「日本一」へ向け、新プロジェクトが始動 HCに聞く、○○はうちがNo.1 信州編

大枝令

中長期的な戦略の1年目に

新ヘッドコーチに勝久マイケルを招き、信州は新たなプロジェクトへ動き出した 【(C)B.LEAGUE】

 信州ブレイブウォリアーズにとっての新シーズンは、大きな野望を実現するための第一歩となる。新ヘッドコーチ(HC)に就任した勝久マイケルは「『今この部分で日本一だ』とは言えないと思うが、いろいろな部分で日本一になれるようにチームで努力をしたいし、同じように思っている人間にこのフランチャイズ(本拠地)に集まってほしいと思っている」と力を込める。

 この「日本一」という言葉は、信州を語る上で重要なキーワードになる。創設8シーズン目となる今季、チーム史上最長となる3年契約で勝久HCを招聘(しょうへい)。さらにHCだけでなく、選手編成の全権を担う役職「プレジデント・オブ・バスケットボールオペレーションズ」も兼任する。中長期的に戦略を立て、チームとその周辺を骨太に成長させていく狙いだ。「グレートなフランチャイズを作るのには時間がかかる。信州はポテンシャルがあるし、それができる場所だと思った」と、複数オファーの中から信州を選んだ理由の一端を明かす。

「B1昇格を目指すし、B1の信州を見たい」

 新指揮官が志向するスタイルは、「自分たちでコントロールできることを絶対にぶれさせずにコントロールすること」だと言う。具体的には、ハードワークや綿密なコミュニケーション、集中力や遂行力を持つことなどが挙げられる。というのも、例えばシュートが入るか入らないかは調子の波があるが、それに比べればディフェンスは波が少ない。勝久HCは「遂行力」というワードを強調しながら、「そういう部分を堅実にハードに、ミスがなるべく少ないように40分やらないといけない」と力を込める。

 それを実現するために編成したロスターは、ベテランも若手も多彩な顔ぶれ。引退の意向だった35歳の日本人ビッグマン佐藤託矢を口説き落として翻意させただけでなく、昨季B2アシストランキング2位の石川海斗ら実力派の選手を次々と引き入れた。「既存のメンバーも新加入の選手も、みんな『一緒に頑張っていきたい』と思わせてくれる。このロスターになって本当によかった」。アンソニー・マクヘンリーら外国籍選手も幅広いスキルセットを備えているなど、大きな偏りがないのも特徴と言える。

 3年計画の1年目に当たる今季。最終的には、信州をどのようなチームに導くのか。「いろいろな意味で『日本一』と言えるグレートなフランチャイズに一歩ずつ近付いていきたい。もちろんコートでの結果や内容が一番の仕事だから、1つでも多く勝ってB1昇格を目指すし、B1の信州を見たい。そうすれば全てが変わる」。そのために現在は「日々成長」をキーワードに掲げており、「新しいチームなので土台作りを大事にしているし、基本的にはそれが毎日できている実感がある」と手応えを口にする。

「Strive for Greatness」。偉大さへの努力、という意味の新スローガンだ。Bリーグ元年の2016−17シーズンは中地区最下位に終わり、2年目の昨季は同5位。だが信州は新たなプロジェクトを描き、その第一歩を踏み出そうとしている。現状でB1基準には満たないが待望の新本拠地「ことぶきアリーナ千曲」も完成し、ソフト面でもハード面でも一新されたシーズン。その野望と伸びしろの大きさは、間違いなくリーグNo.1と胸を張れるのではないだろうか。

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著者プロフィール

1978年生まれ、東京都出身。早稲田大学文学部卒。長野県内の新聞社で約10年間勤務し、2008〜15年はスポーツ専属担当を務めた。同年に退社してフリーのスポーツライターに転身。松本山雅FCの密着取材をライフワークとしながら、甲信エリアのスポーツを幅広く手がける。クラブ公式有料サイト『松本山雅FCプレミアム』編集長も務める。

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