本当の意味での「チームワーク」を示す HCに聞く、○○はうちがNo.1 山形編

山形新聞社 野田達也

「華やかな個人技だけで頂点に君臨できる時代は終わった」

地元出身の主将、佐藤正成(写真)をリーダーに一丸となって戦う山形 【(C)B.LEAGUE】

 見えそうで見えないあるものを、目に見える形で提示してみせた。B2東地区のパスラボ山形ワイヴァンズがリーグで最も誇れるもの。それは「チームワーク」だ。

 レギュラーシーズンの前哨戦にあたるアーリーカップ東北(9月7〜9日、仙台市・ゼビオアリーナ仙台)で、それは明確に示された。5位決定戦の相手は、昨季の通算成績で山形を上回る同地区の福島ファイヤーボンズ。結果は30点以上の差を付けて、山形が完勝した。だが、注目すべきはそこではない。アシスト数「31」。この特筆すべき数字は、今季から山形で指揮を執る小野寺龍太郎ヘッドコーチ(HC)の目指す理想を示したと言えるだろう。

小野寺HCはJBLで選手としてプレーした後、会社員を経て、指導者に。「選手としての実績はほとんどないに等しい」と言うが、36歳の若さながら米独立リーグ所属のチームを含め、計4チームでHCを務めた。豊富な指導経験の中でつかんだのが「ファンの目を奪う、華やかな個人技だけで頂点に君臨できる時代は終わった」との確信だ。目指すのは、個の連動による強固な組織づくり。「人から人へのパスを開発する研究所」を意味するチーム名「パスラボ」に込められた願いのように、「個人の能力だけで押し切ろうとしてきた過去から脱却し、使い古された『チームワーク』という言葉に改めてスポットを当てる」(小野寺HC)バスケを志向していく。

日本人以上に勤勉な助っ人と、地元出身の精神的支柱

 指揮官も「HC生活の中でこんな数字は見たことがない」と評価した福島戦のアシスト数「31」で、目指すバスケの片りんを見せた山形。ガードが敵陣から積極的にプレッシャーをかけて相手の攻撃を遅らせ、全員が連動してパスカットを狙う。コートに立つ5人全員が連係して人とボールを絶え間なく動かし、組織的に得点機を演出する。理想像を裏打ちするのは「1人欠けてもいけないし、能力が突出したスタープレーヤーが1人いても足かせになる」(小野寺HC)という緻密な戦術だ。

 その戦術の鍵となる人物は、ともにBリーグ初挑戦の外国籍新入団選手、ウィル・ヘンリーとブレット・ビスピンだ。機動力やフィジカル、内外からの攻撃力などフォワードとしての卓越した能力もさることながら、選手補強の際に小野寺HCが最もこだわったのは“勤勉さ”。2人はすでに、日本人以上に勤勉で献身的な姿勢を高く評価され「チームが一丸となる上で必要な選手」と指揮官の信頼は厚い。

 そしてチームを束ねるのは、地元・山形県高畠町出身で主将3年目のSG/SF佐藤正成。精神的支柱であり、攻守の要でもある佐藤が、チームに暗雲が漂うときは流れを変える「切り札」として存在感を発揮する。

 一方で課題もある。攻守に走り回るスタイルはスピードと持久力を要するため、プレシーズンゲームでは終盤に息切れすることもあった。またチーム戦術が緻密なため、練習成果がいかんなくコートで発揮されるにはまだ時間がかかりそうだ。司令塔であるPGだけでなく、1人1人が相手ディフェンスの動きに対応しつつ、より効果的な攻撃パターンを選択する“意識の共有”が求められる。細かい約束事が増える分、重要になるのは戦術への理解度と、それを実行するチームワーク。創設5年の節目にリーグ上位のチームを脅かす「台風の目」になれるか――。全てはそこに懸かっている。

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