田中史朗と松田力也が語るラグビー 「人生そのもの」「成長させてくれる」

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田中「今思えば、エディー・ジョーンズのラグビーをずっと見ていた」

日本代表、パナソニックで活躍する田中史朗(左)と松田力也 【写真提供:WOWOW】

 8月31日に開幕したトップリーグで注目されるのが、3年ぶりの王座奪回を目指すパナソニックだ。2013年に日本人初のスーパーラグビー選手となり、前回ワールドカップでも活躍したSH田中史朗、帝京大で4年連続大学選手権優勝を経験し、安定感&信頼感抜群の新鋭SO松田力也というハーフ団を抱える。来年のワールドカップでは日本代表のカギを握る存在になりそうなベテラン&若手が語る世界のラグビー、そして自らにとってのラグビーとは。

――海外ラグビーをいつ頃から見るようになったかを教えてください。

田中史朗「高校2年くらいのころですね。スーパー12(現在のスーパーラグビー)を見始めて、そのプレーを練習中にマネしたりしていました。家では見られなかったので、友だちにダビングしてもらって見ていました。
 そのころ注目していたのはブランビーズです。今思えば、エディー・ジョーンズのラグビーをずっと見ていたんですね。ジョージ・グレーガンというレジェンドがSHでプレーしていたこともありましたし、彼の動きをマネしたりしていました。
 あと、京産大に入った19歳のときに、ニュージーランドのオークランドに7カ月半くらい留学したので、その時にオールブラックスのレジェンドのみなさんと関わる機会がありました。クラブにはアリ・ウィリアムズがいたり、ブルーズの練習を見に行くとカーロス・スペンサー(現・宗像サニックスBKコーチ)がいたり、たくさんのオールブラックスの選手たちを目の前で見て、自分もこの舞台に立ちたいな、と思いましたね」

松田力也「僕が覚えているのは2003年のワールドカップからですね。9歳くらいで、ちょうどそのころから海外ラグビーを見始めたんです。印象に残っているのはやっぱりオールブラックスのカーロス・スペンサーです。そのころは遠すぎて、自分がそこでプレーしたいとかいうことは全然考えなかった。ただ『すごいなー』と思って見ていただけです。ただ、練習でスペンサーの『股パス』はマネしましたね(笑)」

――ヨーロッパのラグビーについては、どんな印象がありますか。

田中「当時のファイブ・ネーションズも見ていました。印象に残っているのは1999年のワールドカップで、フランスがニュージーランドを破った試合です。あの試合は何回も何回もビデオで見ました。僕は身体が小さいし、パスを回してトライを取るフランスのラグビーに魅力を感じました。シャンパンラグビーですよね。
 それまではオールブラックスの試合を見る機会が多くて、すごいなと思っていたけど、フランスがその人たちに勝っちゃうんだから、世界はすごいなと思ったし、だったら僕たちにもオールブラックスに勝つチャンスがあると思いました。実際、2011年のワールドカップでフランスと戦ったときは後半の途中まで勝てる可能性がありましたし。やはり世界を見ることは大事だと思いましたね」

松田「僕は高校2年のときに高校日本代表に選ばれてフランスへ遠征しました。トゥールーズで合宿したのですが、それまでテレビで見ていたレジェンドのティエリー・デュソトワールがプレーしていたりして、感銘を受けましたね。
 それまでトップリーグの雰囲気は知っていましたが、フランスはマーケットが大きいなと感じました。お客さんの応援は熱狂的だし、お酒を飲みながら、歌も歌うしヤジも飛ばすし、雰囲気が日本とは全然違う。見ている方の年齢も、若い人から年配の方まで、幅広い方が見に来ている。その中でラグビーができるなんてすごいなと思いました。
 ラグビーとしては、フミ(田中)さんがおっしゃったようにシャンパンラグビーの魅力は感じましたが、それ以上に印象的だったのはセットプレーへのこだわりですね。セットプレーでものすごくプレッシャーをかけてきて、接点でもどんどん前に出てプレッシャーをかけてくる。フランス代表と同じようなスタイルを高校代表もやってきた印象があります」

若い選手に「本場のラグビーを経験して欲しい」

身長166センチと小柄ながら、世界的なSHとして存在感を示している田中 【写真:アフロ】

――田中さんは2012年にニュージーランドに行き、オタゴ州代表を経て、日本人選手として初めてスーパーラグビー入りを果たしました。

田中「オタゴ州代表に選ばれる前に、クラブラグビーから経験しましたが、ニュージーランドの人たちはどのレベルでも、楽しみながら、誇りを持ってプレーしている選手が多いと感じました。日本との違いは、ラグビーで生計を立てている選手がたくさんいること。これは、日本の企業スポーツとの違いだと思います。
 できれば、日本の選手も中学や高校のころから留学して、本場のラグビーを経験して欲しいなと思いますね。パナソニックには今年、福井翔大くんが東福岡高校から直接プロ選手として入ってきましたが、彼のような選手がもっと増えてくれば、日本のレベルも上がると思います。もちろん個人の人生の選択ですが、若い世代がレベルの高い経験を積めるような環境を作ってあげられるよう、協会も企業も協力していかなきゃと思います」

――福井選手についての印象は?

田中「能力は高いですよ。でも日本人特有の、少し遠慮するというところもあるので、僕らからどんどん声をかけて、彼が思いきりプレーできるように、プレー時間を増やせるようにしていきたいです」

――松田選手は海外でプレーした経験はどれくらいありますか。

松田「昨年(2017年)の2月に、ハイランダーズに2週間くらい行かせてもらったくらいです。その前は、高校3年のときジュニアジャパンでニュージーランドへ遠征したときに、ハイランダーズのデベロップメントチームと対戦して大敗したりしました。でも今年(2018年)、ジャパンAでニュージーランドに遠征したときは、ハイランダーズのBチームに勝ったりして、自分自身も日本のラグビーも成長していると感じました」

――さて、ワールドカップを控えて、いよいよトップリーグも始まります。

田中「まだまだレベルアップしていかないといけないですね。下(若い世代)からの突き上げもあります。先を見すぎるといい結果が出ないと思うし、1日1日レベルアップすることを意識したい。前回のワールドカップの時は年齢も30歳で、身体も動いたけど、今回は34歳でワールドカップを迎えることになる。でも経験を積んだ分、以前よりも落ち着いてプレーできるし、チームのために自分の経験を若手に伝えていくことがテーマになると思っています。それはパナソニックでも同じで、若手とも積極的に喋るようにしています。僕はもともとシャイなんで、ホントは自分から話しかけるのは苦手なんですが、そこは頑張って……」

松田「僕も、トップリーグで毎試合、いいパフォーマンスをすることが大事だと思っています。常に日本代表と同じ基準でプレーしたい。パナソニックでは横にベリック・バーンズがいて、SHにはフミさん、監督にはロビー・ディーンズさんという環境でプレーできることが自分の強みだと思うので、たくさんコミュニケーションを取ってどんどん吸収したいです」

松田「4年後も、そのまた4年後も」

複数のポジションでレベルの高いプレーができる松田 【写真:アフロ】

――松田選手は日本代表ではSOとして期待されていますが、パナソニックでは昨年は主にCTBでプレーしていました。今年はどうなりそうですか?

松田「チームにはチームの事情があるので、何番で出るかは自分では決められませんが、どのポジションであってもいいパフォーマンスを出すことを意識したいです。12番で出るとしても、バーンズのSOのプレーを横で見ることで学べることも多いですから。どこでプレーするとしてもプラスになると思っています」

田中「松田はバックスのどのポジションでもできることが強みですからね。10番から15番まで、どのポジションでもレベルの高いプレーができる。その中で、10番ではひとつ上のレベルのプレーができるとなれば、日本代表にもいい影響を与えていくと思いますね」

――松田選手から見て、田中選手とプレーすることにはどんな魅力がありますか。

松田「チームの15人対15人の練習でもそうなんですが、フミさんが入るだけでゲームのテンポが変わる。狂わされるんです。ちょっとタイミングをずらすだけでオフサイドを取られてしまったり、若手同士でも『アレはフミさんにしかできないね』、『世界レベルを経験しているからできるんだろうね』と話しているんですよ。
 フミさんは同じ京都の出身で、中学の時に練習に来てくれて『頑張ったヤツにあげる』と言われてパナソニックの短パンをいただいて、それをずっと履いていたんですよ。フミさんが日本人で最初のスーパーラグビー選手になって、テレビで泣いてた場面も見ていたし(笑)。
 フミさんは自分が人見知りだとおっしゃるので、僕らから積極的に話しかけて、フミさんが示してくれる世界基準を少しでも盗みたいです」

――最後に聞かせてください、ご自身にとってラグビーとは。

田中「自分にとっては人生そのものですね。ラグビーのない人生は考えられない。9歳からずっと自分の生活の中心だったし、ラグビーを続けてきたおかげで日本中、世界中に友だちができて、今もずっと連絡を取り合って、楽しい人生を送れている。それはラグビーに限らないスポーツの魅力だと思うけど、ラグビーは人数が一番多いので、いろいろなタイプの人と一緒にプレーできる。そのスポーツの魅力を、もっともっと日本中、世界中へ広げていけたらいいですね」

松田「ラグビーは自分を成長させてくれるものだと思っています。僕も30歳を過ぎたときに、フミさんのように『ラグビーは僕の人生そのもの』と言えるようなキャリアを積んでいきたい。その過程として、まずは2019年のワールドカップに出場して、そこがMAXになるんじゃなくその4年後も、そのまた4年後のワールドカップでも毎回レベルアップして行けるようにしたいです」

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