世代交代ではなく「融合」を目指す日本 五輪世代が得た、成長するための財産
「まだまだ足りない」A代表と五輪代表の差
森保監督はA代表の選手たちの高いクオリティーに言及。五輪代表の選手たちとの間にはまだまだ差がある 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
「A代表に来て感じたのは、まずは選手のクオリティーが高いということですね。選手たちのレベルの高さを感じさせてもらいました。A代表の監督をやることで、どういう高みなのかという基準をもって、東京五輪世代の選手たちに提示できるかを感じさせてもらいました」
たとえば32歳の青山敏弘ほど気の利くパスをさばきながら守備もできるボランチは見当たらないし、槙野智章のリーダーシップや絶対的な運動能力の高さに裏打ちされた守備力にも目を奪われた。そして何より彼らのメンタリティーが強烈に目を惹いた。
「若い選手が持っている良さを存分に引き出すような雰囲気作りをするだけ」と言っていた槙野は、試合後にこんなことを言っていた。
「試合が終わったあとに堂安選手と話しましたけれど、『初めて緊張した』と。こんな緊張するものだとは思わなかったと言っていました。20歳で大阪で生まれ育った彼がこうやって堂々たるプレーを見せて、日本サッカーの未来は明るいんじゃないかと思う。若い世代の良さを引き出せたことは、ベテランとして、30歳オーバーとして、いい仕事ができたんじゃないかと思います」
若い選手にとっては「A代表の壁」を痛感する機会に
若手選手の前に立ちはだかる「A代表の壁」。だが、それは決してネガティブな意味ではない 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
「A代表の選手たちは技術、戦術理解力を持っていることはもちろん、今日の試合で見せてくれたように戦う気持ちを持って、自分の責任をまっとうする気持ちを持って、試合を戦い抜いてくれる。メンタル面も技術面も、すべてを上げていかないといけないというところを若い選手たちに伝えるための良い経験になりました。A代表の選手たちのレベルの高さを若い選手たちに伝える意味で、素晴らしい経験ができました」
一般に「若返り」を果たしたことが強調された今回の代表戦だが、現実的に見るならば、そこまで若返ったわけでもない。そしてレベル的な意味での「A代表の壁」が若手の前に高く存在することを確認する機会でもあったように思う。
ただそれは決してネガティブな意味ではなく、成長するための財産を得たようなもの。立ちはだかる「壁」にしても、冷たい壁ではなく、熱い壁である。指揮官の目指す「融合」の先に何が見えてくるのか。あらためて楽しみになる、新生日本代表のファーストマッチだった。