強化の象徴「U15チャンピオンシップ」 Bクラブ、指導者の本気を実感した大会に

大島和人

本格始動した日本バスケの「強化」

「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2018」は栃木ブレックスの優勝で幕を閉じた 【(C)B.LEAGUE】

 日本のバスケ界が国際バスケットボール連盟(FIBA)から資格停止処分を受け、日本代表などの国際活動を禁じられたのは2014年秋のこと。日本はその後FIBAから、解決するべき3つのテーマを与えられた。「トップリーグの一元化」、「協会のガバナンス」については、すでに答えが出ている。

 3つ目の宿題である「強化」も一気に動き出している。その象徴が8月17日に栃木ブレックスの優勝で幕を閉じた「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP 2018」(U15チャンピオンシップ)だ。

 昨年8月に大阪で開かれた第1回大会は出場が15チーム。優勝したファイティングイーグルス名古屋は中川泰志(東山高)、河合海輝(明成高)といった全国レベルの才能を有していた。ただし去年の彼らは大会前の練習が計3回という即席チームで、街クラブに所属する選手を「レンタル」で呼んでいた。今大会はそのFE名古屋も自前のスクールから選抜し、週2回の練習を積んだ選手たちで参加していた。

 Bリーグの強化育成部門を担当する塚本鋼平は大会を終えてこう喜ぶ。「参加数が去年の15から、今年は34になってうれしい。育成をしっかり考えるクラブが増え、参加が多くなったことに大きい意味がある」

B1ライセンスに必要なU15チームの保有

B1ライセンスにはU15チームの保有が義務付けられており、参加チームも昨年の倍以上の34を数えた 【(C)B.LEAGUE】

 Bリーグは18−19のB1ライセンスを発行する条件に、「中学生年代のチームを持つ」「月6回以上の活動を行う」といった項目を新たに加えている。U15チームの立ち上げはそれに対応したもので、18年春にスタートを切ったばかりのクラブが多い。今までもスクール、クリニックといった形態でU15年代の指導をしていたクラブは多かったが、今の動きは普及から「強化」へ舵を切るものだ。

 一方でJリーグのユースチームのようなフルタイムの活動体制を用意しているクラブは限られていて、筆者が把握している限りだと栃木、千葉ジェッツ、アルバルク東京、レバンガ北海道の4つに留まる。彼らも「クラブ専念」は中1のみで、中3世代はどこも掛け持ち、部活優先が原則だ。

 ただし栃木は16年から週5回の活動を行い、栃木県出身でトップチームでのプレー歴もある荒井尚光ヘッドコーチが県内の逸材を指導してきた。昨年は準決勝でFE名古屋に敗れたが、今大会は準決勝で68−27のスコアでリベンジ。決勝戦は横浜ビー・コルセアーズを第4クォーターに突き放して、65−55と勝利している。

 今大会のMVPに選ばれた栃木の御堂地香楽は、昨夏も2年生ながら中川や河合とともに優秀選手に選ばれている有望株だ。もっとも「個」で言えば栃木と遜色のないチームはあった。例えば琉球ゴールデンキングスは県協会も巻き込んだ取り組みにより全県の有望選手を集め、予選ラウンドで横浜と1点差の接戦をしている。準々決勝で栃木に敗れた秋田ノーザンハピネッツも好素材がそろい、栃木は1点差の辛勝だった。

 しかし栃木は最後のボール保持を秋田に与えつつ持ち味の粘り強い守備で耐え、65−64と勝利している。リバウンド、ルーズボールへの執念といった「ブレックス・メンタリティ」をU15も共有していた。

国際色豊かな「原石」が集まる横浜

横浜はインターナショナルなバックグラウンドを持つ「原石」の選択肢になっている 【(C)B.LEAGUE】

 準優勝の横浜、3位のアースフレンズ東京Z、4位のFE名古屋はいずれも190センチ台の選手が先発に入っていた。栃木はベスト4の中でもっとも小さいメンバー構成で、主力の中では最長身の奥山誠海(183センチ)もアウトサイドを得意とするプレーヤー。ただし荒井HCが「ポジションはほとんど決めていない。誰が1番をやってもいいし、ガードの子がインサイドで(スクリーンプレーで)面を取ってもOK」と説明するように、いい意味でポジションに縛られない、オールラウンドなプレーをしていた。

 横浜の白澤卓HCは準決勝の後にこんなことを言っていた。

「栃木さんとウチはしっかり根差してやっているチーム同士なので、決勝で対戦できてうれしい」

 横浜の育成組織は元々、白澤HCが立ち上げたシーガルスという街クラブが先にあり、14年からビーコルの傘下に入った。「小学生の頃からやっているメンバーが半数くらい」で、クラブチームとしての根は栃木と同じく深い。

 昨年度は中学生で日本代表に選ばれた田中力(米国IMGアカデミーへ進学)がU15に所属し、今年3月の大会では実際に横浜のユニホームを着てプレーしている。白澤は「間近で見て対戦もしている。ああなりたいと思っている子がたくさんいる」と、後輩たちに与えた影響を口にする。

 横浜の特徴となりつつあるのが国際色だ。田中は日本の中学校に通っていたが、米国人の父を持ち、英語力もネイティブレベルだった。また今大会で活躍した192センチのマッケイ・ジェンキンスはインターナショナルスクールに通う米国人だ。

 日本代表のシェーファー・アヴィ幸樹もインターナショナルスクールの出身だし、横田や横須賀など米軍基地内の学校もBリーガーを輩出している。横浜のユースはそういうインターナショナルなバックグラウンドを持つ「原石」の選択肢になっている。

 白澤HCはこう説明する。「アメリカではシーズンスポーツなので、オフにバスケをやる場所がない。だからチームをすごく探していたんです。シェーファーみたいな選手がいっぱいいて、日本国籍の子もいるのに、やっていなかった。そういう子を掘り起こせた」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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