「チームバスケに徹し、効果的に攻める」HCに聞く、○○はうちがNo.1 愛媛編
昨季は「アップテンポなバスケ」で健闘
愛媛の魅力は誰がポイントガードか分からなくなるほどアップテンポなバスケットだ 【(C)B.LEAGUE】
比較的歴史の浅いチームにあって、昨季の成績は誇れるものだった。bjリーグ時代を含め初めて勝率5割を達成。個人でも2季連続の得点王に輝いたチェハーレス・タプスコット(現熊本ヴォルターズ)を筆頭に、さまざまな項目のランキング上位者を出した。特筆すべきは攻撃力で、チームの1試合平均得点(84・1点)はB2トップ。グレスマンHCは「『アップテンポなバスケット』を遂行できる選手がそろっていた」と要因を分析する。
圧倒的な攻撃力は、個性的なチーム作りの産物だ。Bリーグでは一般的に、日本人ポイントガード(PG)が最後尾でコントロールし、ゴール下は長身の外国人が担い、ミドル・ロングレンジで日本人シューターが得点する、といったパターンを戦術の軸に置くチームが多い。
愛媛の場合、その役割分担は不明確だ。チームは全体的に高さがなく、ドライブやシュートがうまい選手は多い。そのため外国人を含む全員が脚を使い、終始トランジションゲームを展開し続けることで長所を生かした。指揮官は「アップテンポ」と表現し、常にスピード感を持ってゴールに向かうことを求めた。皆がリバウンドやルーズボールに飛びつき、そのまま一斉に疾走する様子は、一見誰がPGなのかが分からなくなるほどだった。
不安要素は守備と戦術の徹底
さらなるステップアップを目指す今季はどうか。ライジングゼファー福岡から移籍した32歳・堤啓士朗ら経験豊富な選手が加入。リーグ随一のスコアラー・タプスコットが抜けたかわりに、ペイント内外から攻撃できるアンドリュー・フィッツジェラルドとコーリー・ジョンソンが加わった。新チームについて、まだ指揮官は多くを語らないが、器用かつ運動量の豊富な選手をそろえたあたり、今季も「アップテンポ」なスタイルを継続することは間違いない。半数以上が入れ替わり、戦術の徹底などに不安はあるが、新主将・楯昌宗は「選手同士の年齢が近くなり、新しい視点で意見を出し合えるチームにしたい」と前を向く。
9月初旬、ブースターを集めたイベントで、グレスマンHCは「いつでも声援をくれるみなさんはわれわれの誇り。愛媛の誇りになるようなチームを目指す」と宣言した。愛媛は7月の豪雨災害で大きな被害を受け、今も大変な生活を強いられる被災者がいる。苦しいときでも全員が力を合わせてゴールに向かい、胸のすくような得点ラッシュを演出するチームが、今後も県民に勇気を与える存在になれると信じている。