2001年 toto本販売をめぐって<後編> シリーズ 証言でつづる「Jリーグ25周年」
totoを支えたJリーグの公共性と先見性
totoは単なる賭博ではなく、国民の生涯スポーツや健康増進に寄与するもの 【写真:aicfoto/アフロ】
「僕自身もボールを蹴りますし、取材であちこちのスポーツ施設を訪れますが、totoの助成金で作られたグラウンドや施設が全国にたくさんあるじゃないですか。最近、東京2020大会協賛くじが発売されましたけれど、17年前からスポーツの普及と発展に影響力を与えてきたのがtotoだったわけです。その先見性はすごいと思いますね」
岩本が語るように、totoは単なるとばくではなく、国民の生涯スポーツや健康増進に寄与することが広く周知された。われわれはつい金額のほうに関心を寄せがちだが、そうした国民的なコンセンサスが得られたこと、そしてそのための努力を続けた先人たちの努力にも目を向けるべきではないか。ところで本稿を読んで、Jリーグに関する言及が少ないことに、すでにお気づきの方もいるだろう。実のところスポーツ振興投票部は、準備段階からJリーグとも定期的に折衝を重ねている。ところが、それほど苦労した記憶はないと田村幸男は回想する。
「私が『Jリーグは偉いな』と思ったのは、こちらが困るような話を一切してこなかったことですよ。もちろん本音を言えば、自分たちにいっぱいお金を流してほしいと思っていたはずです。とはいえ、私たちも役所ですから『基本的にはすべてのスポーツが対象ですから、Jリーグだけにお金が流れるような形にはできません』というお話をさせていただきました。そうしたら、当時チェアマンだった川淵(三郎)さんが『当たり前だ!』と(笑)。あの方は本当に、先見の明がありましたね」
スポーツ振興くじの予想対象が、それまで国民的なスポーツだった野球や相撲でなく、サッカーだったのはなぜか。「八百長がしにくい」という競技の特性があったのは間違いない。しかし一方でJリーグが、その設立当初からサッカーのみならず「日本のすべてのスポーツの発展に寄与する」という明確な目標を持っていたことも大きかった。その公共性こそが、当時の文部省の理念と見事に合致したのである。totoがすっかり日常のものとなったのは、Jリーグの先見性と公共性があればこそであった。
<この稿、了。文中敬称略>