ラグビー界の“特別な才能”山沢拓也 今後の日本代表選出の可能性は…
「不安を抱えないようにするのが一番」
プレースキックも担当し、チームの中心選手として活躍している 【斉藤健仁】
すると第2節では、雨の中でもスキルの高さを見せつつ、タクトを握った山沢は勝利に大きく貢献し、復調して迎えたのがこの第3節だった。以前まで山沢は試合後、「今日は全然ダメでした」、「いいところはほとんどなかった」とネガティブな言葉を並べることがほとんどだった。チームを引っ張るSOとしての責任感と、常に自分自身に高いレベルを要求していることの裏返しでもあった。
ただ今年の山沢は自身が持っているスキルと判断が噛み合い、2節、3節では高いパフォーマンスを披露した。好調の理由を本人に聞くと「考えても実際に試合になるとどうなるかわからないですし、きりがないのですが、不安になって緊張し過ぎていた。何かするから緊張するので(今年は試合前に)あまり考え過ぎず、不安を抱えないようにするのが一番。周りにすごい選手がいるので迷ったらほかの選手に聞いて、その人たちの判断に任せて、自分で全部背負わないようにしている」と心の持ち方を変えたことを要因に挙げた。
ディーンズ監督の「(今年の)山沢はパナソニックで、チームメイトのためにプレーすることを楽しんでいると思います」という言葉とも重なる。
ディフェンス面でも成長
東芝戦では独走するリーチ マイケル(右)に追いつき、タックルで倒すなど、ディフェンス面でも成長している 【斉藤健仁】
ディーンズ監督は2年前から、「育成と強化」を同時に行いつつ「チームとして機能することが一番大事です。コーチの仕事としては選手が十分にパフォーマンスを発揮できる状況を作ること、そしてそれを妨げないこと」という哲学で山沢らをコーチングしてきたことが花開いた。
19年ワールドカップは「目指すべきところ」
19年ワールドカップに向けて、トップリーグでのアピールが続く 【斉藤健仁】
ただ日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHCは昨年、山沢を「若くポテンシャルがある」、「あくまでも『チームパーソン』ではなくてはいけませんが、ビックゲームを勝利するには彼のような『Xファクター』が必要」とも評していた。代表候補合宿メンバー47人の中で専門のSOが田村優(キヤノン)のみという現状を考えれば、山沢が今回のようなパフォーマンスを続けさえすれば、2019年への可能性は残っているはずだ。
山沢はワールドカップに関して「変に考え過ぎないようにしたいですが、ラグビーをやっている以上、目指すべきところ」と言いつつも、「現時点では代表のスコッドにも入っていないので、やれることはトップリーグでいいパフォーマンスをしてアピールすること」と今後も謙虚かつ自然体で、司令塔として、まずはチームのためのプレーを続ける。