世界選手権ではローテーションに注目 山本隆弘が語る男子バレーの見方<後編>
サイドアウト率が最も高いS4ローテ
日本のS4ローテ(古賀は李のポジションに入る)。サイドアウト率が最も高い 【スポーツナビ】
S3ローテは藤井の負担が少ない
日本のS3ローテ(古賀は李と代わって後衛中央に入る)。この時サーブで崩されることはほとんどない 【スポーツナビ】
ブレーク率を見るとサーブの重要性が分かる
ブレーク率を見るとサーブが機能しているかが分かる。日本はS6のブレーク率が低い 【提供:日本バレーボール協会】
たとえば日本の数字が極端に低いのはS6ローテ(21%。トップ8平均より12%も低い)。ブレークが取れない原因を単純に考えれば、相手にサイドアウトを簡単に取られているということです。つまりサーブがほとんど機能していないということ。ネーションズリーグではポジション2に福澤選手が入ることが多かったので、福澤選手のサーブがもう少し機能する、あるいはこのポジションに石川祐希選手が入ればサーブの効果率も上がり、ブレーク率も高くなるのではないでしょうか。
反対にS3ローテはブレーク率が高い(34%)。これはポジション5に入った柳田選手のサーブ効果率が高かったということを意味しています。セッターが前衛にいても、サーブで崩せればそれだけ得点チャンスが広がる。
象徴的だったのが2015年のワールドカップ、カナダ戦です。おそらく普通に力と力で戦えばカナダが上回るのですが、日本はストレート勝ちを収めた。勝因はサーブです。サーブが機能したため、相手は思い通りの攻撃を組むことができませんでした。単純にお互いがチャンスボールからラリーを始めれば、よほど力の差がない限り、大差がつくことはありません。相手の攻撃枚数を減らし、自チームに有利な状況を作り出す。勝敗のカギを分けるのはサーブ、と言っても過言ではないのです。
日本の方向性は間違っていない
日本が成長を遂げているのは間違いない。世界選手権では地元・イタリアとの開幕戦が最初の山場となる 【写真:坂本清】
僕が現役を引退する前(2012年)に帯同したワールドリーグで、世界と日本は何が違うのか。その点だけを注視していた結果、当時見えて来たのは圧倒的にミドルの打数が少ないということでした。でも今は世界選手権に出場する藤井選手や関田選手のように、どんな状況でも積極的にミドルを使えるセッターが出てきて、Vリーグでも「ミドルを使わないと勝てない」という意識が根付いてきた。そうすればパイプ攻撃も生きるようになり、まさに今の日本男子が取り組んでいるような攻撃展開がスタンダードになっています。
同じく課題であったサーブレシーブもオーバーハンドパスが強い福澤選手が加わったことで、フローターサーブに崩される場面も少なくなった。多少崩されたとしても、藤井選手はミドルを使える。日本男子は世界で戦うことのできるレベルへと、成長を遂げているのは間違いありません。
だからこそ、上位進出を狙う世界選手権でカギになるのは地元・イタリアとの開幕戦です。昨年のワールドグランドチャンピオンズカップと違い、ベストメンバーで臨むイタリアは強い相手で、会場は相手のホーム。日本にとっては完全アウェーです。その厳しい状況でどんな戦いができるか。相手のペースに一方的に押されて負けるようでは苦しい。ですが、たとえ負けたとしてもやるべきことが確立され、少しでも多くの手応えをつかむことができれば次につながりますし、勝つことができれば完全に勢いに乗ることができます。
自分たちが取り組んできたことをどれだけ発揮し、どこまで成長できたか。それを知るためにこれ以上の機会はありません。まずは開幕戦。サーブの狙いやディフェンスのポジション、攻撃の組み立て。さまざまな意図を探りながら、日本男子の戦いに、ぜひ注目して下さい。