阪神・北條のメンタルを変えた一言 「前向きに考えるようになった」

週刊ベースボールONLINE

今季初安打後からの反攻

守備は守備、打撃は打撃。守備の面では、まず打撃のことを引きずらないことを心掛けている 【写真:BBM】

 気持ちの切り替えを前向きにしたことで、2軍で成績を残し6月に今季初の1軍昇格をした。だが6試合で安打が出ない。昨年なら焦る気持ちが前面に出たが、今年は気楽な気持ちでいる自分がいた。だからこそ、今季初安打後から北條の反攻が始まった。

 1軍に昇格して12打席でヒットが出なかったんです。昨年も開幕からそれくらいヒットが出なかったのですが、このときは1打席1打席、1日がめちゃくちゃ長く感じていました。「また出えへん。また出えへん」と……。でも今回は意外にこの12打席が短く感じたんです。今季初安打を放った後「12打席もヒットがなかったんや」と自分の中で驚いたくらいです。というのも12打席連続無安打の中にはいい当たりもあったので「内容も悪くないから、そのうちヒット出るやろ」という考え方になっていました。

 でも今季初安打が、めちゃくちゃ内容の悪いヒットでした(笑)。ボテボテの当たりの投手内野安打です。ラッキーなところに飛んだなあ、でも、これでヒットはヒットなんだな、と自然に思っていました。

 それにベンチに帰ったときに能見(篤史)さんが「『ヘボ』なヒットやったなあ。でもあの打球は投手にとってはめちゃくちゃ悔しくて、ダメージが大きい」と言われたんです。このときに「別にクリーンヒットを打たなくてもいいんだ」とも思えたんです。昨年までなら「内野安打になったけど、打撃フォームを崩されたからダメやわ」となっていたと思いますね。とにかく強く振って強いヒットを打たないといけない、と思っていましたから。

 それが、汚い打球でも内野の間を抜ければ投手は嫌がるから、それでもいいんだ、と。昨年までの僕の打撃だと、強く振ろうという意識が強過ぎて、真ん中以外のボールはヒットにできないくらい、力んで打っていたんです。それと、ボテボテの安打を放ったときに「次の打席は、今の型では打てないな」と思い込んでいましたからね。それが今では「ヒットはヒットや」と思えるようになっています(笑)。

 この初安打の試合も「ヒットはヒットや」と思えたことで次の打席でも気楽に打席に入れ、打つことができ、「2本目を打ったな」と思っていたら、結局、1試合3安打。試合後に「気持ちって大きいな」と実感しました。

 もちろん昨年までもそう思ってはいたんですよ。ただ自分の中の打撃の調子を気にし過ぎていた部分もありました。「今日は調子が悪いな」と思い込んでしまったらまったく打てなくなる。それで「調子を早く上げよう」と思い込み過ぎて、逆に調子を悪くするという悪循環。だからこそ今は「調子の良し悪しを気にしない」ようにしています。今では、相手投手の球種や配球を考えようとしている自分がいます。つまりは、昨年まで試合に出て相手と戦っているのではなく、常に自分と戦っていたんです。

「毎日毎日、1打席1打席を大事に」

どんな打撃フォームになろうとも、野手のいないところへ打ち、出塁率を上げていくことだけを考えている 【写真:BBM】

 強い当たりを打つことから、相手バッテリーの配球を読みながら、塁に出ることを最優先するようになった北條。時に、外角低めの球に食らいつき、右前へしぶとい安打を放つシーンもある。こうなると相手バッテリーは、厄介な打者と認識し始めるはずだ。


 先ほども話しましたが、昨シーズンは強いスイングを求め過ぎていましたので、まったく右方向に打てなかった。今は「守っていないところに打てばいいかな」という考えになっています。

 インコースに来たら次は外角だろうな、などと、いろいろ考えながら打席に立っています。2番なので出塁率を高くしたいと思っています。昨年83試合で23個。今季は60試合で19個(9月12日時点)と四球の比率は増えているとは思います。でも僕の中ではまだ少ないほう。今季、ファームのときはめちゃくちゃ多かったんです(60試合で46個)。2番を任されているので四球の数はもう少し取りたいですし、とにかく塁に出たいです。

 今までもそうですが、打撃と守備に関しては、切り離して考えています。打てなくて悔しい思いをしていても、守備に就くときには気持ちは切り替えられていると思います。投手やチームには申し訳ないのですが、打てなくても、エラーしても「仕方ない、次、次」と思うようにして。これまでの経験の中で、打撃の内容を引きずってポジションに就いたときほど、なぜか自分のところに打球が飛んできますからね(笑)。

 現在は「2塁・ショート」を任されていますが、最後までやり抜く……という目標を作ると、先が長い。だから毎日毎日、1打席1打席を大事にしていき、それが最後にいい結果として残るのかな、と思いながらプレーしています。

 リーグの状況もあり、クライマックスシリーズ進出の可能性はあると思っています。現在チームは負け越していますが、みんなここから全勝したいと思っているはず。残り試合1試合1試合全力で行く。もし負けたとしても「次」と思ってまた全力で行く。チームに必要なのは、これしかないと思います。その中で、僕の役割は……平野さん(恵一打撃コーチ)から「相手の嫌がる打者になれ」と言われていますので、そこを目指していきます。

 打率は現在3割台ですが、その数字を目標にすると「うわ、下がった。次打たな!」と意識してしまう性格。数字をみたらダメな人間なので、そこは見ないようにして、1打席を大事に。相手に嫌がられる打撃でチームに貢献したいです。

(取材・構成=椎屋博幸、写真=石井愛子/インタビュー、前島進)

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