「自慢の速攻」で、念願のPO出場に挑む HCに聞く、○○はうちがNo.1 福島編

大島和人

新興クラブながら、PO進出まであと一歩と迫る

福島はフリースロー、ファストブレイクポイントに大きな自信を持つ 【(C)B.LEAGUE】

 福島ファイヤーボンズはbjリーグの2014−15シーズンからプロとしての活動を始めた新興クラブだ。しかし昨季のB2では東地区2位と善戦。ワイルドカードによるプレーオフ進出まで、あと2勝と迫る好成績を挙げた。

 就任3季目となる森山知広ヘッドコーチ(HC)は“ナンバーワン”について、こう述べる。

「昨シーズンは福島がB2の中で一番フリースローを獲得して、一番ファストブレイクポイントを取った。その部分は今年もナンバーワンになりたいなと思って、チーム作りを進めています」

 目指す攻撃のスタイルについてはこう説明する、

「ポストに立たせてボールをそこに入れるのではなく、しっかりオフェンスの流れを作った中でアタックしたい。ドライブもそうですし、いろいろな動きの中でペイントエリア(ゴール下の台形エリア)にボールを入れたい。ペイントにボールが入ればディフェンスは必ず寄るので、そのときはキックアウトしてアウトサイドのオープンなシュートを作っていく」

 速攻の先頭に立ってリズム、テンポを作るのはガード陣だ。34歳の青年指揮官は言う。
「この2年間は村上慎也がそのテンポを作っていました。なのでガード陣には期待しています。村上が出ていないときにも、鈴木大がいるので、その2人でしっかり流れを作りたいと思っています」

 武藤修平は昨季の福島で全試合に先発した192センチのPFだ。外国籍選手を相手にポストから仕掛けるパワーと、アウトサイドのプレーの両方ができる万能性を持っている。森山HCも武藤を「シックスマンとして、ウチのつなぎの中ではキープレイヤー」と評価する。

主力の入れ替わりで厳しい戦いが予想されるが……

 一方で今季は菅野翔太、友利健哉らが移籍し、主力選手の入れ替わりがあった。指揮官は昨季よりは挑戦するべき壁が高いことを認め、こう課題を口にする。

「主力が抜け、6人も選手が変わっているので、歯車が合わないとガタガタいってしまう。成熟度が足りないところはあります」

 実際に9月上旬のアーリーカップ東北はB3の岩手ビッグブルズ、B2の山形ワイバンズに連敗し、6チーム中6位に終わっている。

 昨季の福島は元NBAプレイヤーのソロモン・アラビを擁していたが、今季も実績のある外国籍選手が新たに加わった。イバン・ラベネルは琉球ゴールデンキングス、秋田ノーザンハピネッツの在籍歴があり、日本のトップリーグで高レベルなスタッツを残してきた人材だ。ラベネルは203センチ、118キロのパワフルなインサイドプレイヤーで、スキルや個の打開力も兼ね備えている。

 しかし、森山HCに外国籍選手に頼る考えはない。ペースの速いバスケットを展開するためには、プレータイムもあまり長く引っ張ることはできない。ラベネルの「生かし方」についてはこういう考えだ。

「周りが止まっている状態で、1対5のシチュエーションから攻めることはなるべく減らしたい。最後は彼の1対1になりますが、その前に人とボールが動いているオフェンスの中で、ラベネルがアタックするシチュエーションを増やしたい。

 そこはずっと彼を獲る前から話していることですし、「チームで勝ってチームで負ける」という根幹となる価値観については、ずっと言い続けている。彼からアシストが出ればシューター陣も生きると思いますし、そういう流れを開幕後も継続して作っていけるようにしたいです」

 目標とするプレーオフ進出は困難なチャレンジだが、森山HCに後ろを向く気配はない。彼はこう意気込む。

「去年は38勝しましたが、そのうち(54勝を挙げB1に昇格した)秋田にも2勝したり、良い状態で最後に上がっていけた。今年も後半戦に強いチーム、前半は試行錯誤しながらも、後半に連敗せず連勝していけるチームにしたいです」

 今季は9月29日の開幕戦から仙台89ERS、西宮ストークスとB1経験のあるクラブとの対戦が続き、シーズンの出足では苦しむこともあるだろう。しかし福島のファンにとっては、チームの成長を楽しめるシーズンとなるはずだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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