オランダで「若手の星」と評される堂安 植田は“上”を見据えてスタメン争い中

中田徹

展開によってポジションが変わる植田

前節スタメンだった植田だが、この日はベンチスタートとなった 【Getty Images】

 18日はベルギーでセルクル・ブルージュ対ズルテ・ワレヘムを見た。植田直通は前節、スタンダール・リエージュ戦で先発フル出場を果たし、強豪相手の無得点ドローに貢献していたが、この日はベンチだった。

 1−1で進んだ後半27分、セルクル・ブルージュがPKを奪った。すると、ウォームアップをしていた控え選手たちがベンチに集められ、指示を受けていた。恐らく、このPKの成否によって、交代枠残り1つをどう使うのか説明したのだろう。

 後半28分、ジャンニ・ブルーノが見事にPKを成功させ、セルクル・ブルージュが勝ち越した。こうなると、ローラン・グヨ監督の次の手は唯一、守備固めだ。後半32分、植田がピッチに入ったことで、セルクル・ブルージュは4バックから5バックにシステムを変更し、その後のズルテ・ワレヘムの反撃をゼロに抑えたばかりか、アディショナルタイムには鮮やかなカウンターから3−1とするダメ押しゴールまで奪ってしまった。

 4バックから5バックへ――。植田によると、この形の準備をセルクル・ブルージュは常日頃からやっているという。スタンダール戦では、試合の入りは4バックで、植田は右のCBを任された。その後、0−0で試合が進むと、このまま引き分けで試合を終わらせようと5バックに切り替え、植田は3枚のCBの右端を務めた。ちなみに、ズルテ・ワレヘム戦でも植田は3枚のCBの右に入っている。

「(スタンダール戦では)後半途中でCBをもう一枚入れた時点で5バックにするということは、チーム全体で意思統一できていました。ここは守り切って勝ち点をとるという練習もしています。試合の展開によって(自分の)ポジションがすごく変わると思います」

モナコという「明確な上」の存在

植田はチームで「3番目のCB」という序列だが、上を見据え成長を誓った 【Getty Images】

 現在の植田は「3番目のCB」というチーム内序列だ。前節、スタンダール戦で先発したのはレギュラーのジェレミー・トラベルが負傷したため。トラベルの復帰によって、ズルテ・ワレヘム戦はベンチスタートになった。この状況を「マイナスではない」と植田は言う。その理由を植田は2つ挙げてくれた。

 1つは試合中に4バックから5バックにシステム変更をするチームだから、植田にも出場機会が与えられるということ。2つ目が、31歳のベテランCBコンビ、トラベルとバンジャマン・ランボットの存在だ。

「あの2人はうまい。学ぶものがたくさんある。2人は自分にとっても高い壁になると思いますが、良いCBだからこそ超えがいがあります。自分がベンチの場合でも、いろいろなものを学べると思います」

 そうは言いつつも、やはり狙っているのはレギュラーの座だ。

「やっぱりスタメンで出たいという気持ちが強いし、次はスタメンで出られるように、練習からアピールしたいと思います」

 ブルージュの街はオランダ語圏だが、植田は「英語でフランス語を勉強しています」という。その背景にあるのが、セルクル・ブルージュはモナコのサテライトクラブであること。監督のグヨもフランス人だし、選手も多くのフランス人がいる。オランダ語話者のベルギー人は、基本的にフランス語も操れることもあり、クラブ内の共通言語がフランス語なのだ。

「覚えたことを言うというのはすごく大事だと思う。だから、自分からどんどん言ってコミュニケーションを取っています。それを続けていきたいです」

 ヨーロッパに来たのは「自分が成長するため。そしてステップアップため」だと植田は言う。ならば、親クラブであるモナコへのステップアップも狙っているのだろうか。

「それは、このクラブにいる全員が思っていることだと思います。これだけつながりがあれば、見てくれるというのがある。だから、そうですね」

 ヨーロッパには「見えない上」がたくさんある。しかし、セルクル・ブルージュにいればモナコという「明確な上」がある。セルクル・ブルージュに集う若者たちはまずはモナコを目指し、そこからさらなる上を目指していくのだろう。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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