少頭数なら我が意をエタリオウ 「競馬巴投げ!第176回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

「神戸新聞杯の馬は昨日、全部終わりましたよ」

 そう、トレセンには前田厩務員や山吉助手のような心温かい人も多い。でもたまに「人を怒鳴ることで快感を得ようとする」人もいるのだ。ここが難しい。

「マル調の自転車に乗って。キミは調教師か!」と怒鳴られる可能性も否定できないのだ。[番外写真5は坂路下に乗り捨ててあるマル調自転車。これなら、誰が乗ってもいいんじゃないかと思うでしょ?]

[番外写真5]坂路下に乗り捨てられたマル調自転車、これなら乗っていい? 【写真:乗峯栄一】

 でも、まあ、ここまではいい。往々にしてあることだ。運動にもなる。

 しかしショックなことは、坂路上まで汗だくになって上がってから、起きた。

 いつも親切にアドバイスくれるグリーンチャンネル撮影スタッフの人が「神戸新聞杯の追い切り? 神戸新聞杯の馬は昨日、全部終わりましたよ」と言う。

「え!」と言ったあと、しばらく絶句だ。

 だから、三日間開催はイヤなのだ。先週のように、月曜まで競馬があると、火曜日は全休日だと予測する。で、水曜に馬の足慣らしをして、木曜が追い日だろうと思う。過去はそういうことが多かった。

 でも、いまは、申請をして、火曜足慣らし、水曜追いがほとんどになったという。厩舎スタッフはいつ休んでるんだろうか。たぶんローテーションか何か組んで、休み取ってるんだろうなあ。

「今日は追い切り翌日だから、神戸新聞杯組はほとんど坂路にも逍遥馬道にも姿を現しませんよ。厩舎周りの引き運動だけでしょう」とグリーンチャンネル・スタッフが教えてくれる。落胆。激しい落胆だ。

困ったときの松国厩舎頼み

 スプリンターズSのGIゼッケンを着けている馬を何頭か撮っただけで、グリーンチャンネル・スタッフの、機材も入る大きな車に乗せて貰って、下まで降りる。

 それでもと思って、下に降りて、友道厩舎まで行き、調教師室のピンポンを押すが、反応がない。厩舎周りを運動している馬で、それらしいのが何頭かいるのだが、みんなゼッケンも鞍も着けてない裸で、どれがワグネリアンで、どれがエタリオウか、判別なんかできない。

 でもプロカメラマンらしき女性がカメラを向けている。

「あ、ワグネリアンなんだ」とぼくも慌ててシャッター押し、「すいません、いまのワグネリアンですか?」とそのカメラウーマンに聞くと「そうだと思うんですけど」と言って、自分の自転車の所に戻り、資料を調べて、また戻ってきてくれた。「あ、ひょっとしたら違うかもしれません。脚元の色がちょっと違うような」とわざわざ教えてくれる。互いに知らない人間なのに、こんな親切なカメラウーマンも珍しい。

[番外写真6]この馬、ワグネリアン? 【写真:乗峯栄一】

[番外写真6]がそれだ。ダービーのときと同じく後ろ脚に紫のバンテージをして、これは友道厩舎の色で、友道厩舎の馬であることは間違いないのだが、さてワグネリアンなのかどうか。

 馬の見分けが出来なくても担当者が分かっていれば、それでいけるんだけど、担当者の顔もよく分からない。難しい。「それ、ワグネリアンですか?」と担当者に聞けばいいんだけど、もし違っていたら、必ず不機嫌な顔をされる。この種の質問は大変な勇気が要る。

 しょうがないから「困ったときの松国厩舎頼み」で、厩舎に入れさせてもらい、タイムフライヤーと担当の稲田稔助手を撮らせてもらった。松国調教師の話では、タイムフライヤー、先週、今週といい追い切りしているとのことだ。GI馬の巻き返しがあるかもしれない。
           *
 あ、きょう23日の日曜、午後2時40分より、姫路競馬場(いまは中央競馬・場外発売に特化している)で神戸新聞杯の予想します。近くの人は来てみてください。主催者の好意により、我が新刊の10冊プレゼントもやります。

2/3ページ

著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント