドリュー・フィッツジェラルドとコーリー・ジョンソンが加わった。新チームについて、まだ指揮官は多くを語らないが、器用かつ運動量の豊富な選手をそろえたあたり、今季も「アップテンポ」なスタイルを継続することは間違いない。半数以上が入れ替わり、戦術の徹底などに不安はあるが、新主将・楯昌宗は「選手同士の年齢が近くなり、新しい視点で意見を出し合えるチームにしたい」と前を向く。


 9月初旬、ブースターを集めたイベントで、グレスマンHCは「いつでも声援をくれるみなさんはわれわれの誇り。愛媛の誇りになるようなチームを目指す」と宣言した。愛媛は7月の豪雨災害で大きな被害を受け、今も大変な生活を強いられる被災者がいる。苦しいときでも全員が力を合わせてゴールに向かい、胸のすくような得点ラッシュを演出するチームが、今後も県民に勇気を与える存在になれると信じている。

愛媛新聞社スポーツ・映像報道部 高橋圭太
1985年愛媛県松山市生まれ。立命館大学卒。2008年愛媛新聞社入社。社会部などを経て、2017年からバスケットボールや柔道など、主に愛媛県内のスポーツを取材している。

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