人とボールが「速く」動く美しいバスケを HCに聞く、○○はうちがNo.1 茨城編

佐藤拓也

「あと一歩」の悔しさを胸に昇格を目指す

キャプテンの眞庭城聖(写真)を中心に人もボールも動くバスケを掲げる茨城 【(C)B.LEAGUE】

 昨シーズン、終盤に怒とうの17連勝を挙げて一時は首位に立ったものの、最終戦で敗れてB2中地区優勝を逃した茨城ロボッツ。「あと一歩」の悔しさを胸に、「B1昇格」を絶対的な目標として新たなシーズンに挑む。

 悲願のB1昇格に向け、クラブは積極的な補強を敢行した。昨季の主力だった眞庭城聖をはじめ、高橋祐二、平尾充庸、久保田遼を残しながら、友利健哉(福島ファイアーボンズ)、福澤晃平(ファイティングイーグルス名古屋)、横尾達泰(熊本ヴォルターズ)、ジャーラ志多斗(元・群馬クレインサンダーズ)といった、昨季は他チームの主力として活躍した日本人選手を獲得。さらにジョシュ・デービス(川崎ブレイブサンダーズ)や元西宮ストークスのコナー・ラマートといった実力派の外国人選手の補強にも成功。目標達成に向け、充実の戦力をそろえたと言えるだろう。

 今シーズンに向けて、岩下桂太ヘッドコーチ(HC)が一番の強みとして挙げるのが「人とボールが動くバスケ」だ。HCは熱のこもった口調でこう説明する。

「ただ動くだけでなく、“速く”動くバスケですね。美しいバスケをすることが我々の理想です。ものすごく強いインサイドの選手にボールを預けて攻撃をするようなバスケではなく、ボールを動かして、人が動いて、サポートしながら、外と中を使い分けて、バスケをよく知っている人もあまり知らない人も、見ていてワクワクするようなバスケをしたいと思っています。イメージとしては、2014年のスパーズ(NBAファイナルで優勝)のような、全員がボールをシェアして、セルフィッシュなプレーをせずに、小さな仕掛けから大きなズレを作っていくようなオフェンスをやりたいんです」

スポーツ広場と新アリーナがチームに追い風

 昨季、ロボッツは戦術に選手をはめるのではなく、「選手の判断を尊重する」バスケを展開した。リーグ序盤こそ判断に戸惑いが見え、なかなか調子を上げることができなかったが、個々の選手の判断力が高まり、さらに連係が深まるにつれてチームは力をつけていき、それが終盤の17連勝につながった。「今シーズンも継続していく」と岩下HCが言うように、昨季で築いた土台の上に、さらに判断の質を高めて「人とボールが動くバスケ」を完成させていくこととなる。

 そして、もう1つ岩下HCが他のチームにない特徴として挙げたのが、「地域の盛り上がり」だ。昨年9月、水戸市の中心街にアリーナを中心とするスポーツ広場「M−SPO(まちなか・スポーツ・にぎわい広場)」が誕生。すでに地域住民の憩いの場として親しまれている。さらに来春には、B1ライセンス基準を満たす5000人収容のアリーナ「東町運動公園体育館」が完成する。同アリーナでは、今シーズン終盤のリーグ戦開催も予定されており、地域の盛り上がりが「B1昇格」を後押しすることは間違いない。

「チームに対して、追い風が吹いていることは感じています」と岩下HCは語る。同時に「期待を感じる分、あまり気負い過ぎないで戦いたい」と強調する。

「パフォーマンスの逆U字曲線というものがあると私は考えています。やる気がありすぎてもダメだし、なさすぎてもダメ。ちょうどいいところでパフォーマンスがピークになるんです。その“いいあんばい”をどれだけ維持できるかが重要になると考えています。緊張についても同じことが言えます。そこのメンタルコントロールが大切になります。気負い過ぎたり、責任を感じすぎてもダメ。逆もダメ。どっしり構えて、やるべきことをしっかりやっていけば、結果はついてくる」

 HCは落ち着いた口調で意気込みをそう語った。

 万全の準備を整えて挑む新たなシーズン。あとは自分たちを信じて戦うのみ。「1試合1試合、1日1日を大切にしながら、成長をしていくだけ」と岩下HC。その目はB1昇格、そして、その先を見据えている。

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著者プロフィール

1977年7月30日生まれ。横浜市出身。青山学院大学卒業後、一般企業に就職するも、1年で退社。ライターを目指すために日本ジャーナリスト専門学校に入学。卒業後に横浜FCのオフィシャルライターとして活動を始め、2004年秋にサッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊に携わり、フリーライターとなる。現在は『EL GOLAZO』『J’s GOAL』で水戸ホーリーホックの担当ライターとして活動。2012年から有料webサイト『デイリーホーリーホック』のメインライターを務める。

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