自信を持つ「ハーフコートバスケ」の進化 HCに聞く、○○はうちがNo.1 三河編

山田智子

今オフに代表選手2人が移籍

リーグ屈指のシューター・金丸晃輔が三河の核になる 【(C)B.LEAGUE】

「面白いシーズン、楽しみなシーズンですね」

 今オフは主軸を担ってきた橋本竜馬、比江島慎が同時に抜けて激震に見舞われたシーホース三河だが、就任24年目を迎える鈴木貴美一ヘッドコーチ(HC)は新たな挑戦に目を輝かせる。

「代表選手が2人抜けましたが、今はみんなが競い合い、さまざまな組み合わせを試している中で、いろいろな選手のいい部分が出てきている。西川(貴之)選手や森川(正明)選手が目の色を変えて挑戦してきているのが分かるし、新しく入った生原(秀将)選手も多くのことを吸収しようと質問してきます。そういう選手は必ず伸びる。ここから、誰が出てくるのか非常に楽しみです」

 悲願の頂点へ挑む3年目は、攻守に渡るアグレッシブさが持ち味の若きポイントガード・生原と、NBAの経験があるスモールフォワード、ジェームズ・サザランド、パワーフォワードのグラント・ジェレットが加わり、新たなスタイルを作り上げるところからスタートする。

「新生シーホース三河」の核になるのは、橋本、比江島とともにチームをけん引してきた、リーグ屈指のシューター・金丸晃輔だ。鈴木HCも「これまではオフェンスに専念してやってきましたが、今年はディフェンスの意識を持ってやっている。ガードの選手ともよく会話をし、積極的にコミュニケーションをとっている。また一皮むけるんじゃないかと期待しています」と絶大な信頼を寄せる。

 アーリーカップでは厳しいマークに遭いながら、準決勝の茨城ロボッツ戦で19得点、決勝の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦では28得点をたたき出し、健在を印象づけた。得意のキャッチ&シュートや合わせのプレーに加え、1on1で仕掛けてシュートを決めるなど新たなスタイルに挑戦する姿が見られ、さらなる進化を予感させた。

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得点減は守備でカバー

 しかし決して「金丸頼み」ではなく、「去年までの金丸選手、比江島選手を生かすバスケットではなく、今シーズンはみんなで点を取っていく。タイムシェアをしながら、チーム全体の力を上げていくイメージで考えています。昨年よりも得点が減る可能性もあるが、その分は守備を強化して補っていく」と鈴木HC。昔からリーグで一番だと自信を持つハーフコートバスケットに加え、守備のハードワークからの速いバスケットを目指していく。

 準優勝に終わったアーリーカップを見ると、もう少し時間を要しそうな印象はあるものの、準決勝の茨城戦では、堅守からの走るバスケを展開し、生原、森川、ジェレットの3人で崩して連続得点を奪うなどチームケミストリーの片鱗(へんりん)を見せた。

「新戦力が非常に良いので、彼らをどうチームにマッチさせていくかが今シーズンのポイント。メンバーが変わったから悪くなるんじゃなくて、さらに上を目指してやらないとチームは強くなっていかない。そこは妥協しないで徹底してやりたいと思います。今年は仕事をいっぱいしなければいけないな、という感じですね(笑)」

鈴木HCも認める選手同士の「団結力」

 チームが変化する時ほど問われるのが“団結力”だ。常勝チームを率いてきた鈴木HCが「そこはリーグでNo.1だと思っていますし、常に他のチームには負けたくない」と長年大事にしてきた流儀でもある。

 昨シーズンも天皇杯の決勝やチャンピオンシップという大一番では、選手全員が同じ色のシューズを履き、気持ちを1つにして団結を図ってきた。個性的な選手が集まった中で、「みんなで何かやろうという時にまとまることができる団結力」は三河の強さだと鈴木HCは続ける。

「クリエイティブなオフェンスはしっかり練習もしていますし、技術的にも自信があります。でも最も自信を持っているのは、チームが助け合って、選手同士がいい意味で仲が良いことです。練習中はライバルでありながら、試合ではコミュニケーションをとって、献身的にプレーをし、選手同士が牽制し合わない。足を引っ張ったり、悪口を言ったりすることは絶対に許しません。私の行動を選手は見ているし、考え方も伝染してしまうので、常に自分を戒めて行動で示していかないといけないと思っています」

 リーグNo.1の経験を誇る指揮官が作り上げる、新たなシーホース三河。それが完成する時、「新生三河」はセミファイナルの壁を越え、頂点へとたどり着いていることだろう。

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著者プロフィール

愛知県生まれ。公益財団法人日本サッカー協会に勤務し、2011FIFA女子ワールドカップにも帯同。12年に退職し、以後フリーランスのスポーツライター・カメラマンとして活動。東海地方を拠点に、サッカー、バスケットボール、フィギュアスケートなど幅広く取材を行なう。

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