樋口新葉、五輪落選の苦難を乗り越えて 「スケート界の歴史に残る人物に」

スポーツナビ

五輪落選という苦い経験を味わった樋口新葉に、これからの4年に向けた決意や競技者としてのゴールを語ってもらった 【写真:坂本清】

 樋口新葉(開智日本橋学園高)にとって、昨季は浮き沈みの激しいシーズンだった。グランプリ(GP)シリーズでは2戦連続で表彰台入りし、GPファイナルに進出。平昌五輪出場の有力候補に挙げられながら、最終選考会となった全日本選手権で4位に終わり、夢舞台への切符を逃してしまう。それでも3月の世界選手権ではショートプログラム8位から大逆転で銀メダルを獲得し、シーズン最後に意地を見せた。

「五輪に行けなかったことに対しての気持ちの整理はあと4年できないと思う」。そう話す樋口は、すでに2022年の北京五輪を見据え、新たな挑戦を始めている。昨季抱いていた葛藤、これからの4年に向けた決意、そして競技者としてのゴール。苦い経験を乗り越えようとしている樋口に、今の思いを聞いた。

今季はたくさん挑戦できる年

シーズン初戦で新SPを披露。「今までのものと最も違う」ということで曲を選んだ 【写真は共同】

――いよいよ新シーズンが本格化してきます。今季のテーマはどのようなところに置いていますか?

 今季はたくさん挑戦できる年だと思うので、いろいろなことにチャレンジしたいと思っています。例えば表現の部分や技術的な部分だったり、トリプルアクセルなんかもしっかり試合で入れられるようにしたいです。

――すでにシーズン初戦を終えて、ショートの『エナージア』を披露しました。プログラムの手応えとこの曲を選んだ意図は?

 昨シーズンとは異なる表現の仕方でしたし、観客のノリも全然違いました。滑っていて楽しかったです。あとは最初の試合だったということもあり、どこをどう直すか、ジャンプまでのステップをどう変えるかという部分が分かったので、次の試合までの課題かなと思います。

 この曲を選んだ意図としては、自分が滑ったことのないジャンルを滑りたいと思っていて、それを振付師の方にも言っていました。何曲か聞いたのですが、この曲が一番盛り上がるし、今までのものと最も違うということで決めました。

五輪落選を経て学んだこと

「他の選手よりも五輪に対しての気持ちが弱かった」。それが出場権を得られなかった要因だと樋口は考えている 【写真:坂本清】

――今あらためて振り返ってみると、昨季はどのようなシーズンだったと感じますか?

 もちろん一生懸命頑張っていましたが、五輪を目指すにあたり、もう少しできたところもあったと思います。今振り返ってみると、五輪を現実的に考えられていない部分があったかもしれません。「すごく出たい」と思っていましたが、五輪に出ている自分をイメージできなかった。他の選手よりも五輪に対しての気持ちが弱かったのではないかと思います。ただ、昨シーズンそういう経験ができたので、これからの4年は今までよりもっと密度の濃い4年にできると思っています。

――昨シーズンを通じて一番学んだことは?

 平昌五輪に出場できないことが決まって、全日本選手権からは1カ月くらい本当に滑らなかったんです。でも、世界選手権も含めて全日本選手権の後に試合が2つあったし、切り替えなければいけなかった。だから試合という見方ではなく「何かを表現する。それを観客に伝える」ということを世界選手権では意識するようにしました。もちろん試合では勝ちたいですけど、それよりも自分が満足する演技と、観客に自分の演技が伝わるようにということを考えて滑るようになりました。世界選手権を経て、そういうことを考えながら滑るというのも大切だなと思いました。

これまでは技術的なことしか考えていなかったという樋口。しかし、五輪に出場できなかったことで、「何かを表現する。それを観客に伝える」という意識に変わった 【写真:坂本清】

――今まではそういう感じで滑っていなかった?

 そうですね。あまりそこを強く意識して滑ってはいなくて……。もちろん何かを伝えなくてはいけないと思いながら滑っていましたが、それよりも「ここのジャンプではこういうふうに跳んで」とか「ステップでレベルを落とさないように」とか、そういう技術的なことしか考えていなかったかなと思います。

――苦い経験を通じて、根本的な意識が変わったのですね。

 試合とアイスショーの違いというところと一緒かもしれないですけど、競技というくくりではなくて、スケートとして見てもらおうと思うようになりました。

1/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント