強化の象徴「U15チャンピオンシップ」
Bクラブ、指導者の本気を実感した大会に

勝利よりも大切な選手たちの未来

初出場ながら3位に入った東京Zは、渡邉晴(2番)など逸材ぞろいのチームだった
初出場ながら3位に入った東京Zは、渡邉晴(2番)など逸材ぞろいのチームだった【(C)B.LEAGUE】

 試合になれば長く一緒にプレーしているチームは有利で、栃木、横浜の他クラブに先行した取り組みが実を結んだ大会だった。一方で、「個」「可能性」を見れば琉球や秋田に限らずさまざまな発見があった。


 チーム発足が4月という東京Zは、初出場ながら3位に入った。練習の頻度は週2、3回程度だが、セレクションとスカウトにより「現段階でうまいというよりは、可能性のある子」(岩井貞憲HC)をピックアップしていた。今年3月のジュニアオールスターに選出された選手も多く、193センチの柳田大斗、186センチでスキルも高い渡邉晴など逸材ぞろい。準決勝で対戦した横浜の白澤HCも彼らの能力について「うちより全然上。腕が長いし背も大きいし、外もできる」と述べていた。


 もちろんスカウトと言っても、所属する中学校、街クラブに話を通して理解を求める手順を踏んでいる。岩井HCは「部活の先生方とコミュニケーションを取らせてもらうと、基本的には『ぜひ』、『そういうところに呼んでいただけるんですか?』という反応が多い」と口にする。そしてそういう逸材を集め、高いレベルの中で切磋琢磨(たくま)することで、育成面の好影響が生まれる。


 彼はこう述べる。「どの選手も中学校の部活ではポストをやっていました。背中を向けて持って“よいしょ”みたいなシュートしかやっていない子たちが、ここにきて外からのプレーをやっている」


 準決勝の先発5名を見ると、東京Zは一番“小さい”選手が179センチ。中学の部活ではインサイドを任されるサイズだ。ただし高校、大学、プロとレベルが上がれば、190センチ台でもアウトサイドのプレーは必須だ。目先の勝ち負けを考えれば、ガードの経験が長い選手も入れた方がいいのかもしれない。しかしBリーグの育成組織は優先順位のつけ方が違う。


 岩井HCは「勝ち負けを追わないわけではないけれど、そこが目的にはなり得ない。緊張感がある中でプレーできるという意味で成長のいい機会になる」と説く。大切なのは中学生年代での勝利でなく、選手たちの未来だ。

独自路線をいくA東京と千葉

A東京と千葉は独自性を持った指導方針と体制を整えている
A東京と千葉は独自性を持った指導方針と体制を整えている【(C)B.LEAGUE】

 A東京は16−17シーズンにトップチームのアシスタントコーチを務めていた塩野竜太氏が、今年4月からU15のHCに就いている。1年生のみで構成されているため、2学年の差がある相手には太刀(たち)打ちできず、予選ラウンドは2敗で終えている。強引な仕掛けからミスを犯し、相手の速攻を受けるつたなさも目立った。


 しかし塩野HCはポリシーを持って、先を見据えた指導をしている。オフェンスも個の打開力やパスの判断を重視する一方で、現代バスケの基本戦術であるピック&ロールの指導は「もう少し先」とまだ教えていない。練習回数は週3回とフルタイムのクラブにしては少ないが、これも「中1にとっては適切な回数ということで、あえてそう設定している」から。学年が上がれば、練習回数を増やしていくことになる。


 塩野HCがメニュー作りを考える上で参考にしているのは何とヨーロッパサッカー。「FCバルセロナのパス回しの練習、コートを小さくしてのゲームはすごく参考にしている。アレンジして自分でバスケの練習に落とし込んだ」と述べていた。週3回の練習回数も「ロングターム・アスリート・ディベロップメント(長期的なアスリートの育成)」という国際的な育成プログラムや、ジュニアNBAの方針を参照したものだ。


 千葉も現中1から「チームの掛け持ちなし」に切り替えた。ユースのスポンサーとして5社と契約し、親の負担を抑える努力をしている。また進学塾の市進学院と契約して独自のプログラムを作り、「練習前に勉強会をやって、それから練習に行く」(神作大介HC)という文武両道の体制を用意した。

指導者は大物から若手まで

京都ハンナリーズの佐々木和子HC。複数の中学校を全国大会に導いた名将だ
京都ハンナリーズの佐々木和子HC。複数の中学校を全国大会に導いた名将だ【(C)B.LEAGUE】

 京都ハンナリーズの佐々木和子HCは、複数の中学校を全国大会に導いた名将。今も京都市内の公立中で教員を務め、バスケ部の顧問を務めている。しかし市の教育委員会から許可を取り、掛け持ちに踏み切った。


 佐々木HCはU15のオファーを受けた理由について、「文部科学省のガイドラインで(部活の)活動量が減ります。それなら(時間が空いて)受けられると思った」と説明する。文科省、各都道府県の教育委員会を中心に進む部活の活動時間を抑制する動きは、バスケに限らず強化の柱がクラブチームに移る一つの要因になりそうだ。またクラブの活用により夏の大会が終わると部活を「引退」し、高校進学までプレーする場がない日本特有のブランクを埋めることもできる。


 他にも川崎ブレイブサンダースは東芝のHCとしてJBLを制したことのある鎌田光顕氏が、大阪エヴェッサは元ブルガリア代表でFIBAのトップライセンスを持つユリアン・ラディオノフ氏がU15のHCを務めている。ベスト8入りした茨城ロボッツは、日本体育大出身で22歳の根本雅敏HCが率いている。大物から若手まで、さまざまなバックグラウンドを持った指導者がいた。


 U15チャンピオンシップのような新しいチャレンジは、今後も続くはずだ。19年には部活、街クラブ、Bクラブが垣根なく戦う中学生年代の全国大会もスタートする。また国体少年男子の出場資格も、高校生から「U−16」(高2の早生まれ、高1)に切り替わる。さらにそう遠くない将来にU15年代のリーグ戦がスタートし、高校生年代(U18)の育成組織も整備されるだろう。


 一方で、現在は認められている部活や街クラブとの重複登録が21年4月をメドに禁止となる見込みで、選手たちはサッカーのように「部活」か「クラブ」の選択を要求されることになる。


 部活中心に動いてきたバスケ界のカルチャーが変わるのか? 上からの方針を各クラブが消化、実行できるのか? それは率直に言って疑問だった。しかしU15チャンピオンシップを通して各クラブ、指導者の本気が実感できた。


 もちろん一定の時間はかかるし、多少の摩擦もあるだろう。それでもBリーグの育成組織は部活、草の根の街クラブとともに育成の柱として立ち上がりつつある。多様な人材を吸収し、社会の変化に対応し、この国に根付いていくはずだ。

大島和人
大島和人

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都町田市に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、バレーなどの現場にも小まめに足を運び、試合観戦数は毎年300試合を超える。日本を実はサッカーだけでなくバスケ強国であるスペイン、バレー王国・ブラジルのような球技大国にすることが一生の夢で、“球技ライター”を自称している。

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